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資金調達

中小企業の資金調達方法は?弁護士兼中小企業診断士が代表的な方法を解説

2022.10.11

株式会社は事業の継続やさらなるステージアップに向けて、外部からの資金調達が必要となるケースが多くあります。中小企業の経営者や管理職にとっても、資金調達は最も重要な業務の一つです。

本稿では、弁護士兼中小企業診断士である筆者が、安定的な事業の継続やさらなるステージアップを検討している中小企業の経営者や管理職に向けて、外部からの資金調達方法とそれぞれのメリット・デメリットなどを解説します。なお、本稿は、筆者が日頃接している一般の中小企業を念頭においています(IPOを目指すベンチャー企業などは対象としていません)。

中小企業による外部からの資金調達方法には、概ね4つに大分されます。順に見ていきましょう。

1:金融機関からの借り入れ、会社経営者による貸し付け

(1)金融機関からの借り入れ

中小企業においては、金融機関から借り入れをすることが最もオーソドックスな資金調達手段です。自社の取引銀行だけでなく、日本政策金融公庫などの政策金融機関からの借り入れも考えられます。日本政策金融公庫の融資制度には、個人事業主・小規模企業を対象とする国民生活事業(融資残高平均約1,000万円、短期の運転資金も可)や、中小企業を対象とする中小企業事業(融資残高平均約1.3億円、短期の運転資金は不可)などがあります。

金融機関からの借り入れは、比較的、低金利で返済期限が長期に渡るなど有利な条件であることが多いです。反面、借り入れをするには、金融機関による審査があり、一定の要件を満たす必要があるなど、必ずしも融資を受けることができるわけではありません。

(2)会社経営者による貸し付け

このような場合、次の選択肢となるのは、経営者が自社に対して貸し付けをして資金提供することです。これは、実務上、よく行われています。経営者による会社に対する貸し付けは、審査などはなく簡便であり、税制上利息が会社の損金になるなどのメリットもあります。その反面、貸し付けにより、会社の自己資本比率が下がるので(これは金融機関からの借り入れの場合も同様です)、第三者からの会社に対する信用維持が低下する可能性があります。

【こちらの記事も】融資と出資の違いは?メリット・デメリット、押さえておくべき落とし穴も【経営の基礎知識をわかりやすく解説】

2:会社法上の資金調達方法

(1)株式の発行

会社がある程度の自己資本比率を維持して、第三者の信用を確保するためには、株式の発行により資金調達することが考えられます。会社成立後の株式の発行は、「募集株式の発行等」として、会社法199条から213条の3までに規定されています。その類型には、①株主割当て、②第三者割当て、③公募(時価発行)の3つがあります。

①株主割当て

すべての株主に「株式の割当てを受ける権利」を与える形で株式の発行がなされるものです(会社法202条)。各株主が、持株数に比例してその権利を持ちます。中小企業においては、各株主が持ち株(議決権)比率の維持に関心を持つ傾向があることや、株式に市場価格がなく公正な払込金額を決定することが困難であることから、この方法が採られることが多いです。

中小企業では通常、定款により、株主が株式を譲渡するには会社の承認を要するとされている(全株式譲渡制限会社といいます)ため、原則として株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の多数の賛成)が必要となります(会社法202条3項、309条2項5号)。

②第三者割当て

特定の第三者(現在の株主でもよい)に対して株式の申込みの勧誘および割当てを行うものです(会社法199条)。第三者割当は、通常、株式の引受人(=特定の第三者)との関係を強化しようとする場合(引受人が会社経営に参加する、業務提携するなど)や、会社の業績不振により①株主割当ての方法が期待できない場合におこなわれます。

ただし、第三者に対して発行される株式の価格が安価であると(有利発行といいます)、現在の株主が保有する株式の経済的価値が希釈されるため、有利発行をする場合には、特別の規制がなされています(会社法199条3項、201条1項、200条2項)。

第三者割当てをおこなう場合も、株主総会の特別決議が必要となります(会社法202条3項、309条2項5号)。

【もっと詳しく】第三者割当増資とは?メリット・デメリット、手続き方法を弁護士が解説

③公募(時価発行)

以上に対し、不特定・多数の者に対して引受けの勧誘をするものです。上場会社または株式の新規公開をしようとする会社が市場価格のある株式を対象におこなうものであり、一般の中小企業の資金調達方法として用いられることはほとんどありません。

