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融資

「実質無利子・無担保の融資政策」「危機対応融資の申し込みの期限延長」企業が押さえておくべきポイントは?

2022.07.08

政府は、ウクライナ情勢に伴う物価の上昇を受け、緊急対策を決定しました。中小企業対策として、日本政策金融公庫など「セーフティネット貸付」の金利の引き下げと、日本政策金融公庫や商工中金などの実質無金利・無担保の融資制度などの申し込み期限を9月末まで再々延長することを明らかにしました。今回はその中から、実質無利子・無担保の融資や危機対応融資の申し込みの期限延長についてご紹介します。

※最終更新月2022年7月

実質無金利・無担保の融資政策とは

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、売り上げが大きく落ち込んだ中小企業の利用できる特別貸付制度のひとつが、実質無金利・無担保の融資制度です。新型コロナウイルス感染症の影響を証拠立てる書類が必要ですが、事実上の無金利、3年程度の据え置き(返し始めるのは、3年たった後から)、無担保・無保証人などの措置が講じられています。

日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」とは

日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」中小企業向けという制度があります。

・対象者

コロナの影響を受けて、一時的な業況悪化をきたし、下記の1)もしくは2)のどちらかにあてはまり、中長期的には業況の回復・発展が見込まれる中小企業です。

1)最近1か月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%減少
2)業歴3か月以上で1年1か月未満の場合などは、最近1か月の売上高または、過去6か月(最近1か月を含む)の平均売上高(業歴6か月未満の場合は、開業から最近1か月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少

イ)過去3か月(最近1か月を含む)の平均売上高
ロ)2019年12月の売上高
ハ)2019年10月から12月の平均売上高

・資金使途

設備資金・運転資金

・融資限度額

6億円。ただし、3億円を限度として融資後3年目までは実質無利子、4年目以降は基準利息になる。

・返済期間

20年以内(うち据置期間5年以内)。追加で融資を受ける場合は、既に受けた融資についても実質無利子融資への借り換えが可能。

・担保

不要

【参考】新型コロナウイルス感染症特別貸付 中小企業事業 / 日本政策金融公庫
【参考】「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用による実質的な無利子化融資のご案内 / 日本政策金融公庫

・メリット

日本政策金融公庫の融資が下りた場合、返済をしている限り銀行のように決算書や試算表、資金繰り表などの提出を求められない。

・デメリット

政府系の機関であるという性質上、書類の不備などがあると何度もやり直しを求められるなど、融資までに時間がかかることがある。

・提出書類

1)借入申込書
2)法人の登記事項証明書(原本)
3)代表者の個人の印鑑証明書(原本)
4)納税証明書(原本)
5)最近3期分の税務申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)
6)試算表、売上帳またはコロナの影響による売上減少の申告書など

最寄りの日本政策金融公庫支店に電話で相談し、以上の書類を郵送し、面談になります。

【参考】【中小企業事業】 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」のお申込時にご提出いただく書類 / 日本政策金融公庫

【こちらの記事も】税理士に聞く!中小企業の味方「日本政策金融公庫」の融資制度と審査を通すコツを解説

商工中金「危機管理対応融資」とは

商工中金とは正式名称を「商工組合中央金庫」といい、政府が中小企業の組合とともに共同出資を行い設立した中小企業専門の政策金融機関です。日本政策金融公庫と違い、民間の組合から出資を受けていることから、半官半民といえるでしょう。通帳もあり、貯蓄性商品の販売をするなど、一般の銀行の窓口と変わらない側面もあります。

日本政策金融公庫では資金は政府にほとんど頼っていますが、商工中金は90%以上の資金を自己調達しています。いずれも政府出資の金融機関でありますが、商工中金は民間の金融機関に近く、融資の審査が日本政策金融公庫より厳しくなっています。

商工中金は、「新型コロナウイルス感染症に関する特別相談窓口」を設置しており、中小企業向けに危機対応業務として「新型コロナウイルス感染症特別貸付」という制度を行っています。

・対象者

新型コロナウイルス感染症の影響を受け一時的な業況悪化を来し、次の要件に該当し、かつ、中小長期的に業況が回復し発展することが見込まれる事業者向けです。

1)最近1か月の売上高又は過去6か月(最近1か月)を含む平均売上高が、前4年のいずれかの年の同期比5%以上減少している事業者など
2)業歴が3ヵ月以上1年1か月未満の場合や、店舗増加や合併、業種転換等により前4年のいずれかの年の同期と単純に比較できない場合等は、直近1ヵ月の売上高又は過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む)の平均売上高(業歴6か月未満の場合は、開業から最近1か月までの平均売上高)が次のいずれかと比較して5%以上減少している方

イ)過去3か月(最近1か月を含む)の平均売上高
ロ)令和元年12月の売上高
ハ)令和元年10~12月の平均売上高

・資金使途

運転資金、設備資金

・適用利率

商工中金所定の利率。下限は日本公庫の基準金利1.07%(2022年3月31日現在)

・貸出期間

20年以内(据え置き5年以内)

・貸出限度

元高:20億円 残高:6億円

・利子補給制度について

1)商工中金所定の利率が日本公庫の基準金利(上記1.07%)を上回る場合は、元高6億円の借入残高に対して、1.07%(2022年3月31日現在)まで利子補給があります。
2)元高3億円の借入残高に対して、当初3年間は0.9%の利子補給があり、0.17%(2022年3月31日現在)にあります。

・特別利子補給制度について

別途、「特別利子補給制度」により、一定の要件を満たす事業者は、元高3億円の借入残高に対して、当初3年間は金利0%となるまでの利子補給を受けることができます。一定の要件とは、中小企業の場合で売上減少が20%以上、小規模事業者の場合で15%以上などがあります。

【参考】新型コロナウイルス感染症特別貸付のパンフレット / 商工組合中央金庫

【こちらの記事も】融資を受けるには、どうすれば?金融機関が「融資を避ける」中小企業の特徴と解決策

まとめ

どちらも実質無金利・無担保の融資制度ですが、日本政策金融公庫は、機関の性質上融資までに時間がかかることがあるので、少しでも急ぎたい場合は、商工中金の「危機管理対応融資」を検討すると良いでしょう。一方で、融資の審査は民間の銀行に近い商工中金のほうが日本政策金融公庫より厳しいといわれていますので、自社の状況に合わせてどちらに相談するか検討してください。

資金繰りは、経営者の一番重要な仕事といえるでしょう。会社経営の上で資金は人間の体でいう“血”と同じ。大けがをして出血が止まらない時には、止血をして輸血をしなければなりません。血が回らなくなってしまうと死、つまり倒産が待っていることになります。経営者として常に資金のことを頭に置き、場面に応じ適切な資金調達を行いましょう。

【こちらの記事も】結局どうすればいい?新型コロナウイルス関連のお金がもらえる経済支援策まとめ

【参考】
新型コロナウイルス感染症特別貸付 中小企業事業 / 日本政策金融公庫
「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用による実質的な無利子化融資のご案内 / 日本政策金融公庫
【中小企業事業】 「新型コロナウイルス感染症特別貸付」のお申込時にご提出いただく書類 / 日本政策金融公庫
新型コロナウイルス感染症特別貸付のパンフレット / 商工組合中央金庫

*Luce、天空のジュピター / PIXTA(ピクスタ)