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社会保険料適用拡大

【2022年10月改正】社会保険適用拡大に向けて!年金制度・健康保険法・厚生年金保険法の変更点を整理

2022.06.05

2022年度は、中小企業にとって対応必須となる法改正がいくつか行なわれます。中小企業の経営者および人事・総務担当者にとっては対応に追われる年度となるかもしれません。また、法改正が行なわれることは耳にしていても、具体的にどのような対応をいつまでに実行すべきなのか正確に把握できていない経営者の方もいるかもしれません。

そこで経営ノウハウの泉では『中小企業経営者向けオンラインセミナー』を開催。あすそら社会保険労務士事務所代表・大野知美氏を講師に迎え、2022年度に予定されている経営・人事・労務関連の法改正の概要とポイントを解説いただきました。

ここでは、オンラインセミナーで解説された内容を4回に分けて連載していきます。当記事では、第4回として「年金制度改正法」「改正健康保険法・厚生年金保険法」について掲載します。

第1回:2022年度に会社対応が必要な法改正の概要
第2回:改正育児・介護休業法のポイント
第3回:改正パワハラ防止法のポイント
第4回:年金制度改正法と改正健康保険法・厚生年金保険法のポイント

登壇者プロフィール

大野知美(おおの・ともみ)
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント
あすそら社会保険労務士事務所 代表
東京都社会保険労務士会  働き方改革支援部会メンバー
帝京大学 公衆衛生学研究科 非常勤講師

大手印刷会社、IT企業等での勤務を経て開業。顧問先企業の人事労務相談、就業規則作成の他、人材採用の支援や社内研修、各所でのセミナー講師等を行っている。大・中・小規模、それぞれの企業での会社員経験を活かし、当事者目線に立った支援をモットーとしている。また、誰もがいきいきと能力を最大限発揮して働ける職場環境の実現のため、働き方改革や女性活躍推進、健康経営推進の支援にも携わっている。

年金制度改正で中小企業が対応すべきことは?

2022年10月1日に年金制度改正法が施行され、社会保険の適用が拡大されます。

今回の改正は従業員数が101人以上の企業が対象ですが、2024年10月からは従業員数が51人以上の企業が対象となります。従業員数は“フルタイムの従業員数”に“週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数”を加えた人数です。

今回の改正では、“週の所定労働時間が20時間以上”“2か月を超える雇用の見込みがある”“月額賃金が8.8万円以上”“学生ではない”という条件をすべて満たすパート・アルバイトが新たに加入対象者となります。

対応すべきこと:制度改正について従業員へ周知

会社はこの適用拡大について従業員に周知するとともに、手続きを進める必要があります。以下の4ステップで準備を進めていきましょう。

上の図は、厚生労働省のウェブサイト「社会保険料適用拡大特設サイト」で公開されているものです。また同サイトでは、社会保険料の適用拡大に伴う自社の対象者数やコストの変化を確認できるシミュレーションも公開されているので、ぜひ利用してみてください。なお、社内に対象者が多くいる場合は、説明会を開くことが望ましいです。場合によっては、個別面談する必要もあるでしょう。

健康保険法・厚生年金保険法等の改正で中小企業が対応すべきことは?

こちらも2022年10月1日から制度が変わるものです。この法改正によって、短期の育児休業でも社会保険料が免除となります。

対応すべきこと:制度改正について従業員へ周知

改正健康保険法・厚生年金保険法等についても社内への周知が求められます。

従来は月をまたいで休業すると前月の社会保険料が免除されていました。今回の改正では、それに加え月内で2週間以上育休を取得していれば、その月の社会保険料が免除されることになりました。賞与についても、1か月超の育休取得者に限って賞与保険料の免除対象なります。これらのことを従業員に周知し、不利益が生じないよう準備をしておく必要があるでしょう。

