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設備投資とは

設備投資にいくらかけるべき?減価償却と設備投資計画の進め方を税理士が解説

2022.02.03

新規事業立ち上げや事業拡大のために設備投資をすることは、中小企業が継続・拡大していくために重要な経営者の選択の一つです。

設備投資をすることで、事業の効率化や売上強化が期待できる一方、大きな資金を投下することになるので、設備投資計画を立てて慎重に検討したうえでの決断が求められます。そんな時、設備投資計画のポイントを理解していれば、スムーズに検討を進められるでしょう。

そこで今回は、税理士の筆者が中小企業の経営者の方にむけて、設備投資を検討する際に知っておきたい“設備投資計画のポイント”を説明しましょう。

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設備投資とは

設備投資とは、事業の発展を図るために、企業が資産として計上すべきものに資金を使うことをいいます。

設備投資といえば新規事業への投資を思い浮かべる方が多いと思いますが、他にもさまざまな設備投資があります。例えば、古くなってしまった旧モデルの機械を取り替えたり、効率化を図るためにこれまでのシステムから新しいソフトウエアに乗り換えるのも設備投資です。近年では、リモートワークのためにVPN接続を検討する企業が増えていますが、そのためのサーバー入れ替えなども設備投資に該当します。

設備投資は大きな資金が動く場合が多いので、慎重な経営判断が求められます。適切な判断を行うために、まず設備投資が果たす管理会計上の役割を理解しておきましょう。

まず減価償却を理解しよう

減価償却とは?

設備投資を検討する際に重要なのが、減価償却を理解することです。

設備投資には、新しく人員の採用、マーケティング調査、建物や機械の取得、新システムの導入、広告の展開などが含まれるでしょう。

このうち、人件費、調査費、広告宣伝費などは、原則として発生した年度の費用として会計処理します。一方で、建物や機械、ソフトウエアなどのように、購入後数年から長いものでは数十年にわたって使用し、収益の獲得に貢献するものは、一度に購入年度の費用とはせずに、いったん資産として貸借対照表に計上します。

このように、購入した設備をいったん資産に計上し、その設備を使用可能期間に応じて、複数の会計期間に渡って少しずつ費用として計上していくことを減価償却といいます。

減価償却の方法は?

減価償却にはいくつか方法がありますが、主なものとして定率法と定額法があります。定率法とは帳簿価額に一定の割合をかけて減価償却費を計算するもので、定額法とは毎年一定の金額を償却していくものです。

それぞれの設備の使用可能期間は、本来なら設備やその使い方によって異なりますが、会計上は国税庁の定めた設備ごとの法定耐用年数に従って償却するのが一般的です。

なぜ、このように面倒な会計処理を行う必要があるのでしょうか? それは、会社法や法人税法に、最長でも1年に一度は会計期間を区切って、損益を確定しなければならないというルールがあるからです。

1会計期間の損益を確定させるにあたっては、その会計期間の収益と費用を対応させることが要求されます。これを“費用収益対応の原則”といいます。設備投資として金額の大きなものを購入したとき、購入年度の費用にせず、使用可能期間にわたって費用化するのは、この原則に従っているからなのです。

減価償却のメリットは?

このように減価償却は、財務会計上のルールにしたがって行われるものですが、その結果、管理会計上、特別な効果をもたらしてくれることとなります。それは減価償却した金額相当分だけ、内部留保ができるということです。

なぜなら減価償却費はキャッシュの流出を伴わない費用だという特徴を持っているからです。内部留保された金額は、借入金の返済に充てることもできますし、新たな設備投資の原資とすることもできます。

