労働実務事例
[ 質問 ]
労基法が改正され、月60時間を超える時間外労働が発生した場合、5割の割増賃金支払いが義務付けられました。労使協定を結び、代替休暇を与えれば、割増賃金率を引き下げることができると聞きました。労使協定では、具体的にどのような内容を定めればよいのでしょうか。
大阪・D社
[ お答え ]
月60時間超の時間外に5割の割増賃金率を適用する規定は、中小企業を対象に「当分の間(3年後に改めて検討)」適用が猶予されます。
使用者が過半数労組(ないときは過半数代表者)と労使協定を結び、有給の代替休暇を与えた場合、「5割の割増賃金を支払うことを要しない」(労基法第37条第3項)と定められています。
行政解釈では、「現行でも支払義務のある2割5分増し以上の割増賃金の支払は必要である」(平21・5・29基発第0529001号)と念を押していて、5割の割増すべてが免除されるわけではありません。
労使協定では、次の事項を定めます(労基則第19条の2第1項)。
① 代替休暇として与えることができる時間数の算定方法
② 代替休暇の単位(原則1日または半日)
③ 代替休暇を与えることができる期間(60時間超の時間外発生月の末日の翌日から2カ月以内が限度)
①では、まず「換算率=会社規定の60時間超の割増賃金率-同60時間以下の割増賃金率」を算定します。法定どおりなら、「換算率=50%-25%=25%」です。ですから、たとえば、協定では「代替休暇として与えることができる時間数は、1カ月60時間を超えて時間外労働をさせた時間数に換算率(25%)を乗じて得た時間数とする」と記載します。
月76時間の時間外が生じたとき、代替休暇として与えることができる時間は「16(76-60)時間×25%=4時間(半日)」となります。
代替休暇を与えた場合、「代替休暇の時間数を換算率で除した時間数」については、50%でなく25%の賃金支払いで足ります(労基則第19条の2第3項)。4時間の代替休暇を与えれば「4時間÷25%=16時間」なので、時間外労働76時間(60+16)の割増率は一律25%となります。
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