想定される課題と解決法

社会保険の適用拡大に際して「説明会を開いたものの、該当する従業員から社会保険に加入したくないという声があがった」という課題があります。

パートナーの扶養に入っている従業員は社会保険料をパートナーが支払っているため、適用拡大に該当すると自身の給与から社会保険料が引かれてしまい、家族収入に影響が及ぶことを危惧しているケースがほとんどです。この場合、社会保険に加入することのメリットをしっかり伝えることが重要です。たしかに目先の収入、たとえば11月に入る給与だけを考えれば保険料が控除されることで減額される感覚があります。しかし、将来的に得られる年金や、健康保険に加入している場合に傷病手当金や出産手当金が支給されることなどを挙げ、長い目で見ればメリットがあることを丁寧に説明する必要があるでしょう。また、具体的にどのぐらい賃金に影響するのかを尋ねられたときに明示できるよう、シミュレーションをあらかじめ用意しておくことも重要です。

対応する人数が多い企業では、相談窓口を設定してから適用拡大を周知するとスムーズでしょう。社会保険への加入を拒否し、所定労働時間を減らすことによって、業務に影響が及ぶこともあり得るので、管理職にも窓口を設けたことを周知しておく必要があります。

これ以外にも、社会保険の適用拡大にはいくつかの質問が寄せられています。その回答を紹介しましょう。

寄せられた質問と回答

Q:社会保険の適用拡大は、50人以下の企業規模ではいつから適用になりますか?
A:51人以上の企業については2024年から適用されますが、50人以下についてはまだはっきり決まっていません。いずれ厚生労働省から周知があることと思います。

Q:従業員の数え方と新たな加入者の違いはどこにありますか?
A:従業員数の数え方は「A:フルタイムの従業員数」と「B:週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員者数」とを合計した数となり、これが「現在の厚生年金保険の適用対象者」となります。なおBの従業員にはパート・アルバイトを含みます。新たな加入対象者は「週の所定労働時間が20時間以上」「2か月を超える雇用の見込みがある」「月額賃金が8.8万円以上」「学生ではない」といった条件に合致した従業員が該当し、現在の厚生年金保険の適応対応者から拡大することになります。

Q:パートで10年勤続するのであれば社会保険に加入しても年金がもらえるかもしれませんが、2~3年しか勤めないのであれば、納付した保険金は掛け捨て状態になるのではありませんか?
A:確かに、2~3年しか勤務しないとなると、年金の増額は月数百円になるかもしれません。しかし厚生年金については掛け捨てになることはありません。わずかかもしれませんが、毎月の年金の上積みとなるということを理解していただければと思います。

Q:健康保険法、厚生年金保険法による保険料の免除について。賞与の保険料免除とありますが、いつの分の賞与の保険料免除となるのでしょうか?
A:賞与支給月に育児休業を取得した場合に保険料が免除となります。現在は賞与支給月の月末に休業していれば保険料が免除されますが、2022年10月以降は1か月を超える休業をしていることが必要です。

Q:適用拡大について「月額8.8万円」というのは、単純に所定労働時間に時給をかけて判断すればよいのでしょうか。直近の給与は影響しますか?
A:基本的にはその考え方のとおりです。直近の給与に関してはたとえば直近に極端に給与が低くても、通常で8.8万を超える働き方をしていれば該当すると考えていいと思います。もし給与の波が激しくて判断が難しいというようなことがあれば、管轄の年金事務所に具体的に相談してください。

Q:社会保険の適用拡大で2か所目の勤務先(副業先)で加入することになった場合、厚生年金だけ加入し、健康保険は年金事務所へ納付することになるのでしょうか?
A:2つの企業で社会保険の対象となった場合は、両事業所で社会保険が適用されます。その場合、本人が主たる企業を選択し、選択された企業を管轄する年金事務所(協会けんぽではない場合は年金事務所および健保組合)において事務手続きが行われます。保険証は選択された企業のものが交付されますが、もう一方の企業でも加入していることになります。

Q:〇〇〇人以上というのは、他社から受け入れている出向社員も含むのでしょうか?
A:他社からの在籍出向という場合では、制度によって含む場合と含まない場合での判断が分かれると思います。判断がつきにくい場合は、社会保険なら年金事務所へ相談してください。

最終回となる今回、多くの質問が寄せられました。経営者にとっても従業員にとっても、2022年度に施行される法改正の中で最も気になる法改正と言えるのではないでしょうか。もちろん、前回まで解説してきた法改正についても対応が必要です。すでに施行されている法改正も含め、迅速確実に対応を進めましょう。

*mapo、emma / PIXTA(ピクスタ)

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