労働実務事例
[ 質問 ]
当社では、解雇する労働者に対して、1カ月前に解雇予告をしたうえで、解雇まで仕事がないような場合は休業させ賃金の6割を保障しているようです。予告をしたといっても、解雇予告手当を支払う場合は平均賃金を支給することを考えると、違法ではないかと思いますがいかがでしょうか。
鳥取・I社
[ お答え ]
労基法第20条は、使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日以上前にその予告をしなければならないと規定しています。さらに、30日以上前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとしています。また、予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができます(同条第2項)。
たとえば、5月末をもって解雇する場合、5月1日に解雇予告をすれば、手当を支払う必要はありませんが、解雇まで30日を切っている場合は、30日に足りない日数分の平均賃金を支払うことによって、5月末の解雇が可能になります。あるいは、5月末に30日分以上の平均賃金を支払えば、解雇予告なしで解雇手続をとることが可能になります。
ご質問の趣旨は、解雇することが決まった後に、労基法第26条に基づき会社が使用者の責に帰すべき事由に基づく休業扱いにして、通常は雇用していれば解雇まで1カ月分の賃金が必要なところ、平均賃金の6割の保障(休業手当)を支払うことで済まそうという「脱法行為」ではないかということのようです。しかし、解雇予告期間中の賃金についてまで、法は規定していません。
通達(昭24・12・27基収第1234号)においても、予告と同時に休業した場合の解雇の扱いについて、「故意に脱法の目的をもって予告と同時に休業を命じた場合は、即時解雇とみなして差し支えないか」との問いに対し、「30日以上前に予告がなされている限り、その労働契約は予告期間の満了によって終了するものである」としています。
ご質問のような場合でも、いわゆる「事業主の責に帰すべき休業」に当てはまると考えれば、休業手当の支払いで足りるということになります。しかし、これはあくまで労働基準法違反で罰せられないということであって、民法第536条2項に規定がある「債権者の責めに帰すべき事由により履行をなすことができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない」という規定から、会社側が業務上の正当な理由がなく労務の提供を拒むようなケースなどについては、裁判などで残りの40%を請求することが可能な場合もあります。
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