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従業員の健康は組織の価値向上につながる!中小企業で行うべき「健康経営」について解説

2023.03.02

近年、❝健康経営❞に注目が集まっています。その中で実際に「健康経営とはどういうものなのか」もしくは「中小企業で取り入れるべきなのか?」と疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。結論、中小企業こそ❝健康経営❞を取り入れるべきだと考えています。本稿では、産業医である筆者が❝健康経営の重要性❞と❝導入するべき会社の特徴❞について解説します。


健康経営とは

健康経営とは、❝従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性を高める投資であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること❞と定義されています。健康経営は、従業員の活力向上や生産性向上などの組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上へ繋がることが期待されているのです。

【健康経営の参考】健康経営の推進について/ 経済産業省

中小企業において健康経営が重要な理由とは

健康経営は大企業の取り組みというイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。むしろ中小企業でこそ重要なのです。理由は大きく3つあります。

1)1人の体調不良が会社の影響になるため

中小企業では、従業員数が少ないため、一人ひとりが担っている仕事の範囲が広い、代わりがいないという状況であることが多く、病気による休職や退職が発生すると、事業継続に影響するリスクが高いと考えられます。休職に至らないまでも、メンタル不調などで、パフォーマンスが落ちてしまう従業員が増えると、経営にも影響します。また、企業が負担する医療費の増加にもつながります。

2)社員が長く健康的に働き続けるため

少子高齢化の時代、従業員に元気で長く働いてもらうことが必要になってきます。60代はもちろん、70代・80代でも活躍されている方が増えています。ただ、年齢とともにどうしても持病を抱えることは多くなりますので、予防できる病気は予防する、病気を抱えていても治療との両立や症状に配慮して働いてもらう、などの取り組みが欠かせません。

3)人材確保のため

同じく少子高齢化により採用が難しくなっているという声をよく聞きますが、健康経営銘柄に選定されるとニュースで取り上げられたり、ロゴマークを使用できたりというブランディング効果があります。健康経営銘柄の選定状況をチェックしている就活生や求職者が増えているようですので、優秀な人材に選んでもらえる会社になるために有効です。2022年において、❝健康経営銘柄❞や❝健康経営優良法人❞には、大規模法人で2,299社、中小規模法人で12,255社が認定されています。

【健康経営優良法人2022認定法人の参考】「健康経営優良法人2022」認定法人/ 経済産業省

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具体的な事例と対応策とは

ここで、架空の事例をもとに対応策を説明していきましょう。

田中さん(50歳)は総務部長です。ここ3年は在宅勤務が増えて運動不足になり、体重が10㎏増えました。自粛生活のストレスで喫煙量も増えました。健康診断では、血圧170/110で要治療、糖尿病の疑いがあり要精密検査という結果でした。ただ、繁忙期のため病院に行く時間がなく「ダイエットしてから再検査をしよう」「繁忙期が過ぎたら禁煙するつもり」と受診が延ばし延ばしになっていました。

ある日、田中さんは心筋梗塞で倒れ、緊急入院することになりました。集中治療室に入り、会社の人間からは連絡がとれません。業者との打ち合わせの内容、見積もりのこと、田中さんにしかわからないことばかりです。田中さんと連絡がとれるようになるまでに、中断してしまう業務がたくさんありました。

いかがでしょうか。あなたの会社で、同じようなことが起きるリスクはありませんか? では、このような事態を防ぐために実行できたかもしれない取り組みをみてみましょう。

健康診断の結果を受けて、田中さんは産業医の面談を受けることになりました。家での血圧を測ること、受診するまでは残業時間を月45時間にするという措置になると、説明がありました。その後は2週に1回産業保健師と面談を行い、食事や運動についてアドバイスをもらい、1か月で2kgの減量に成功しました。血圧は140/85に下がり、糖尿病についても半年に1回の検査でよいということになりました。

このように、健康診断を受けるだけでなく、その結果に基づいて生活習慣の改善や業務の調整を行うことで、病気の発症や悪化を防ぐことができます。具体的な改善行動にうつすためのサポートを会社で行っていくことが重要です。

【産業医がいない会社ではこちらもおすすめ】メンタル不調で休職…産業医がいない企業で実施すべきメンタルヘルス対策とは

健康経営とウェルビーイング経営、何が違う?

健康経営とウェルビーイング経営の違いとしては、ウェルビーイング経営では、病気ではない状態だけでなく、従業員のモチベーションやエンゲージメントも重視することです。ウェルビーイング経営を目指すときに、基盤となる健康を無視しては成り立ちません。法令の遵守や安全配慮義務の取り組みがきちんと行えているうえで、より健康になるアプローチ、より効果的なセルフマネジメントなど、ポジティブな方向性が重視されているのがウェルビーイング経営であるともいえるでしょう。健康経営とウェルビーイング経営を分けて考えるのではなく、すでに実施している取り組みから始めて、施策を広げていきましょう。

【ウェルビーイング経営の参考】 ウェルビーイング経営の考え方と進め方 健康経営の新展開 / 森永 雄太

【ウェルビーイング経営についてもっと詳しく】人材不足時代「従業員の心身の健康」が最重要?ウェルビーイング経営のすすめ

健康経営を取り入れるべき会社の特徴と取り組み

今回は、健康経営の意義と具体的な施策についてご説明しました。とくに、次のような会社で、ぜひ健康経営に取り組んでみてください。

・ 休職者や離職者の数が多い
・ 従業員の高齢化が進んでいる
・ 採用のために自社のブランディングを行いたい
・ 医療費の増加を抑えたい

メンタルヘルス対策としては、セルフケアについての研修や、上司が部下の不調に気づくためのラインケア研修、コミュニケーション機会を増やすための社内イベントなどの取り組みが行われています。そのほか、環境面では、オフィスで果物や健康に配慮したスナックが手に入る、運動スペースで休憩中に軽く体を動かせる・休めるスペースを導入するなどの工夫が効果的でしょう。

まずは、定期健診やストレスチェックなど、法令で定められている施策について、ただ行うだけでなく結果を活用していくことをお勧めします。たとえば、定期健診の後の受診勧奨や、ストレスチェックの組織分析結果を活用した職場環境改善の取り組みを行う中で、治療と就労の両立や長時間労働対策など、自社の課題の優先順位が見えてくるでしょう。

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*Xeno, Fast&Slow, takeuchi masato, kikuo / PIXTA(ピクスタ)

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