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【2024年10月施行】従業員数が51人以上の企業に適用拡大される社会保険の概要と求められる対応を解説

2024.03.13

現在、2022年10月に実施された年金制度にまつわる法改正を受け、社会保険の適用拡大が徐々に各企業へ適用されています。改正前当初は従業員数が500人を超える大規模な企業のみに適用されていました。その後、社会保険の適用範囲は徐々に拡大され、2024年10月以降は51名以上の企業も対象に含まれることになります。

今回は、さらに適用が拡大される社会保険の概要や、対象範囲にあてはまる従業員の要件と対応内容について分かりやすく解説します。
【参考】社会保険適用拡大ガイドブック/厚生労働省

社会保険の適用拡大とは

社会保険の適用拡大とは、社会保険に加入していなかった会社やその従業員が新たに加入の対象となることをいいます。

少子高齢化の影響により、働き盛り世代の労働人口は減少の一途をたどっており、今や社会問題化しています。その一方で、年金受給開始年齢や定年年齢の引き上げなどの影響により、働くことを希望する高齢者が増加しています。

また、国が提唱している働き方改革やワーク・ライフ・バランスの推進が活発に議論されていることもあり、育児や介護などプライベートの生活と両立させながら働くことを望む従業員も増えています。

このような状況をふまえ、さらに多くの従業員に社会保険制度へ加入してもらい、社会保障の充実を図るための施策の一つが、今回のテーマとなる「社会保険の適用拡大」です。 

「社会保険の加入=大企業」ではない

社会保険の適用規模を時系列で並べると、まず2016年に実施された法改正を受け、従業員数が501人以上の企業に対して社会保険の適用拡大の制度が導入されました。その後、2022年10月の法改正を受け、従業員数が101人以上の企業も適用対象に含まれる運びとなりました。

そのため、古くからの制度を知る経営者のなかには、「社会保険の加入=大企業」という印象を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、中小企業には関係のない内容なのかというと、そうではありません。

実際に対象となる企業規模や、社会保険加入が求められる従業員の要件について説明していきます。

対象となる企業や社会保険加入が求められる従業員の要件

2024年10月以降に適用が拡大される社会保険では、対象となる企業は51名以上の従業員を抱える企業です。日本の企業規模の9割以上が中小企業であることを考えると、今回の改正によって相当数の企業が対象となることが予想されます。

また、今回社会保険の適用が拡大される対象は、「パート・アルバイト」という点も大きなポイントになります。具体的な対象内容は、以下のとおりです。以下項目のすべてを満たした従業員については、社会保険が適用されるということです。

①1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である

雇用契約書で交わした労働条件が「20時間以上」である必要があります。一時的に行われた残業時間を加算して20時間を超えた場合でも、もともとの契約が20時間に満たない場合は対象外となる点に注意が必要です。ただし、契約上では20時間未満であっても、2ヶ月続けて労働時間が週に20時間を超え、今後も同様の労働時間になる見込みがある場合は適用の対象になります。

②1ヶ月あたりの賃金が88,000円以上である

通勤手当や残業代、賞与を別にした給料が88,000円以上の者が該当します。

③2ヶ月を超える期間にわたって雇用される見込みである

2ヶ月以内の雇用契約であっても、契約更新の可能性がある旨が就業規則や個別の契約書に記載されているケースも該当します。また、同じような条件で同じような仕事をしている同僚が2か月を超えて雇用契約を交わしているケースや、契約される見込みがある場合は、雇用開始時より適用対象になります。

④学生ではない

学生であっても、近々卒業の見込みがあり、卒業後に働き続けることが決まっている場合は適用の対象になります。 

【こちらもおすすめ】入社前は何を明示すべき?パート・アルバイトの雇用手続きの手順をわかりやすく解説

社会保険適用拡大の準備を始める際のポイント

社会保険の適用拡大の範囲が広がったことで、これまで対象外であった中小企業も社会保険の加入に向けた準備を開始する必要があります。

自社が「特定適用事業所」に該当するか確認する

準備の際に気をつけるべきポイントとしては、まずは「特定適用事業所」に該当するかどうかを確認しなければなりません。特定適用事業所に該当すると、今まで対象外であったパート・アルバイトといった短時間労働者の社会保険加入が義務化されるからです。

特定適用事業所は、同一法人内での社会保険加入者総数が常時100人を超える企業のことです。同一法人内ということは、その法人内の支店や営業所、工場などすべての事業所の総数が100人を超える会社は、特定適用事業所に該当するということです。

常時100人を超えるか否かの基準は「1年のうち6ヶ月間以上にわたり、被保険者数(社会保険の加入者数)が100人を超える見込みがあるか」で判断します。つまり、1ヶ月や2ヶ月のみ被保険者数が100人を超えた場合は、特定適用事業所ではないということになります。

【参考】短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大/日本年金機構 ※2024年2月20日現在

パート・アルバイトが社会保険の適用要件に該当するか確認する

自社が特定適用事業所に該当することが分かった場合、次は先ほどの項目で述べた社会保険に該当する①~④種類の要件に該当するパート・アルバイトがどの程度いるのかを把握する必要があります。

ひとことでパート・アルバイトといっても就労形態はさまざまなことが予想されますので、一人ずつ丁寧に雇用契約書や勤怠表、賃金台帳などを見ながら洗い出していかなければなりません。

社内で説明の機会を設ける

社会保険の適用が必要となるパート・アルバイトの人数が把握できたところで、次は社内通知や説明会、個別面談などを実施して、社会保険への加入が必要であることや社会保険の概要、加入後に変化する点について説明を行う必要があります。

パート・アルバイトの中には、配偶者の扶養範囲内で働くことを望む従業員がいるケースがあります。そうした従業員には、加入に対する説明や意向を個別に聞くことで、将来のもめ事を避けることができます。加入対象になったからといって、従業員への説明をせずに資格取得届を提出することだけはやめるようにしましょう。

【こちらもおすすめ】どうしたら社員の本音を掴める?経営者が知るべき「社員とのコミュニケーション術」3つ

まとめ

社会保険の適用拡大に関する最新の改正情報についてお分かりいただけましたでしょうか。また、気をつけておかなければならないこととして、昨今は複数の会社で働くパート・アルバイトが少なくないということです。

副業を行う従業員が自社の社会保険加入対象となった場合は、必ずその従業員が勤める別会社の就労状況や加入情報を確認しなければなりません。仮に、複数の会社で社会保険の適用になった場合は、それぞれの会社で社会保険に加入する必要がある点についても覚えておきましょう。

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