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シリーズ「
コンピテンシーをレビューする!」
<第376回>[(第34話)「かたぶつ集団を仕事のできる飼育員集団に
変身させた旭山動物園前園長のマネジメントに学ぶ!」]
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今話題の「会社を救う
コンピテンシー」とは何かと
コンピテンシーの導入の必要
性について、分かりやすく解説します。今回のシリーズでは、「
コンピテンシー
をレビューする!」と題して様々な角度から鋭く分析した記事を紹介していきま
す。中小企業の経営者の方、管理者の方、
人事担当者の方に是非ともお読みいた
だきたいと思います。
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今回のメニュー
【1】心に刻んでおきたい言葉
【2】メルマガ本論
1.年上飼育員、四面楚歌の係長が打った手は!
2.一番の口下手が行動展示の原型を創ってしまった!
3.坂東園長に後を託す!
【3】今日のまとめ
【4】編集後記
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旅行会社は北海道旅行のツアーを組むとき、多くは旭山動物園をコースに加える。
今や、年間200万人が訪れる人気スポットになっているからだ。お目当ては動物
の「行動展示」だ。動物たちが野生の生活そのままを迫力満点の大パノラマで見
ることができる。
だが、旭山動物園は廃園の危機にあった。前小菅正夫園長が入園して10年が過ぎ
た頃だった。娯楽の多様化もあり、檻の中の動物を見せるだけではお客を呼べる
状態ではなかった。旭山動物園の運営母体は旭川市役所だ。赤字になれば市民の
税金で補填するしかない。だが、そこに働く職員たちには危機感などない。だっ
て市がやっているのだもの。
市としても何とかしなければという危機感があり、「遊園地化」を試みた。ジェ
ットコースターを導入したりして子供が喜ぶ仕掛けを作った。だが、一時しのぎ
にしかならなかったのである。さらには「ウルトラマンのショーをやれ」。市と
してもあせっていた。
獣医として入園した小菅氏は職人気質の飼育員たちになかなか受け入れられなか
った。年上の飼育員たちは「獣医のくせに何だ、こんなことも知らないのか」と
か「獣医のくせに注射一本打てないのか」などと事あるごとにいやみを言われた。
つまり「四面楚歌」だったわけだ。だが、北大時代に柔道部の主将をやり、その
ときの経験を生かして年上の飼育員たちを味方に引き入れて旭山動物園を成功に
導いていった。
そこで今回は「かたぶつ集団を仕事のできる飼育員集団に変身させた旭山動物園
前園長のマネジメントに学ぶ!」と題して、「超人気動物園にする」ために前小
菅正夫園長が採ったマネジメントについて解説する。
【1】心に刻んでおきたい言葉
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部下とは言え、ほとんどの飼育員が年上でしかも“かたぶつ“ばかり。そこで上
司の係長をうまく動かして「飼育勉強会」の開催に成功し、年上飼育員との溝を
生めることに成功しました。
小菅正夫
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【2】メルマガ本論
[(第34話)かたぶつ集団を仕事のできる飼育員集団に
変身させた旭山動物園前園長のマネジメントに学ぶ!]
1.年上飼育員、四面楚歌の係長が打った手は!
筆者もビジネスマン時代に年上の部下に持ったことがある。部下とは言え、人生
の先輩だから言葉遣いからして気を使わなければならない。命令調ではなくお願
い調で仕事の指示をする。簡単に「ハイ、分かりました」とはならないケースが
多かったのを覚えている。
前小菅園長は北大時代に柔道部の主将をやっていた。そのときの経験が生かされ
た。
□ 上司をうまく使え!
長年の経験とノウハウを持つベテラン飼育員に分からないことを質問しても教え
てくれない。「自分で調べろ」と言い返される。中には「お前は、何時からオレ
に質問するほど偉くなったのだ」と意地悪く切り返してくる飼育員もいたと言う。
北海道大学といえば国立の有名大学だ。どうしても飼育員たちはコンプレックス
を持つのだろう。飼育員たちと獣医の小菅氏の間には深い溝が生じていた。
□ リーダーシップは「巻き込む力」!
