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TOP > 記事一覧 > 総務・法務 > 「育児・介護休業法」改正のポイントは?会社が対応すべきことをまとめて解説
仲良し家族

「育児・介護休業法」改正のポイントは?会社が対応すべきことをまとめて解説

「育児・介護休業法」は2021年6月に国会にて改正案が可決され、2022年4月より段階的に施行されることとなりました。

これは、働き方改革も推進されつつあるニューノーマルな社会において、日本の職場に古くからある慣習や、そこに属する従業員の意識を変化させるきっかけにもなりうる重要な改正です。自社に足りない規定があれば確認し、改めて見直していきましょう!

今回は、「育児・介護休業法」改正のポイントと対応すべきことをまとめて解説します。

「育児・介護休業法」とは?

1991年に「育児休業法」が成立し、その後1995年に「育児・介護休業法」になりました。つまり「育児・介護休業法」は、施行されてからまだ30年ほどしか経過していない新しい法律ということになります。

今回の「育児・介護休業法」の改定は、“大改正”レベルの大きな変更です。現状でも、「育児休業」「介護休業」「子の看護休暇」「介護休暇」「残業や深夜業の制限」「ハラスメントへの対応」「労働時間の短縮等の措置」など多くの義務規定があるにも関わらず、近年の社会情勢に合わせるように、2022年4月から3回に分けて制度が拡充されていくことになりました。労働人口が減少し人材の囲い込みが困難な現代において、優秀な社員の確保・定着のために、育児・介護休業制度を整備しておくことは必須です。

「育児・介護休業法」改正の背景については以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【もっと詳しく】
【2022年4月から】育児・介護休業法が大改正!中小企業が押さえるべき制度概要【社労士が解説】

次からは、「育児・介護休業法」に含まれる代表的な休業・休暇の定義と義務規定について解説していきます。

「育児休業」とは?

育児休業とは、原則として労働者が1歳に満たない子を養育するために取得する休業をいいます。

■原則1年、待機児童の場合は最長2年まで

・育児休業期間は原則、子が1歳の誕生日を迎える前日まで
・期間雇用の人も対象(ただし、働いている期間が1年未満で子が1歳6か月(又は2歳)になるまでに雇用期間が満了する人は申し出不可)
・夫婦で育休をとる場合には「パパママ育休プラス」という制度が適用され、たとえば母親→父親の順で育休をとるなら、父親従業員は1年2か月まで休業できる

■原則1人の子について1回

・育休は原則として1人の子につき1回のみで、複数回に分けて取得することはできない
・ただし父親については、特例として産後8週間以内の育児休業(パパ休暇)を取得でき、この特例と、それ以外に育児休業を取得できる(2回あわせて最長1年2か月まで)

■労使協定があれば拒否できる場合も

・雇用期間が1年未満の人
・1年(又は6か月)以内に退職する人
・週の所定労働日数が2日以下の人

労使協定があれば、いくつかの条件により育児休業を拒否できる場合もあります。しかし原則、育児休業は申し出があれば取得させる必要があります。

「介護休業」とは?

介護休業とは、労働者が要介護状態にある対象家族を介護するための休業をいいます。

■通算93日まで、3回を上限

・介護休業は通算93日まで、3回まで取得できる(31日×3)
・期間雇用の人も対象(ただし、働いている期間が1年未満で93日を経過する日から6か月以内に雇用期間が満了する人は申し出不可)

■労使協定があれば拒否できる場合も

・雇用期間が1年未満の人
・93日以内に退職する人
・週の所定労働日数が2日以下の人

労使協定があり、条件に合致すれば介護休業を拒否できる場合もあります。しかし原則、介護休業は申し出があれば取得させる必要があります。労使協定を結んでいないのに拒否するのは違法となるので、必ず労使協定は結んでおきましょう。

育児・介護休業以外の休暇制度

(1)子の看護休暇

■最大5日、時間単位で取得可能

・小学校入学前の子の育児をしている従業員が、体調不良の子を病院に連れていく、自宅で看護することになった場合、最大5日(子が2人以上の場合は10日)まで休暇を取得できる
・休暇は1日単位ではなく、時間単位で取得することも可能
・義務規定のため「うちの会社には存在しない」などといって拒否することは違法

■労使協定があれば拒否できる場合も

・雇用期間が6か月未満の人
・週の所定労働日数が2日以下の人
・時間単位の取得が難しい人(時間単位で取る場合)

