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労働実務事例

提供:労働新聞社

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「賃金全額払い」を順守、休暇を取るまで5割増?

「労働新聞」「安全スタッフ」(2010年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 平成22年4月から60時間超の残業に対して5割増の割増賃金を支払う義務を負っています。
 超えた時間について4時間ごとに1時間の有給休暇を与えれば2割5分増しで足りるということですが、60時間を超える時間外を行わせた月には一度5割増しの賃金を支払い、実際に代替休暇を取得させた後に、2割5分差し引くことになるのでしょうか。

新潟・K社

[ お答え ]

 代替休暇を実施する場合には、代替休暇に関する事項を労基法第89条の「休暇」として就業規則に記載する必要があります。
 代替休暇に係るものとして、以下の事項を労使協定で定めなければなりません。
① 時間数の算定方法
② 付与できる単位
③ 付与できる期間
 その他、取得日・割増賃金の支払日も定めることが望ましいでしょう(平21・5・29基発第0529001号)。
 労働者が代替休暇を取得しなかった場合に支払う割増賃金率は、労基法第37条の規定により5割以上の率、労働者が代替休暇を取得した場合に支払う割増賃金率は、2割5分以上の率とする必要があり、いずれも就業規則に記載しなければなりません。
 付与できる単位は、1日あるいは半日とされ、その一方あるいは両方を取得単位として就業規則に定める必要があります。
 代替休暇を与えることのできる期間については、時間外労働が1カ月について60時間を超えた当該1カ月の末日の翌日から2カ月以内とされており、労使協定では、この範囲内で定める必要があります。1カ月以上の期間を定めた場合は、前々月と前月分の時間外労働に対応する1日あるいは半日の休暇を取得することも可能です。
 さて、ご質問にある代替休暇取得時の割増賃金の支払い方法ですが、たとえば、休日労働において、事後に労働日と休日を振り替える「代休」の場合、代休を取得するまでは135%の休日割増を含めた賃金を支払わなければ、労基法第24条の賃金全額払いに違反する可能性が生じます。
 一方、代替休暇は、労働者の代替休暇取得の意向によって変わってきます。代替休暇取得の意向がある場合には、時間外労働に対して支払義務がある2割5分以上の割増賃金を60時間以上の時間外労働が発生した賃金計算期間に応じる賃金支払日に支払えば足ります。しかし、代替休暇を取得する意向であっても、実際に休暇を取得しないことが確定した場合は、労働者が代替休暇を取得できないことが確定した賃金計算期間に係る賃金支払日に5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。ただし、5割増の割増賃金が支払われた後でも、代替休暇の請求可能期間内であれば、2割5分を差し引くことによって、取得を認めることも可能です。



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