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ウェルビーイング

人材不足時代「従業員の心身の健康」が最重要?ウェルビーイング経営のすすめ

2022.11.16

働く人の心身の健康は、企業にとって経営課題の一つです。なぜならば、働く人の心身の不調は、欠勤や勤怠不良、休職、離職、生産性の低下を引き起こすからです。“健康経営”という言葉は、だいぶ一般的になってきました。仕事と健康の両立は、現代における重要なテーマです。本日お話しする“ウェルビーイング経営”は、さらに広い概念といえます。それは、ウェルビーイングとは、健康以外の領域も含む概念だからです。

「ウェルビーイング(Well-being)」って何?

ウェルビーイング(Well-being)とは、直訳すると、“よい状態”です。ぴったりくる日本語訳がなかなかないのでそのまま使われることが多いのですが、“幸せ”、“ごきげん”、“すこやか”という状態に近いといえるでしょう。ウェルビーイングとは、単に“病気やケガがないこと”ではなく、

・人間関係が良好である
・自分の仕事に働きがいを感じている
・仕事以外の家族や生きがいも大事にできている

という、広い意味での“よい生き方、あり方ができていること”ともいえるでしょう。

また、個人のウェルビーイングのためには、組織や場のウェルビーイング、つまり“わたしたちのウェルビーイング”という視点も大切になってきます。誰かのウェルビーイングを犠牲にしていては、全体のウェルビーイングは実現できないのです。

【こちらの記事も】まさかうちの社員がメンタル不調に!? 限界を超える前に気づくための「ストレスのサイン」

中小企業にも求められる「ウェルビーイング経営」とは

ウェルビーイングの実現は、企業規模によるものではありません。時代の変化を経て、大企業というステータス、高所得といった側面ではなく、働きがい・生きがいなどのウェルビーイングが求められています。待遇面では大企業に及ばないであろう中小企業こそ、積極的に取り組む意義があるといえるでしょう。むしろ、大企業よりも中小企業のほうが、目が届きやすかったり、制度を変えやすかったりという点で、有利な部分もあります。

従業員のウェルビーイングやワーク・エンゲイジメントが高い組織では、

・離職率が低下する
・口コミによる直接応募やリファラル採用が増えるため、採用コストが減る
・休職者が減少する
・生産性が向上する

など、経営にプラスになることがたくさんあります。「人が足りない、なかなか採用できない」というお悩みを抱えた中小企業であれば、ますますウェルビーイング経営が大事になるのです。

ウェルビーイング経営の要素

ここで、ウェルビーイング経営のいくつかの要素についてご説明しましょう。どういった状態を目指すべきかを理解していただければと思います。

ポジティブ心理学の提唱者・セリグマン博士による『PERMA(パーマ)モデル』というものがあります。ウェルビーイングを構成する要素の頭文字を取ったものです。

P(Positive emotion):ポジティブな感情
E(Engagement):積極的な関わり
R(Relationship):他者とのよい関係
M(Meaning):意味
A(Accomplishment):達成感

職業人としては、“前向きで、仕事に対して積極的に関われており、同僚と良い関係であり、人生や仕事に意味を見出しており、達成感もある”状態といえるでしょう。

また、ウェルビーイング経営で注目されている指標として、“ワーク・エンゲイジメント”があります。一言でいうと”仕事や組織へのポジティブな態度”のことです。ワーク・エンゲイジメントは、ユトレヒト大学・シャウフェリ教授らが提唱した概念であり、次のように定義づけられています。

仕事に関連するポジティブで充実した心理状態であり、活力、熱意、没頭によって特徴づけられる。 エンゲイジメントは、特定の対象、出来事、個人、行動などに向けられた一時的な状態ではなく、仕事に向けられた持続的かつ全般的な感情と認知である

Schaufeli, W. B., Salanova, M., González-Romá, V., & Bakker, A. B. (2002). The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach. Journal of Happiness studies, より引用

経営者に必要な意識改革~ウェルビーイング経営のためにまずできること~

それでは、従業員のウェルビーイングを向上させるためには、何ができるのでしょうか? 研修の提供や産業保健サービスを始めとする従業員支援プログラムなどはすでに導入されているかもしれません。ただ、「何か仕組みを取り入れたらそれで終わり」ではなく、必要なのは経営者の意識改革です。

まず、あなたのオフィスに実際に足を運んでみましょう。もし産業医がいれば、産業医の巡視のタイミングで、ぜひ一緒に足を運んでみましょう。

・オフィスの雰囲気はどうか?
・オフィスの環境で改善できることはないか?
・誰が、どこで、どのように、働いているのか?

これだけでも、

・雰囲気があまりよくない部署のヒアリングを行った
・作業しにくそうな作業台や椅子を変えた
・障がいのある方の働きづらさを見つけて改善した

などといった次の行動につながることがあります。

【こちらの記事も】多様な働き方が増えた今こそ考えたい。オフィス環境にまつわる相談まとめ

また、ぜひ活用していただきたいのが、ストレスチェックなどのサーベイ結果です。産業医としてストレスチェックに関わっていると、高ストレス者の対応までは行っていても、集団分析の結果の活用までできている組織はまだまだ少ないと感じます。せっかく、時系列に比較できる形でデータを取っているのですから、ぜひ活用してみましょう。

ストレスチェックの集団分析には、仕事の負担を感じている社員の分布、体調不良になりかけている社員の分布、職場のサポート体制などの傾向が、個人を特定しない形であらわれます。例えば、仕事の負担を感じている人が多いならば一人当たりの業務量の適正化やデジタル化による効率化などにより状況を改善するなどの取り組みを、体調不良者が多いようであれば産業保健職の活用を、職場のサポート体制の充実が必要であればラインケア研修などの管理職へのアプローチが効果的かもしれません。

自社の傾向に沿った取り組みを行い、翌年のデータで結果を検証しましょう。組織内のどこでどのような問題が起きているかについては、人事担当者や産業保健職が情報を持っていることがあります。個人情報保護の必要性もありますので、共有できることは限られる部分はありますが、”組織の改善のために”という理由で、アドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。

さいごに:ウェルビーイング経営で選ばれる組織になろう

ワークライフバランス重視やテレワークの選択など、働く人の働き方は多様化してきています。長時間労働、ハラスメント、出社の強制など、いきいきと働くことを妨げられる職場には、どんどんと人は居つかなくなっています。ウェルビーイングを大事にしない組織は、ますます働く人から選ばれなくなってくるでしょう。従業員がいきいきと働き、彼らの可能性を最大限に引き出すために、どのような職場環境がよいのか、どのようなルール設計が良いのか、ぜひ、あなたの会社の人と一緒に考えてみてください。

【こちらの記事も】産業医がいない企業で実施すべきメンタルヘルス対策とは

【参考】
Seligman, M. E. (2011). Building resilience. Harvard business review, 89(4), 100-106.
島津明人. (2010). 職業性ストレスとワーク· エンゲイジメント. ストレス科学研究, 25, 1-6.
Schaufeli, W. B., Salanova, M., González-Romá, V., & Bakker, A. B. (2002). The measurement of engagement and burnout: A two sample confirmatory factor analytic approach. Journal of Happiness studies, 3(1), 71-92.

*Xeno、YUJI、takeuchi masato、Graphs、8×10 / PIXTA(ピクスタ)

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