北大の柔道部は万年最下位候補。「今年こそは勝とう」と意気込んで練習に励む
のだが、成果は出なかった。そんな時、柔道部の主将になってしまった。小菅主
将は「勝とうと思うな。負けなければいい。引き分けに持ち込むことを目標に闘
おう」と提案したのだった。
「引き分けに持ち込むための闘い方は各人に任せるから自由にやってくれ」。つ
まり、目標は明確になった。「負けない柔道」だ。目標が定まったのだからあと
はみんなの多様性を尊重するという考え方だ。これで見事準優勝したのだった。
このとき「リーダーシップとは、巻き込む力」だと小菅主将は知った。
年上飼育員たちとの溝を生めるため、先輩との議論の場を作ることを係長に提案
した。中身は「飼育勉強会」だ。他の動物園には飼育研究会があるのに当園には
ない。かくして「飼育勉強会」の名の下に議論の場ができて、前向きな話ができ
るようになった。
入園して10年が経ったころ、お客は激減し、旭川市役所は廃園まで視野に入れる
ようになった。ところが運悪く係長を拝命してしまったのである。前述したよう
に「遊園地化」を試みたが一時しのぎにしかならなかった。
小菅係長は全員参加の「ワンポイントガイド」を考案して全飼育員に提案した。
裏方だった飼育員がお客様の前に立ち、動物たちの魅力を説明するというものだ。
だが、上がり症の人、人前で話すのが苦手の人がいて、最初は反発を食らった。
小菅係長は「やり方は任せる。各自で考えてくれ」と自由裁量の余地を与えた。
紙芝居風にする人、音楽を採り入れる人などさまざまな「ワンポイントガイド」
が繰り広げられた。
2.一番の口下手が行動展示の原型を創ってしまった!
「アカハナグマ」の「ワンポイントガイド」の日がやってきた。アカハナグマの
特徴は鼻が長くて赤い。そして嗅覚が発達していて、臭いをかいで餌を探す能力
が抜群だ。
アカハナグマの飼育員は上がり症で口下手。彼は小菅係長に「オレはしゃべれな
いから、しゃべらなくてもいいか」と言ってきた。「しゃべらなくてもうまい方
法があればワンポイントガイドになるね」と小菅係長は答えた。彼は「分かった」
と言って引き下がった。
□ バナナを針金に吊るす
彼はポールとポールの間に紐を結び、紐に針金でバナナを吊り下げるという仕掛
けを作った。アカハナグマは、紐を何とか渡ろうと必死になる。恐る恐る紐を渡
っていき、針金で吊るされたバナナを前足で手繰り寄せ、見事にバナナをゲット
した。
お客様から拍手とどよめきが起こった。「行動展示」の原型がこうして出来上が
ったのだ。上がり症で口下手が一言もしゃべらずにお客様に驚きと感動を与えた
のだ。
□ 飼育員たちの多様性を生かす
小菅係長は園長になっても部下の多様性を大切にした。自由裁量があるから自分
で考えてやればいい。目標はお客様に驚きと感動を与える「ワンポイントガイ
ド」だ。
園長時代に成長著しかった坂東元氏(現園長)に新しい施設作りを任せた。坂東
氏はペンギン館を2002年に完成させている。水中で泳ぐ姿を頭上越に見ることが
できる。以来、動物たちの野生での姿を再現させた「行動展示」が次々完成して
いった。
部下の皆さんは「自分事(じぶんごと)化」して考える習慣が根付いてきたので
ある。仕事のできる人の集団ができた証である。
3.坂東園長に後を託す!
小菅園長は引退にあたり、手塩にかけて育てた坂東元氏を園長に抜擢した。「行
動展示」の達人であり、飼育員たちからの信望も厚いから適任だった。
ガラス越しに白熊が泳いで迫ってくる姿は迫力満点だ。冬にはお客様がペンギン
の行列に参加できる。ペンギンはお客様を恐れない。お客様の感嘆の声、カメラ
のフラッシュとシャッター音にも動じない。
小菅全園長は「行動展示というコンセプトさえぶれなければあとは何でもやって
もらったらいい」と温かく見守っている。
前小菅園長の「引き込み力」なる
コンピテンシーが仕事のできる人の集団を作っ
ていったのだ。自分が主役だと部下に思わせる理想のリーダーシップだった。
【3】今日のまとめ
1.大学出のエリート獣医と飼育員たちの間には溝が生じたが「飼育勉強会」の
名の下に議論の場作りに成功したこと。
2.大学時代、柔道部の主将として「負けない柔道」を提案して準優勝に導いた
経験を生かすことができたこと。
3.全員参加の「ワンポイントガイド」を提案して推進していたとき、上がり症
で口下手な飼育員が、アカハナグマがバナナを取る仕掛けを紹介したところ
拍手とどよめきが起こったこと。
4.アカハナグマにバナナを取らせる仕掛けが「行動展示」の原型となり、旭山
動物園名物の「行動展示」が爆発的にヒットしたこと。
5.前小菅園長は「自分が主役だと部下に思わせる理想のリーダー」だったこと。
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【4】編集後記
だいぶ前になるが「アンタが大将」というキーワードが流行ったことがあった。
一人ひとりの部下は多様性に満ちている。その集団を率いるのは容易なことでは
ない。
だが、向かうべき目標が明確であればこの部分では「金太郎飴」だ。しかし、や
り方は各自考えてやればいい。つまり自由裁量だ。前小菅園長はこうして仕事の
できる人の集団作りに成功したのだ。
長文を最後までお読みいただきましてありがとうございます。=
次回に続く。
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彩愛コンサルピア代表 下山明央
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