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設備投資計画の進め方

設備投資計画を進める際の主なポイントは、次の2つです。それでは1つずつ、見ていきましょう。

1:設備投資のための資金計画
2:投下した資金の回収可能性

1:設備投資のための資金計画を立てる

設備投資のための資金を、どこから捻出するかを検討します。資金の原資としては、下記のようなものが考えられます。

①自己資金
②融資
③増資
④クラウドファンディング
⑤補助金

①の自己資金のみで設備投資の全額をまかなえない場合には、②~⑤の方法をあわせて検討することになります。いずれの場合でも、①が基本になるのは、言うまでもありません。

②の融資はもっともハードルの低い調達方法ですが、他の方法と異なりいずれ返済しなければならないというのが最大のデメリットです。新たに設備投資したことで増加する利益の範囲内で、前述した減価償却費を合計した金額の返済が可能かを検討する必要があります。

③の増資について、中小企業の場合、第三者から出資を受けるのは、ハードルが高いのが現状でしょう。IT関連など将来のM&AやIPOを目指せる事業の場合は、エンジェル投資家*から資金を調達するというのも、1つの方法です。

④のクラウドファンディングは、近年日本でも急速に発達してきた調達方法です。クラウドファンディング事業者のプラットフォーム上で資金をつのり、支援者には“リターン”という形で、自社の商品やサービスを提供します。

最近はプラットフォームの数も増え、広く支援者の共感を得られると、あっという間に1,000万円規模の支援金が集まることもあります。

⑤の補助金については、のちほど別途説明しますが、最初から補助金だけを頼りに設備計画をたてるのはリスクがあります。補助金の採択率は3割程度ということが多く、運よく採択されたとしても、ほとんどの補助金は購入後に審査を経て、後から入金される仕組みになります。

*エンジェル投資家:創業間もない企業に資金を供給する投資家。エンジェル投資家は、見返りとして企業の株式や転換社債で受け取ることがあります。

【こちらの記事も】
【運転資金に困ったら】いざというときのために知っておきたい「資金調達方法」4つ
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2:設備投資の回収可能性を検討する

設備投資を検討する際には、回収可能性を検討することで、設備投資がそれだけの資金を投下するに見合っているかを確認しましょう。これは、設備投資によって生まれる予想利益に、前述した減価償却費を足して、キャッシュベースで計算するのがポイントです。このように利益に減価償却費を足したものを、“簡易キャッシュフロー”と呼びます。

資金の回収可能性を判断するためには、この簡易キャッシュフローからさらに利益にかかる税金をマイナスした金額(税引後キャッシュフロー)が基になります。税金には、法人税、事業税、法人住民税などいくつかの種類がありますが、それらをまとめた実効税率を使って計算するのが一般的です。実効税率は、会社の規模や利益の金額によって微妙に異なるので、厳密には算式にのっとって計算すべきですが、簡便的に約30%と覚えておくとよいでしょう。

回収可能性を検証する4つの方法を紹介

では、キャッシュをベースの設備投資の回収可能性をみていきましょう。回収可能性を検証するには、次のような方法があります。

①回収期間法
②投下資本利益率法
③正味現在価値法
④内部利益率法

①回収期間法:
回収期間法とは、投下した資金を回収するのに、どのくらいの期間が必要かを計算し、投資の安全性を検討する方法です。回収期間が短いほど、安全な投資だということができます。

②投下資本利益率法:
投下資本利益率法とは、収益性を重視して、投資額に対する年平均リターン率を計算する方法です。まず、投資した設備が継続して収益をあげると期待できる期間の税引後キャッシュフローを合計し、投資額をマイナスします。さらに上記の期間で割って、1年あたりの平均税引後キャッシュフローが計算できます。この1年あたりの平均キャッシュフローを投資額で割ると、年平均リターン率を求めることができます。

③正味現在価値法:
正味現在価値法とは、②の投下資本利益率で使った年平均キャッシュフローを、それぞれ現在価値に割り引いて計算するものです。時間差に応じてキャッシュの価値に差が生じることを考慮して、投資の可否を判断します。

