労働実務事例
[ 質問 ]
車と接触事故を起こしてケガを負った社員がいますが、本人は健保で治療を済ませたといっています。本来的には、相手に全額治療費を負担してもらうべきで、健保を使うべきではなかったと思うのですが、いかがでしょうか。
宮崎・T社
[ お答え ]
交通事故を起こした運転者は、刑事責任等のほか、民事上の責任として損害賠償の義務を負います。しかし、可及的速やかに行ったとしても、運転者の加入する保険等の請求手続には一定の時間がかかります。
相手方が全額立て替えてくれればよいのですが、当座の応急策として、健保を使うケースもあり得ます。傷病の発生原因が「第三者(お尋ねのケースでは、運転者)」にある場合の調整の方法は、健保法第57条に規定されています。
同条第1項では、「保険者は、給付の価額の限度において、被害者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する」と規定しています。つまり、保険者は治療優先の考えに基づき、加害者の負担すべき費用を立て替えますが、後日、加害者に対して請求するというプロセスを踏みます。ただし、療養の給付を受けた場合、本人は3割相当の自己負担金を支払う必要があります。
保険者は、その分を差し引いた保険給付分を、加害者に対して請求することになります。
必ず健保優先ではなく、「被害者が第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、保険者は、その限度において保険給付を行う責めを免れる」(同条第2項)と定められています。
お尋ねのケースでは、第三者の行為による傷病に該当するのですから、健保を使ったときは、「遅滞なく『第三者の行為による傷病届』を保険者(協会けんぽの都道府県支部等)に提出する」(健保法施行規則第65条)必要があります。
届には、届出に係る事実、第三者の氏名・住所等(明らかでないときは、その旨)、被害の状況を記載します。
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