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コラムの泉

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人事のうんちく

1,ベースアップと定期昇給

 4月になると世の中の多くの会社が昇給を実施します。最近は物価の安定と新規学卒者の初任給の安定で以前ほど多くの昇給をしなくなりました。大手企業の平均で所定内賃金の1.5%前後、中小零細企業の平均で所定内賃金の1.0%前後だと言われています。この数字が大きいか小さいかはそれぞれの会社の状態によるので一概になんとも言えませんが、統計をとるとこれぐらいになります。
 ところで、昇給には大きく2つの要素が有ります。1つは定期昇給、もう1つがベースアップです。定期昇給とは、定期(毎年4月等)に一定のルールにのっとって行われるものです。例えば、勤続年数が1年増えれば1,000円給与が上がるルールになっているとか、毎年の評価で平均すれば2,000円給与が上がるルールになっているというものです。この定期昇給の平均的な昇給の率は大企業で1.5%と言われていますから、最近の昇給はこれしか実施されていないということになります。
 定期昇給で人件費総額がどれぐらい上昇するかは会社経営にとって非常に重要な問題ですが、実は理屈の上では定期昇給による人件費の上昇は0となります。理由はこうです。仮に20歳から60歳まで一人ずつ社員がいる会社の定期昇給を一人1万円として、20歳の社員の給与を20万円としましょう。40人に1万円ずつ昇給しますから、40万円の原資が必要だと思われがちです。個人別でみると確かに1万円の昇給をしているのです。しかし会社全体では、昇給前も後も給与総額は1,640万円になります。去年も今年も20歳から60歳まで一人ずつ社員がいて各年齢の社員の給与は同じ(去年の60歳の人も今年60歳の人も給与は同じ60万円です)ですから、定期昇給による人件費の上昇は0となるわけです。
 ところが、新入社員の給与が去年に比べて高いとか、物価が上昇して去年と同じ給与水準にすると実質的に給与が下ったようになってしまうとかの事情が有る場合には、給与水準の引上げが求められることになります。これがベースアップです。毎年1万円給与が上がるというルールの他に元々の給与自体を上げて、さっきのような事情を解消する操作を
します。ベースアップは人件費の総額を押上げてしまいます。先程の例でベースアップを一人5,000円実施すると20万円の人件費上昇です。しかもベースアップは、昇給のルールの元になる給与を書換えることになります(60歳の給与は60万円+5,000円の605,000円へルールの元の給与を書換えてしまいます)から経営者としては慎重にならざるを得ません。最近は定期昇給だけでベースアップは実施されていないのは、物価の上昇や新規学卒者の初任給の上昇といった事情がないのことと同時に、人件費の上昇に慎重な経営者の姿勢が表れているといえます。

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