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ビジネスウーマン

その症状「5月病」ならぬ「7月病」かも?7月病の特徴と対策とは

2023.07.27

“5月病”は、5月の連休後に心身の不調が現れる症状のことです。とくに新入社員に多い有名な言葉ですが、最近では“7月病”という言葉も聞かれるようになりました。7月は、新年度からがんばってきた気持ちや緊張感が緩みやすい時期です。また、6月に祝日がないため、疲れが溜まりやすいタイミングでもあります。気温が高い日が増えてきて「寝苦しくて寝不足になる」「食欲が落ちる」など夏バテの傾向が出る方も増えてきます。

「どうして、これまでみたいにがんばれないんだろう」「5月病かと思っていたら、全然よくならない」という困りごとを抱える方にもよくお会いします。今回は、“7月病”の原因や症状、会社で行うべき対策について産業医である筆者が解説します。

「5月病」と「7月病」の違いとは

5月病は、“期待とやる気とともに新しい環境で生活を始めるが、適応できずに抑うつ的となるもので、適応障害やうつ病の診断がつく場合もある”とされています。

4月から新年度がはじまり、進学・就職・配転など、環境が変わる方も多いと思います。ゴールデンウィーク明けからやる気が出なかったり、気分が落ち込んだり、頭痛やだるさなど体の不調があったりすると、「5月病かも……?」と解釈する人が多いのでないでしょうか。5月病は病名ではなく、医学的には適応障害やうつ病などの診断基準にあてはまります。

では、最近聞かれるようになってきた、“7月病”とはどのようなものでしょうか?もちろん、正式な医学的診断ではありません。7月病についても、医学的な診断としては、“適応障害”や“うつ病”となるでしょう。7月病の場合も、5月病のように不調の傾向や原因に一定のパターンがあるようです。たとえば、以下のような症状が考えられます。

  • 新年度の生活に適応できないことによる不調が、長引いている
  • 梅雨や気圧の変化
  • 暑い日が増えてきて、夏バテや熱中症の症状がみられることがある
  • 雨や暑さのため、室内に引きこもりがちになる

また、2023年に限っては、新型コロナウイルスが5類になったことで出社や出張の機会が増え、在宅勤務に慣れた人にとっては早起きや通勤に負担を感じているのかもしれません。

【出典】職域における若者のメンタルヘルス (<特集> 現代の若者のメンタルヘルス)/井上幸紀

【こちらもおすすめ】連休明けのメンタル不調はなぜ起こる?4つの要因と対策【5月病】

7月病の特徴とは?事例でみてみる

では、以下の事例を通して、7月病がどのように起こるのかみてみましょう。

Aさん(24歳)は、大学院を修了後にエンジニアとしてIT関係の会社に就職したばかりです。入社直後は在宅勤務が中心で、オンラインで研修を受けたり、プロジェクトメンバーとミーティングをしたりする生活で、月数回の出社以外は在宅勤務が続いていました。ゴールデンウィーク明けから本格的に仕事を任されるようになり、少しずつ忙しくなってきました。

また、5月下旬から会社の出社に関する方針が変わり、“週3日”の出社が必要となりました。通勤に1時間半かかるAさんは、睡眠時間を削って往復3時間かけて出社することになり、慢性的な睡眠不足を感じるようになりました。さらに、月に2、3日はクライアント先への出張が入るようになり、出張前は準備に追われています。

もともと、口下手なAさんは、メールやチャットでのやり取りの方が負担は少なかったのですが、対面でクライアントや上司とやり取りすることが増え、コミュニケーションに負担を感じていました。次第に仕事へのモチベーションが低下し、ミスが増えてしまいました。梅雨に入り天気の悪い日が増えると、持病の片頭痛にも悩まされています。

Aさんのようなケースは、複数の原因が絡み合っていたり、気候など解決するのが難しい要因もあったりと、改善までなかなか一筋縄ではいきません。

会社としてどう対策するべきか

5月病や7月病、他の疾病でも会社での対策に大きな違いはありません。普段から、適応障害やうつ病などのメンタル疾患への対応を行っていれば特別に気をつける必要はないのです。

4つのメンタルヘルスケアを推進しよう

ここで、厚生労働省『職場におけるこころの健康づくり』で推進している4つのメンタルヘルスケアに沿って、解説していきましょう。

①セルフケア
②ラインによるケア
③事業場内産業保健スタッフなどによるケア
④事業場外資源によるケア

とくに、①セルフケアと、②ラインによるケア(事業所内の管理監督者が中心となって行うケアのこと)は、新年度を目安に定期的に研修や情報提供を行い、ビジネスパーソンの基本的なスキルとして定着させましょう。③事業場内産業保健スタッフなどによるケアは、会社の産業医や産業保健師を活用し、不調になっている人がいれば面談などの支援をしてもらいましょう。④事業場外資源によるケアは、外部の相談窓口を利用することで、最近は増えています。受診の相談にのったり、会社の産業保健職と連携したりして支援できる環境を整えましょう。

【参考】職場におけるこころの健康づくり/厚生労働省

新入社員は別の配慮が必要?

上記4つのケアは、すべての従業員に対して行う対策ですが、新入社員については別の配慮が必要になることもあります。

まず新入社員は、半年経つまで有給休暇が付与されない、休職制度が使えないなど、休暇の取得や休職が難しい場合があります。また、「休みたい」と言い出しにくいということもあるでしょう。試用期間中であれば、体調不良を申し出ることに躊躇してしまうかもしれません。体調不良の場合は休息が必要ですが、休みは“欠勤”扱いになってしまうことも多いでしょう。

実際に勤怠不良やパフォーマンス不良が起きているならば、「体調回復のために必要であれば休み、回復してから働くこと」を産業医はすすめています。無理をして働き続けていても、体調は回復せず、成果は上げられず、場合によっては周囲の人からの信頼にもかかわるなど、よいことはありません。

試用期間中の体調不良や欠勤についても、“回復してパフォーマンスを発揮できれば問題ない”という方針を会社から示すと、従業員も安心して回復に努めることができるでしょう。

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上が変わらないと下も変わらない?経営者がとるべきスタンスとは

不調者の原因の部分には、組織の課題があらわれていることも多いものです。先に説明した原因のほかに、組織の閉塞感、キャリアアップの機会や成長できる環境の少なさなどが根底にある場合もあります。また、今の20~30代の方は、転職に対する心理的なハードルが低いため、組織の課題をほったらかしにすると、せっかく採用した大事な人材を失ってしまうことにつながりかねません。休職してしまったり、働いていてもパフォーマンスが低下している従業員が増えることは、会社にとって大きな損失になるでしょう。

“人的資本経営”“健康経営”が注目されています。働く人のエンゲージメントやパフォーマンスに関わる人材戦略は、企業価値を向上させる要素の一つです。“5月病・7月病が起こりにくい組織づくり”“不調になっても相談しやすい風土づくり”について、法律家との連携や、産業保健職の活用をすすめていきましょう。

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* Graphs,プラナ,takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)