
知っていれば得!銀行の3大業務から考える「資金調達」のポイント
中小企業にとって“銀行と対話する上で大切なこと”をテーマに書き綴ってまいります。今回は後編です。前編よりも具体的に、どういう取引をしていけば、銀行が喜んでくれるのかレクチャーしてまいります。ノウハウ中心の内容となっていますので、できそうなものはぜひ実践していただきたいと考えております。
突然質問ですが、銀行の3大業務をご存じでしょうか?
答えは(1)預金、(2)為替、(3)融資の3種類です。今回はこの分類ごとにそれぞれ説明してまいります。できる範囲で、自社にとって“よいな”と感じた項目は、銀行交渉のカードとして使ってみていただければと思います。ぜひ、最後までお読みいただければ幸いです。
【前回はこちら】資金調達のカギは「銀行」!金融機関と対話するときに大切なこと
目次
預金取引で喜んでくれること3つ
(1)法人取引で毎月一定額積み立て預金をする
返済をしていく力に疑問を持たれているときは、特に有効になります。銀行としてざっくりいえば、通常の返済に積み立て分を加算して返済してもらっているような感覚をもってくれます。
(2)従業員の給与口座設定
今でこそ色合いは薄くなりましたが、従業員からの個人取引の拡大も虎視眈々と銀行は狙っています。特に第二地方銀行・信用金庫・信用組合など地域密着型の金融機関は、マイカーローンや住宅ローンなどに繋げていきたい思惑があるので、喜んでくれます。
(3)売上入金の口座設定
一般的に、一箇所にまとめていることが非常に多いと思われます。「メジャーな都市銀行の方が取引先の信用があがるから、借入はないけど都市銀行に設定している」なんてことはありませんか? 経営に余裕がある際は何の問題もありませんが、「ちゃんと売上はあるのか?」という疑問を、ちょっと無理して融資を出してくれている銀行ならば持つのが当然です。特に、信用金庫・信用組合という地域金融機関は預金取引を大切にします。できることなら、(銀行の)融資シェアに合わせた比率で売上入金口座を分けて管理しましょう。
為替取引で喜んでくれること3つ
為替(かわせ)と聞いて、よく分からない方もいると思います。単純に国内の振込、送金と思ってください。
(1)メインの支払い口座に設定する(ネットバンクは必須)
これは知っているようで知らない、いわずと知れた王道です。銀行側は“入手金パイプの確保”なんて表現したりします。要は、事業の実態を把握しやすくなるという最大のメリットが銀行側にあります。融資は出したけど資金のやり取りが別の銀行だと、「どんな取引しているのだろう? 本当にちゃんと事業をしているのだろうか?」と疑われても仕方がありません。一説によると程度に差こそあれ、約35%の企業が粉飾しているというのが中小企業会計の不都合な真実です。「要は資金の流れをできるだけ正確に把握したい!」と考えるのが銀行の本音であり思いです。
(2)公的支払い、経費の引き落とし口座に設定する
自動引き落としでも僅かながら銀行は手数料を得ています。“ちりも積もれば山となる”の精神は色濃く残っていると思います。
(3)関連会社のクレジットカードを作成
ノルマで苦しむ若手の銀行員との関係性を作る一つのコツは「営業の数もの(クレジットカードやNISAなど)で本当に困ったら、遠慮なくいってきてくださいね」とあらかじめ伝えておくことです。信頼関係が一気に高まります。前編の内容と少しかぶりますが、この前段階で「時間に余裕ができたときは、情報交換がてらお茶を飲みにきてくださいね」もわりと担当者としてグッとくるフレーズです。
融資取引で喜んでくれること3つ
(1)保証協会付融資の比率を意図的に他行より高めに設定
銀行にとって信用保証協会付融資(通称:マル保融資)はリスクのほとんどないおいしい融資です。メインバンクに優先的に保証協会融資の利用(プロパーは当然出してもらった上で)をするよう促すのも手です。
(2)関連にコンサルティング会社がある場合は目的に合わせて利用する
プライバシーマークやISOの取得、最近でいえばSDGs関連の認証、事業再構築補助金の申請、資本性劣後ローンの資料作成など、いわゆる煩雑で難易度の高い資料作成を(それなりの手数料はかかってしまいますが)意図的に相談し、頼むと親会社である銀行とはかなり親密になります。しかし、コンサル会社ごとにできる業務範囲と能力にかなり差がありますので、相談してみて相手の反応を見ながら慎重に判断してください。コンサル会社を関連で持っているのはたいてい第一地銀(地域トップ行)です。第二地銀や信用金庫の場合は、保険代理店や不動産会社、リース会社などがあるので、できる範囲で利用しましょう。
(3)融資先の紹介と業務斡旋の場合は協力する
いわゆるビジネスマッチングに協力してあげるのも一つの手です。本当にお客さんの役に立つかという視点ではなく、“紹介数”が支店の評価につながったりするので、できるだけ協力してあげます。こちらから紹介を依頼する場合は、ダメ元でかなり高めの宿題を投げて、うまくいけばラッキーのイメージで利用すると、営業代行会社としての機能を発揮してくれます。筆者の知っているホームページ制作会社は、かなりの比率で銀行紹介の案件が入ってくるそうです。つまりハマる企業とそうでない企業があるということでしょう。融資金利以上の収益を得られるかは、銀行をどれだけ利用するかという意識にかかっていると思います。
【こちらもおすすめ】できる経営者はどうしてる?金融機関との上手な付き合い方【事業コンサルが解説】
まとめ
今回紹介した例はあくまで一部です。いつの時代も信頼関係構築の王道は、よくコミュニケーションを取ることです。ひょっとしたら、銀行は思った以上にあなたの企業のために働いてくれるかもしれません。苦手意識がある方も多いかもしれませんが、金融機関は自社のビジネスの促進剤となる存在です。あくまで対等なビジネス相手として取引金融機関と密に話しながら自らの事業発展に役立ててほしいと思っております。
前編・後編と2回に分けてお伝えしましたが、銀行取引向上のきっかけになることを願っております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【こちらもおすすめ】融資を受けるには、どうすれば?金融機関が「融資を避ける」中小企業の特徴と解決策
*Graphs, artswai, freeangle, EKAKI, nonpii, buritora / PIXTA(ピクスタ)