④内部利益率法:
内部利益率法とは、将来キャッシュフローの合計額と投資額が一致する損益分岐点を計算し、そのプロジェクトの利回り(内部利益率)が会社の期待利回りを上回るかどうかで、投資の可否を判断するものです。

それぞれの回収可能性について、詳しく知りたいという方は、拙著『マンガでわかる管理会計』(オーム社)を参考にしていただけると幸いです。

【こちらの記事も】利益はあるのに現金がない?「今すぐできる財務管理」でキャッシュフローを計算しよう【税理士が解説】

補助金や税制優遇措置を活用しよう

検討の結果、設備投資をすると決まったら、忘れずに対象となる補助金や、税額控除など税制優遇措置を受けられないか、あわせてチェックしましょう。

1:補助金を検討しよう

補助金とは、経済産業省や地方自治体が、その時々で目指ししている政策を実現するために、ある一定の事業に取り組む会社を支援するための給付金です。融資と異なり返済の義務がないのは魅力ですが、申請すれば必ずもらえるとは限りません。国や自治体の政策にのっとった計画でなければ採択されませんし、採択されたとしても、要項によって使途が限られており、自由には使えない場合がほとんどです。

また、融資と違っていつでも募集しているわけでもありません。補助金の募集期間は1ヶ月程度と短いことが多く、目当ての募集期間に合わせて投資の時期を遅らせると、ビジネスチャンスを失う可能性もあります。

そのため補助金ありきで設備計画をたてるのは、リスクが高いです。しかしながら、自社の設備計画がたまたま補助金の対象となっており、運よく募集期間に該当しているという場合は、もちろんこれを利用しない手はありません。

コロナ禍にあって、使いやすい大型補助金としては、『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』などがあります。自社に適した補助金を探すには、中小企業庁が運営している『ミラサポplus』も活用するとよいでしょう。下記の記事で「設備投資」に役立つ支援制度を紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

なお、もらった補助金は法人税の課税対象になりますが、補助金を使った設備等を購入したときは、圧縮記帳という方法を使って課税を繰延べることもできます。

【こちらの記事も】
中小企業向け「設備投資」に役立つ支援制度を一挙解説【税制度・補助金・助成金】
「補助金」「助成金」「給付金」は課税対象になるの?確定申告のポイントを解説

2:税制優遇措置について検討しよう

企業の設備投資を後押しする制度は、補助金だけではありません。残念ながら補助金の趣旨に該当しなかったり、採択されなかった場合でも、税額控除や特別償却などの税制優遇措置が受けられる可能性があります。

現在、設備投資に関する優遇措置としては、①中小企業投資促進税制と、②中小企業経営強化税制があります。これらの優遇措置を受けるためには、法人税の申告時に会社が自分で選択し、必要書類を添付するなど形式要件を満たす必要があります。自動的に税金が軽減される訳ではないので注意してください。

①中小企業投資促進税制:
中小企業投資促進税制』は、中小企業者などが新品の機械や装置を取得(または製作)して、国内にある製造業・建設業などの指定事業のために用いた場合、その指定事業のために用いた日を含む事業年度に、特別償却または税額控除を認めるものです。

②中小企業経営強化税制:
中小企業経営強化税制』は、青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた一定の中小企業者などが、新品の特定経営力向上設備等を取得・製作・建設して、国内にあるその法人の指定事業のために用いた場合、その指定事業のために用いた日を含む事業年度において、特別償却または税額控除を認めるものです。

 

新規事業立ち上げや事業拡大のために設備投資をすることで、効率化や売上強化が期待できます。しかし一方、大きな資金を投下することになるので、慎重に検討したうえでの決断が必要です。

ぜひ本記事を参考に設備投資計画を立てていただき、会社のさらなる発展につながる設備投資を検討してみてください。

【参考】
中小企業投資促進税制』/ 国税局
中小企業経営強化税制』/ 国税局

*amadank、CORA、freeangle、アン・デオール、ocsa、ELUTAS / PIXTA(ピクスタ)