(2)新株予約権の発行

会社は、新株予約権を発行することによっても、資金調達することができます。新株予約権とは、権利者があらかじめ定められた期間内に、あらかじめ定められた価格を株式会社に払い込めば、当該会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます(会社法2条21号)。新株予約権者は、権利を行使してもしなくてもよく、その意味でオプション(選択権)を有しています(株式を「買う」権利を、コール・オプションといいます)。

通常の中小企業において、資金調達するには、端的に株式を発行すればよく、新株予約権を発行するケースはほとんどありません。中小企業で、新株予約権が発行されるケースは、ベンチャー企業において将来の株価の上昇を見込んで起業家や従業員が取得する場合や、近くIPOが見込まれる会社経営者が安定株主工作の手段として取得する場合が考えられます。

(3)社債の発行

以上のほか、会社法上の資金調達方法として、社債の発行があります。社債とは、会社法の規定によって、会社が行う割当てにより発生する当該会社を債務者とする金銭債権であって、会社法676条各号に掲げる事項の定めに従い償還されるものをいいます(会社法2条23号)。社債も会社による借り入れの一種ですが、会社法の規定によって、その発行手続や償還について定められている点で、通常の借り入れとは異なります。

中小企業が発行した社債が譲渡される期待は乏しいので、発行される例は少ないです。ただ、IPOを目指すベンチャー企業などでは、社債と新株予約権を同時に発行する場合があるようです。

3:比較的新しい資金調達方法~クラウドファウンディング

会社法上の資金調達方法とは異なる比較的新しい方法として、クラウドファウンディングがあります。クラウドファウンディングは、主にインターネット上で、不特定多数の人々から少額の資金の提供を受けるもので、中小企業の資金調達方法の一つとして活用されます。

資金提供者に対するリターン(見返り)の形態によって、金銭的リターンのない「寄付型」、金銭リターンが伴う「投資型」、スタートアップの企業や新しい商品を販売したい企業がその商品やサービスのパトロンを募る「購入型」の3類型に大別されます。資金提供を呼びかけ、一定額が集まった時点でプロジェクトを実行するなどの点に特色があります。100万円程度の比較的少額の資金調達にも適しています。

クラウドファンディングによる資金調達を行うには、複数の運営サイトを比較して、自社の目的や資金調達額などに適したものを利用することが望まれます。

【もっと詳しく】中小企業の強い味方「クラウドファンディング」とは?種類や募集方法を解説

4:経済産業省(中小企業庁)の実施する補助金による資金調達

以上の資金調達方法のほか、筆者がおすすめするのは、経済産業省(中小企業庁)の実施する各種補助金による資金調達です。

代表的なものに、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援する「事業再構築補助金」や、事業承継を契機として新しい取り組み等を行う中小企業・小規模事業者等、及び、事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業・小規模事業者等を支援する「事業承継・引継ぎ補助金」などがあります。

「事業再構築補助金」は、通常枠の場合、従業員20名以下の中小企業であれば、100万円~2,000万円、従業員100名以上の中小企業であれば、100万円~8,000万円の補助金を受けられます(補助率は2/3)。  また、「事業承継・引継ぎ補助金」は、事業承継・引継ぎに伴う経営革新、専門家活用、廃業・再チャレンジの各費用について、最大400万円~600万円まで補助金を受けられます(補助率1/2~2/3)。

その他の補助金は、『jGrants』という補助金専用のサイトに網羅されており、目的などに応じて簡単に検索することができます。なお、補助金の申請は、『gBizID』のプライムのアカウントを取得し、電子申請します。

経済産業省(中小企業庁)の実施する各種補助金は、国の中小企業政策を反映したものであり、実施する価値が高いものが多く、かつ、補助金であるため返還の必要はありません。中小企業による有力な資金調達手段として積極的な活用が望まれます。

【こちらの記事も】いくら受給できるか把握してる?簡単5分でわかる補助金・助成金診断でチェック&一覧で確認

【参考】融資制度を探す / 日本政策金融公庫
会社法(平成十七年法律第八十六号) / e-Gov
事業再構築補助金の概要』 / 経済産業省
令和3年度 補正予算 事業承継・引継ぎ補助金 / 中小企業庁

*アン・デオール、yamahide、freeangle、Luce、ELUTAS / PIXTA(ピクスタ)