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2022年4月法改正

【2022年4月・法律改正】義務・罰則は?中小企業が知るべきポイントまとめ

2022.03.23

法律改正により2022年4月から中小企業に求められる様々な義務が発生します。経営者の皆さんは、すべて把握できていますか?

今回は、中小企業を対象とした法律改正のポイントや企業側の新たな義務を紹介しますので、ご自身の認識と相違がないか確認してみましょう。

法改正で変わる男性の育休

2021年6月に育児介護休業法の改正法案が可決され、企業は新制度および現行の育休制度を従業員に知らせ、育休取得の意向を確認することが義務化されました。違反する企業が勧告にも従わない場合、国は社名を公表することもできます。

育休とは正式には“育児休業”のことで、これは法に定められた従業員の権利です。1歳未満の子を育てる従業員であれば、女性も男性も取得できます。改正法は2022年4月から段階的に施行されていきます。

(1)2022年4月から施行

・企業の新たな義務1:個別の従業員に向け、周知と意向確認の義務化
全ての企業には、子どもが生まれることを申し出た従業員に向けて新制度と現行の育休制度を周知し、育休取得の意向を確認することが義務付けられます。具体的な周知方法は、個別に制度説明の面談を実施する、書面で制度の情報提供を行う、などの複数の選択肢から選ぶことになる予定です。

新たな義務と同時に企業は、申し出を理由として従業員に不利益となるような取扱いを行うことが禁じられます。つまり、従業員が自発的に申し出やすいような職場環境を整えることが重要、ということになります。

・企業の新たな義務2:従業員全体に向け、育休を取得しやすい雇用環境整備の義務化
全ての企業には、育休をとりづらい職場の雰囲気を解消するよう、雇用環境を整備することが義務付けられます。具体的には、従業員全体に向けて育休に関する研修を実施する、育休に関する相談窓口を設置する、などの複数の選択肢から選ぶことになる予定です。

より具体的な内容や実施方法は今後、厚生労働省の省令や指針に示されるので情報収集が必要です。

(2)2022年秋から施行

・男性向けに出生時育休制度を創設:いわゆる「男性版産休」
男性従業員に向けて、“出生時育休制度”が新たに創設されます。この制度を利用すれば男性従業員は、出産予定日から8週間経過する日の翌日までの間に、4週間以内の育休を取ることができます。この出生時育休は2回に分割して取得することができます。

なお、改正によって2022年秋からは従来の育休についても2回までの分割取得が可能となるので、男性従業員は最大で4回の育休を、短期長期に組み合わせて柔軟に利用できるようになります。

注目したいのは、就業可能な育休であるという点。現行制度では育休中の就業は原則不可ですが、創設された出生時育休中は従業員の希望で就業できることが法定されました。ただし、就業する場合は、労使協定の締結が必要となります。今後、省令で就業可能日の上限が設けられる見込みですが、男性が出生時育休をとりながらも堂々と働くことが可能とされる点には注目です。

また、今後2023年4月施行には大企業には「育休取得率の公表」も義務付けられます。

【もっと詳しく】改正育休法で「男性の育休制度」はどう変わる?全企業に課せられた新たな義務とは

女性活躍推進法

『女性活躍推進法』(正式名称『女性の職業生活における活躍の推進に関する法律』)の改正により、2022年4月から、常時雇用する従業員が101人以上の企業には、一般事業主行動計画の策定と労働局への届出、及び、自社の女性活躍に関する情報公表が義務付けられます。

『女性活躍推進法』は、女性が職業生活においてその希望に応じて十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備することを目的として、2015年8月に制定されました。同法に基づき、事業主は、
(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
(2)状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表
(3)女性の活躍に関する情報の公表
を行うことされています。同法の改正により、2022年4月以降、従業員数100人以下の企業は努力義務、101人以上の企業は義務の対象です。

では、どのような項目をもとに自社の女性の活躍に関する状況を把握すれば良いのでしょうか。次の4項目が状況把握の必須項目となっています。

(1)採用した労働者に占める女性労働者の割合(女性採用比率)
(2)男女の平均継続勤務年数の差異(勤続年数男女差)
(3)労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況(労働時間の状況)
(4)管理職に占める女性労働者の割合(女性管理職比率)

また、女性の活躍に関する情報については、次の(1)と(2)の区分から、それぞれ1項目以上選択し、2項目以上を公表することとされています。

(1)女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
・採用した労働者に占める女性労働者の割合
・男女別の採用における競争倍率
・労働者に占める女性労働者の割合
・係長級にある者に占める女性労働者の割合
・管理職に占める女性労働者の割合
・役員に占める女性労働者の割合
・男女別の職種又は雇用形態の転換実績
・男女別の再雇用又は中途採用の実績

(2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備
・男女の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
・男女別の育児休業取得率
・労働者の一月あたりの平均残業時間
・雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
・有給休暇取得率
・雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

一般事業主行動計画には、(a)計画期間、(b)数値目標、(c)取組内容、(d)取組の実施時期を記載します。策定した行動計画は、社内の全ての従業員に周知するとともに、厚生労働省が運営する『女性の活躍推進企業データベース』や自社のホームページなどに掲載する方法で外部に公表します。加えて、管轄の都道府県労働局に届出を行います。策定にあたっては、『一般事業主行動計画策定支援マニュアル』も参考にされると良いでしょう。

