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労働実務事例

提供:労働新聞社

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等級該当を判断するには障害状態の証明が必要か

「労働新聞」「安全スタッフ」(2010年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 私は作業中に腕のねんざをして、非常に痛いので休みました。そのため労災保険から休業補償をもらったのですが、その後も痛みが消えないので、障害補償をもらえないかと考えて労基署に相談に行きました。ところが担当官は、あなたが自分で痛いというだけではだめだから、それを証明する必要があると答えました。ねんざだけですが、そんな必要があるのでしょうか。

静岡・T生

[ お答え ]

 労災保険は、事業主から保険料を納付してもらって、それにより保険給付を行っているのですから、保険料は大事に使用する必要があります。そこで、被災者本人が痛いといえば、本当に痛いのでしょうが、それだけでは不十分です。大事な保険料を障害補償として支払うのですから、どうしていつまでも痛いのか、医学的にも証明できることが必要となります。そのため厚生労働省労働基準局長通達(昭50・9・30基発第565号、平15・8・8基発第0808002号)にも、「障害補償は、障害による労働能力のそう失に対する損失てん補を目的とするものである。したがって、負傷または疾病(以下「傷病」という)がなおったときに残存する、当該傷病と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態(以下「廃疾」という)であって、その存在が医学的に認められ、労働能力のそう失を伴うものを障害補償の対象としているものである」と説明しています。
 判決については、頭頂部挫傷治ゆ後の神経症状を障害補償給付の対象として認めなかったもので、証明責任について比較的詳細に説明している次のようなものがあります。
「労働者が労働基準法第75条以下の規定によって使用者の災害補償責任を追及する場合においては、その災害補償事由の存在につき証明責任を課せられることは右各規定の文理に照らして明らかであること等を考え合わせると、労災保険法に基づく保険給付の支給を受けようとする者に対しても右保険給付の要件をなす災害補償事由の存在についての証明責任を課せられるものと解釈しなければならないのであって、(途中省略)同法施行規則第14条の2の各規定が存在することによっても、これを裏付けることができるのである」(新聞店員事件=札幌地判昭48・9・28)。
 これは神経症状について、自覚症状のみで医学的説明が十分でなかったものです。
神経症状の障害補償
 ご質問の場合には、腕のねんざによる痛みが残っているのが障害補償の支給対象にならないかということのようです。そこで、該当しそうな障害を労災保険法施行規則別表第1からひろってみますと、次の2つがあるようです。

 では第14級の9号にいう、単なる神経症状を残すものと第12級の12号にいう、がん固な神経症状を残すものとは、具体的には一体どう違うのでしょうか。そこで、前に引用した厚生労働省労働基準局長通達をみてみますと、前者については「通常の労務に服することができるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」が該当すると説明されています。後者については「通常の労務に服することができるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支える場合があるもの」と説明しています。
 以上の説明でも、なかなか判断がむずかしい場合があるかもしれません。実は、この第12級と第14級の局部の神経症状の障害等級については、以前はもっと分かりやすい通達があったのです。それは次のようなものでした。
第12級 患部の治ゆ後当該部位に頑固な疼痛又は知覚異常等が残り、その症状が少なくとも6カ月以上にわたり持続する場合には第12級とする。
第14級 その程度が比較的軽く疼痛又は知覚異常等が患部の治ゆ後3カ月以上持続し、自然経過により概ね消退する場合には、第14級とする。
 この通達は残念ながら昭和34年3月27日付基発第194号通達により廃止されてしまいました。この通達は、疼痛や知覚異常等が将来消退することも前提にしているため、3カ月とか6カ月とかいう具体的な数字が示されたものでしょう。現在の前述した通達でも「将来においても回復が困難と見込まれる」ものが対象とあるので、必ずしも回復が不可能なものだけが対象ではないようです。したがって、そのようなことも考えて医師に意見書を書いてもらうことも、考えられないことではないかもしれません。



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