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労働実務事例

提供:労働新聞社

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平成22年から労災へ統合になり、船員保険の給付はどうなる?

「労働新聞」「安全スタッフ」(2011年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 平成22年から船員に対しても労災保険法が適用されるようになったと聞きましたが、その内容について知りたいと思います。船員には船員保険法があり、それは業務上外を問わず保険給付を行い、その給付内容も労災保険よりよいものもあったようですが、それはどうなるのでしょうか。逆に特別加入等についてはどうなるのか、その辺のところも簡単でもよいですからご説明ください。

【岩手・N生】

[ お答え ]

 ご質問のように、平成22年1月1日から、船員に対しては労災保険法が適用されるようになりました。では、まず問題になるのは、適用対象になる船員の範囲ですが、まず、そのことから説明します。
 労災保険法が適用されるようになった船員とは、船員法第1条にいう船員です。船員法第1条による船員とは、その第1項によると、「日本船舶または日本船舶以外の国土交通省令の定める船舶に乗り組む船長及び海員並びに予備船員をいう」ということです。そして第2項には、総トン数5トン未満の船舶等一定の船舶は第1項の船舶には含まないと規定されています。
 この場合に大事なことは、労災保険法が適用されるのですから、その船員は労基法第9条に規定する「労働者」に該当することが必要です。そうなると労災保険法では、労働者に該当しなくても、一定の身分があれば「特別加入」できるという制度がありますが、船員ではそのような制度はないかということになります。
 そこで、特別加入できるものを見てみますと、例えばその1つには「船員法第1条に規定する船員が行う事業」(労災保険法施行規則第46条の17第7号)というのがあります。そうしますと、これに該当することにより特別加入することができ、特別加入が認められれば、労働者である船員を使用していなくても労災保険法による保険給付を受けられることになります。中小事業主等に該当しても同じです。
 なお、「船員法第1条に規定する船員」というのは、第1条に「船舶に乗り組む」とあります。その意味は、単にその船舶に乗っているだけでなく、「船内航行組織体に継続的に加入することをいう」(昭38・6・1員基第95号)という行政通達があるので、注意する必要があります。
 また、日本国内に事業所がなく、その船舶に主権が及ばない場合には、当然そこは労災保険適用の問題は生じないので注意する必要があります。
 それから海上の船舶勤務という性格上、業務災害と通勤災害については、その範囲について若干考慮を要する場合があるので、行政通達を読むとよいと思います。
給付内容の差
 最も関心があるのは、給付内容に優劣がある場合でないかと思います。例えば、船員の場合には、船員が職務上行方不明になったときには、行方不明手当金が配偶者等に対して給付されます。しかし、そのようなことは労災保険法には何も規定されていません。では、労災保険に加入した船員が行方不明になった場合にはどうなるのでしょうか。
 このような場合には、どうなるかといいますと、労災保険からは労災保険法に規定があれば、その規定に従って給付が行われ、不足分があれば、それは従来どおり船員保険から給付されるということです。
 では、そのようにして給付される船員保険の給付にはどのようなものがあるかというと、以下のとおりです(船員保険法第29条第1項)。
① 療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問介護療養費および移送費の支給
② 傷病手当金の支給
③ 葬祭料の支給
④ 障害年金差額一時金の支給
⑤ 行方不明手当金の支給
⑥ 遺族年金の支給
⑦ 遺族一時金の支給
⑧ 遺族年金差額一時金の支給
 労災保険からも支給される給付についての不足差額は、労災保険法からの支給が決定されないと船員保険からの給付も行われません。
 例えば、労災保険では障害は残っていないとして不支給決定したのに、船員保険では障害が残っているとして障害等級を決定して、障害補償費の全額を給付したり、差額を支払ったりすることはないということです。
 なお、保険給付については、費用徴収や第三者に対する求償という問題もありますが、それらについてはそれぞれ過渡期の特別な扱いもあるようですので、ご注意ください。



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