子の看護休暇についても労使協定を結んでいて条件に沿えば拒否することが可能ですが、原則として申し出があれば取得させる必要があります。

(2)介護休暇

■最大5日、時間単位で取得可能

・一定の介護、たとえば介護施設でのリハビリやデイケアに付き添うといった介護をしている従業員は、最大5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで休暇を取得できる
・休暇は1日単位ではなく、時間単位で取得することも可能

長く介護する場合には介護休業を、日々の介護には介護休暇をといった使い分けが可能です。こちらも労使協定があれば、拒否することが可能です。

「育児・介護休業法」については以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【もっと詳しく】
育児・介護休業法の義務規定は?就業規則の記載方法のポイントも【社労士が解説】

次からは、「育児・介護休業法」改正内容と企業が取り組むべきことを3段階に分けて解説します。

2022年4月の改正内容と企業が取り組むべきこと

まず、すでに施行されている2022年4月の改正内容を整理します。まだ対応が済んでいない企業は急ぎ整備を進めましょう。

1:雇用環境整備の義務化

改正内容の1つが、「育児休業と出生時育児休業(産後パパ育休)の申し出が円滑に行なわれるため、事業主は以下のいずれかの措置を講じなければならない」です。“以下”に該当するのは、下記の①~④です。

① 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する研修の実施
② 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
※出生時育児休業(産後パパ育休)は、2022年10月1日から対象。

企業が取り組むべきこと

いくつかピックアップしてご紹介します。①研修の実施については、特に管理職に対する研修がポイントとなるでしょう(研修は全社的に行なう必要がある)。厚生労働省が提供している『イクメンプロジェクト』で公開されている研修用資料を活用するのがおすすめです。

③取得事例の収集・提供については、これまで自社で育児休業を取得した事例を取材・収集し、メールやイントラネットなどを使って社内に広く紹介しましょう。④方針の周知は、社長からメッセージを発信するとよいでしょう。いずれも厚生労働省のWebサイトから様式をダウンロードして利用することが可能です。

2:個別の周知・意向確認の措置の義務化

2つ目の改正内容は「本人又は配偶者の妊娠・出産等を申し出た労働者に対して、事業主は育児休業制度等に関する以下の事項の周知と休業取得の意向確認の措置を、個別に行なわなければならない」という義務です。

企業が取り組むべきこと

確認すべき事項は、以下のとおりです。

【誰に?】(本人又は配偶者の)妊娠・出産等の申し出をした労働者
【何を?】①~④のすべての事項を周知
①育児休業・産後パパ育休に関する制度
②育児休業・産後パパ育休の申し出先
③育児休業給付に関すること
④労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
※出生時育児休業(産後パパ育休)は、2022年10月1日から対象。
【どうやって?】①面談(オンライン可) ②書面交付 ③FAX ④電子メール等 のいずれか
※③④は労働者が希望した場合に限る。

これらを妊娠・出産等を申し出た従業員全員に行なう必要があります。この制度の周知や意向確認も、ゼロから様式を作成して実施するのは非常に労力がかかるものです。厚生労働省のWebサイトから様式をダウンロードして利用することで手間を軽減できます。

なお、周知については従業員に書面で提供しても、業務に忙殺されて目を通してもらえないことが考えられます。そういう場合、厚生労働省が作成した動画があるので、それらを従業員に提示する方法もおすすめです。

3:有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

3つ目の改正内容は、「期間を定めて雇用される労働者(有期雇用労働者)の育児休業と介護休業の取得要件が緩和された」というものです。従来あった取得要件のうち「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃されました。

企業が取り組むべきこと

この改正に対しては、育児・介護休業規定の見直しが必要になります。こちらも厚生労働省のWebサイトに規定例が公開されていますので、ダウンロードのうえ自社にあった規定に調整することをおすすめします。

2022年4月施行の「育児・介護休業法」改正内容については以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【もっと詳しく】
【2022年4月】育児・介護休業法改正で企業が対応すべきことは?【Q&A付き】

2022年10月の改正内容と企業が取り組むべきこと

「育児・介護休業法」の第2弾の施行は2022年10月です。

1:産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新たに創設されました。パートナーの女性が産後休業をとっているときに男性が育休を取れるという規定です。“パパ”という表現が入っていますが、夫婦で利用できます。