政府が力を入れている女性活躍推進策の実施にあたっては、中小企業を対象としてさまざまな助成金やアドバイザー制度が設けられていますので、活用していくことがおすすめです。

【もっと詳しく】今、中小企業にも女性活躍推進が求められている!進め方から助成金まで解説

個人情報保護法改正

個人情報とは、生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるものです。顧客情報だけでなく、従業員情報や取引先の名刺といったものも個人情報になります。個人データベースを事業のために継続的に利用していると、営利・非営利を問わず、すべて個人情報取扱事業者となり、個人情報保護法の適用となります(国の機関や地方公共団体や独立行政法人などを除く)。

個人情報保護法の2回目となる今回の改正は、2020年6月に公布され、改正された個人情報保護法の施行は公布後2年以内とされています(一部を除く)。今回の改正の主なポイントは、下記の通りです。

(1)個人の権利確保
・利用停止、消去等の請求権緩和
・保有個人データの電磁的記録による開示や第三者提供記録の本人への提示

(2)事業者の責任の強化
・漏えい等により個人の権利利益を害する場合、個人情報保護委員会への報告を義務化
・違法又は不法な行為を助長するような不適正な個人情報の利用を禁止
・オプトアウト届出(退会手続き)にて第三者提供できる個人データの範囲を限定

(3)個人情報の利活用促進
・仮名加工情報の定義を設け、個人情報に関する利活用促進を図る
・提供先において個人データとなることが想定される場合の第三者提供に関する本人の同意確認を義務化

(4)ペナルティの強化
・法人に対する罰則の大幅引き上げ
個人情報保護委員会の命令違反した場合:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(行為者)1億円以下の罰金(法人)
個人情報取扱事業者(従業員又は従業員であった者)が不正な利益を図る目的で個人情報データベース等を提供、又は、盗用した場合:1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(行為者)1億円以下の罰金(法人)
個人情報保護委員会に対する虚偽報告した場合:50万円以下の罰金(行為者/法人)

ポイント1:個人情報利用の実務
・利用目的の特定
個人情報取扱事業者は、その事業活動で取り扱う個人情報の利用目的をできる限り特定することが求められています(第15条)。

・同意の取得
利用目的による制限では、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えた利用を行わないように求めています(第16条)。

ポイント2:安全管理措置
個人情報取扱事業者が、その取り扱う個人データの漏えい、滅失、又は毀損の防止その他個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることが求められています(第20条)。

ポイント3:個人データの第三者提供
第三者提供の制限では、個人情報取扱事業者が個人データを第三者に提供する場合に本人に同意を得ること、あるいは、同意を得ない場合に本人への通知または本人が容易に知り得る状態に置く必要にあること、個人情報保護委員会への届出することなどが求められています。

ポイント4:外国にある第三者への提供
個人情報取扱事業者は、個人データを海外にある第三者に提供する場合、次に掲げる場合を除いては、あらかじめ、本人の同意を得ることが求められます(第24条)。

ポイント5:保有個人データ開示等に関する実務
個人情報取扱事業者は、保有個人データに関し、次の事項を、本人の知り得る状態に置くことを求めています(第27条)。

ポイント6:匿名加工情報について
匿名加工情報制度は、ビックデータ活用を推進するための制度です。匿名加工情報とは、特定の個人を識別できないように個人情報を加工し、その個人情報を復元できないようした情報のことです。加工にあたっては、個人情報保護委員会規則で定める基準を満たすことが求められますが、加工の基準が抽象的であるため、経済産業省では『匿名加工情報マニュアル』を公表しています。

これまで、特定の個人を識別できないように加工し、非個人情報として制限なく扱ってきた情報のうち、“匿名個人情報”と位置づけられることにより規制が強化されている部分があることにも注意が必要です。

【もっと詳しく】要点をまとめて紹介!個人情報保護法改正の実務対応ポイント6つ

パワハラ防止法

2020年6月より『ハラスメント関連法』が改正され、従来より規定のあったセクシャルハラスメントなどについては事業主への義務を強化、さらに、これまで規定の無かった『パワハラ防止法』が新たに施行されました。2022年4月以降には、大企業だけでなく、中小企業等に対しても義務付けられます。

(1)「パワハラ防止に関する社内方針」の明確化、周知・啓発
社員にパワハラに該当する行為について研修などで正しく周知させ、これらの行為を禁止することを明確にします。また、パワハラを起こした社員に対する処罰の内容などもあわせて就業規則などでルール付けをします。

(2)苦情相談窓口などの設置
パワハラ被害を受けた社員が安心して相談できるような窓口担当を設け、その相談内容に応じて対応するための体制を整えます。

(3)再発防止策の実施
二度と同様のパワハラが起こらないような対策措置を講じます。

(4)パワハラ被害者に対するアフターケアなどの対応
パワハラ被害者が安心して職場に復帰できるようなアフターケアや、プライバシー保護に関する対策を実施します。また、パワハラ被害を訴えたことによる不利益取扱いを禁止するなどのルールも設ける必要があります。

【もっと詳しく】 2022年4月に中小企業に完全義務化!「パワハラ防止」で押さえておくべき対策まとめ

 

法律改正により、2022年4月以降に中小企業に求められる新たな対応や義務についてご紹介しました。社内の周知など含め、従業員がより働きやすい環境を整えて行きましょう。

※この記事は『経営ノウハウの泉』の過去掲載記事をもとに作成しています。

*HIME&HINA、tashatuvango / PIXTA(ピクスタ)