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セーフティネット貸付金利の引き下げとは?セーフティネット保証との違いも解説

2022.06.29

日本は中小企業の比率が高い国です。事業数では99.7%が中小企業と言われています。しかし、中小企業は大企業と比べて信用力や担保力も弱く、借り入れが難しいとされています。その弱点を補う上でも、公的な貸付制度を理解しておく必要があります。今回は、政府がコロナ禍や原油価格・物価高騰の緊急対策の一環として決定している「セーフティネット貸付」と金利の引き下げについてと、混同されやすい「セーフティネット保証」についてご紹介します。

※最終更新月:2022年6月

「セーフティネット貸付」とは

「セーフティネット貸付(正式名称は経営環境対応資金)」は、日本政策金融公庫が実施する融資制度です。「セーフティネット貸付」とは、社会的・経済的環境などの外的要因により、一時的に売上の減少など経営状況が厳しいが、中期的には業績の回復と発展が見込まれる企業に対する融資制度であり、後述する「セーフティネット保証」とは異なります。

「セーフティネット貸付」を利用するには、「最近の決算期における売上高が前期または前々期に比し5%以上減少していること」など条件がありますが、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受け利用条件が緩和されています。売上高の減少幅に関わらず、今後も新型コロナウィルス感染拡大の影響が見込まれる事業者は融資を受けられます。融資限度額は、国民生活事業は4,800万円、中小企業事業は7億2,000万円。資金の使い道としては、社会的な要因などにより、企業維持の上で、緊急に必要な設備資金及び経営基盤強化を図るために必要な長期運転資金です。

【参考】「セーフティネット貸付の要件緩和」 / 経済産業省

【こちらの記事も】中小企業活性化パッケージの補助金を活用して、収益力を改善しよう!【わかりやすく解説】

セーフティネット貸付の金利引き下げとは

「セーフティネット貸付」の金利引き下げとは、日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金において、基準金利が引き下げられることです。対象は、社会的な要因による一時的な業況悪化により資金繰りに著しい支障を来している事業者又はそのおそれのある事業者のうち、原油価格上昇をはじめとした原材料・エネルギーコスト増の影響を受けており、かつ、最近における売上高総利益又は売上高営業利益率が前年比に対して5%以上減少している事業者です。

「セーフティネット貸付」の金利引き下げ制度により、基準利率が国民生活事業で上限1.9%が1.5%~0.81%に、中小企業事業の場合、上限1.55%が0.65%~0.3%に引き下げになります。返済期間や信用リスク(担保の有無など)等で金利がかわりますので、日本政策金融公庫の窓口にお問い合わせ下さい。

【参考】「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」 / 日本政策金融公庫

「セーフティネット貸付」の金利引き下げ制度を使うことで、基準金利より低金利の制度を利用できるため、資金繰りの上ではメリットが大きいです。ただし、日本政策金融公庫の融資金利は基準金利が課せられるので、低金利になっているかどうか注意が必要です。

【こちらの記事も】税理士に聞く!中小企業の味方「日本政策金融公庫」の融資制度と審査を通すコツを解説

「セーフティネット保証」とは

「セーフティネット保証」とは、経営の安定に支障が生じている中小企業を一般保証とは別枠の保証対象とする支援制度です。「セーフティネット保証」の対象となるのは、本店(個人事業主の方は主たる事業所)所在地の市町村(または特別区)から1~8号の認定をうけた中小企業となります。

【参考】「セーフティネット保証制度 中小企業信用保険法第2条第5講及び第6項」 / 中小企業庁

セーフティネット保証とセーフティネット貸付の違い

「セーフティネット貸付」は常時実施されているのに対して、「セーフティネット保証」は緊急時のみ実施される制度です。また、「セーフティネット貸付」は、日本政策金融公庫によって実施されているのに対して、「セーフティネット保証」は民間の金融機関・信用保証協会により実施されています。

近年では、新型コロナウィルス感染拡大による経済の停滞により、「セーフティネット保証4号」「セーフティネット保証5号」「危機管理保証」の3つが発動されました。「危機管理保証」はすでに終了していますが、今後に備えて、それぞれの対象や保証内容を解説します。

セーフティネット保証4号

「セーフティネット保証4号」は、自然災害などで経営が不安定になった中小企業が増えたとき、国が“地域”を指定して一定条件を満たす中小企業の借入債務を信用保証協会が100%保証するものです。今回の指定地期は、全都道府県です。対象は、下記の通りです。

1)指定地域で1年以上継続して事業を行うこと
2)災害の影響を受けた後、最近1か月の売上高などが前年同月より20%以上減少し、その後2か月を含む3か月間の売上高が前年同期よりも20%以上減少することが見込まれる中小企業であること

保証する内容は下記の通りです。

1)対象資金は、経営安定資金
2)保証割合100%
3)保証限度額は、一般保証(2億8,000万円)とは別枠で2億8,000万円

【参考】「セーフティネット保証4号の概要」 / 中小企業庁

セーフティネット保証5号

「セーフティネット保証5号」は、全国的に業況が悪化している業種で、経営が不安定になっている中小企業がでたとき、国が業種を指定して、一定の条件を満たす中小企業の借入債務を信用保証協会が80%を保証するものです。新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けて、一部例外を除く原則全業種(1,145業種)指定されました。

【参考】「セーフティネット保証5号の概要」 / 中小企業庁

危機関連保証

「危機関連保証」は、東日本大震災やリーマン・ショックといった危機のとき、全国・全業種(一部例外あり)で、一定の条件を満たす中小企業の借入債務を信用保証協会が100%保証するものです。対象は、下記の通りです。

1) 最近1か月間の売上高が前年同月比で15%以上減少
2)その後2か月を含む3か月間の売上高が前年同期よりも20%以上減少すると見込まれる中小企業であること

【参考】「危機関連保証制度」 / 中小企業庁

「セーフティネット4号・5号」「危機関連保証」のいずれも売上高減少については、市町村の認定が必要です。

 

金利引き下げや「セーフティネット保証」の認定に膨大な時間をかけてしまっては、緊急事態を乗り切ることはできません。あらかじめ公的な制度をしっかりと確認しておくようにしましょう。

【こちらの記事も】運転資金の不足は、「セールアンドリースバック」を検討すべし【中小企業・資金繰り110番】

【参考】「セーフティネット貸付の要件緩和」 / 経済産業省
「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」 / 日本政策金融公庫
「セーフティネット保証制度 中小企業信用保険法第2条第5講及び第6項」 / 中小企業庁
「セーフティネット保証4号の概要」 / 中小企業庁
「セーフティネット保証5号の概要」 / 中小企業庁
「危機関連保証制度」 / 中小企業庁

*川竜、nonpii / PIXTA(ピクスタ)