令和6年4月に変更!労災保険率が引き上げられる業種とは?労災保険料の算出方法も解説
令和6年4月(令和6年度)より、労災保険率が変更されることをご存じでしょうか。本記事では労災保険率が変更される対象業種から、労災保険料の計算方法と納付について解説します。正しい知識を身につけ、労働保険料の年度更新に備えましょう。
中小企業経営の課題を解決する情報をお届け!メルマガ登録はこちらからそもそも労災保険制度とは
労災保険制度とは「労働者の業務上の事由、または通勤による傷病等に対する保険」です。
保険料は、基本的に事業主が全額負担。仕事中に転んでケガをしてしまったときや、通勤中に事故にあい入院してしまったときの治療費・休業中の所得保障にあてられます。
社員が何人いると発生する?
労災保険は原則として1人でも労働者を使用する事業であれば、業種の規模を問わず適用されます。
労災保険における労働者とは「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」のことです。アルバイトやパートタイマーなどの雇用形態は関係なく、1人でも雇った場合は労災保険料の支払い義務が発生します。ただし例外として、労働者を雇わない会社で、事業主自身が特別に労災保険に加入するケースもあります。
労災保険料率はどのように決まる?
労災保険率は、災害のリスクに応じて、事業の種類ごとに定められています。たとえばチェーンソーで木を伐採する林業の仕事と、オフィスでデスクワークする仕事では、災害の起こりやすさが全然違いますよね。
そういったリスクを鑑みて、労災保険率は「事故が起こりやすい危険な業種」ほど高く設定されています。先ほどの例だと、林業の労災保険料率は52/1,000ですが、デスクワークの人は3/1,000です。
事業の種類が同じでも個々の事業場の災害率には差が生じるため、労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内で労災保険率を増減させる制度(メリット制)も設けられています。
令和6年度で保険料率がアップした業種
労災保険料率は原則として3年ごとに、過去3年間における災害発生状況などを考慮したうえで改定されます。
令和6年度は、業種平均で0.1/1,000の引き下げ。全54業種中、17業種で引き下げ、3業種で引き上げ、その他34業種は据え置きとなりました。引き上げとなるのは、「パルプ又は紙製造業」「電気機械器具製造業」「ビルメンテナンス業」の3業種で、引き上げ幅はいずれも0.5/1,000です。
その他、引き下げられた業種を含め全業種の保険料率は、下記からご確認ください。
【参考】労災保険率及び第一種特別加入保険料率/厚生労働省
労災保険料の計算方法
労災保険料は、賃金の総額に労災保険率を乗じて計算します。
賃金の総額とは、労働者に支払った賃金を合計した金額です。給料・賞与・各種手当・残業代・交通費など、労働の対価として支払われるものはすべて賃金に該当します。退職金・結婚祝い金・労働基準法に基づく休業補償などは、賃金の総額に含まれません。
【参考】労働保険対象賃金の範囲/厚生労働省
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労災保険料の納付方法
労災保険料は、社会保険料のように毎月給与計算で労働者の給与から天引きし、どこかに納付するものではありません。
多くの事業では、労災保険料と雇用保険料をあわせた労働保険料を年に一度納めます。これが「労働保険の年度更新」です。例年、6月1日~7月10日の期間に申告・納付手続きをします。
労災保険の一般保険料と雇用保険にかかる賃金総額が同じ金額である場合には、労災保険率と雇用保険率を合わせた料率から、労働保険料として計算します。
計算式 賃金総額(1,000円未満切り捨て)×(労災保険率+雇用保険率) |
令和6年度から労災保険料率が変更となった業種においては、概算保険料を算出する際に新たな料率を用います。メリット制を適用した労災保険率(メリット料率)は、厚生労働省から送られてくる「年度更新申告書」に同封される「労災保険率決定通知書」で確認できます。
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まとめ
労災保険についての正しい知識を持つことは、社員とのトラブルを未然に防ぐために大切です。労働保険料の年度更新のタイミングでは、令和6年度から保険料が変わることを念頭に置き、賃金総額を適正に集計しましょう。
*Rawpixel.com, PeopleImages.com – Yuri A / shutterstock
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