・休業の申し出期限については、原則休業の2週間前まで
・分割して2回取得可能(まとめて申し出)
・労使協定を締結している場合、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整したうえで休業中に就業可能(日数等上限あり)

現行の育児休業制度では、原則として休業中に就業はできませんが、「産後パパ育休」においては、“労使協定を締結している場合に限り”就業することも可能となります。この柔軟な考え方が「産後パパ育休」の大きな特徴です。

2:育児休業の分割取得

従来の制度では、育児休業は1回までしか取得できませんでした。その育休を分割して、2回まで取得できる規定です。子どもが1歳以降で保育所に入所できないなどの事情で育休を交代する必要がある……といったケースの場合、従来は育休開始日が1歳~1歳6か月、1歳6か月~2歳といった期間の“初日”に限定されていました。この開始日を柔軟化するとともに、期間内に夫婦の交代を可能にし、途中から育休を取得できるようにする規定です。

2022年10月施行の「育児・介護休業法」の改正については以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【もっと詳しく】
3段階の改正!2022年10月の育児・介護休業法改正における中小企業の対応ポイント【社労士が解説】

企業が取り組むべきこと

①育児休業を取得しやすい職場環境の整備

まずは、育児休業が特別なものではなく、気軽に取得できるものであることを社内に周知させる必要があります。改正内容や具体的な取得例などをまとめたリーフレットの配布や社内研修を実施する方法を用いて、社員に改正内容の周知を行いましょう。同時に、社員が育児休業に関する相談を気軽に行えるよう、人事労務部門内に相談窓口を設ける方法も有効です。

②取得が見込まれる労働者への個別周知・意向確認

2022年4月より、労働者本人や配偶者が妊娠・出産を申し出た場合、会社側は育児休業制度の概要や申し出先、育児休業給付の内容、育児休業期間の社会保険料の取扱いを周知させ、取得以降の確認をすることが義務づけられました。周知の方法は面談や書面、FAX、メールとなり、面談はオンラインでも認められています。周知の際には今回の法改正で変更になった「育児休業の分割取得」についても知らせる必要があります。

③就業規則の内容変更

育児休業が分割できる点と、子どもが1歳以降の期間について育児休業を延長する場合の開始日の縛りがなくなった点の2点を、新たに就業規則の育児休業の要項に加える必要があります。産後パパ育休制度などの法改正による変更点とあわせて就業規則の変更を行い、社員への周知と必要な場合は労働基準監督署へ届け出を行いましょう。

【もっと詳しく】
【2022年10月施行】改正育児介護休業法で育休の分割取得が可能に、企業の対応は?

2023年4月の改正内容と企業が取り組むべきこと

「育児・介護休業法」の第3弾の施行は2023年4月です。

育児休業取得状況の公表の義務化

従業員が1,000人を超える企業を対象に、育児休業の取得状況について、年1回、インターネット等での公表が義務付けられます。具体的には、男性の「育児休業等の取得率」又は「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

実際のところ、これは大企業に向けての規定です。ただ、今後この規定の適用範囲が拡大され中小企業へも及ぶ可能性がないとも言い切れません。企業における対象者数を算定するなど、適用範囲が広がった際にも対応できる準備をしておくとよいでしょう。

2023年4月施行の「育児・介護休業法」の改正については以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【もっと詳しく】
3段階の改正!2023年4月の育児・介護休業法改正のポイント【社労士が解説】

忘れずに!就業規則の記載ポイント

「育児・介護休業法」改正を受けて、「育児休業」「介護休業」「子の看護休暇」「介護休暇」「残業や深夜業の制限」「ハラスメントへの対応」「労働時間の短縮等の措置」といった義務規定を変更する場合は、就業規則へ具体的に記載する必要があります。従業員も具体的な記載を確認しなければわかりません。

その際のポイントは、「この規則に定めた事項のほか、育児・介護に関する事項については、育児介護休業法その他の法令の定めによる」といった一文を入れておくこと。これによって、いくつかの項目が漏れていたり、具体的な規定が書かれていなかったりする就業規則の場合でも、法的な規定すべてをカバーすることができます。

また、就業規則に新たな規定を追加したり、規定を変更したりした場合には従業員へ周知することを心掛けましょう。

「育児・介護休業」の義務規定については以下の記事でさらに詳しく解説しています。

【もっと詳しく】
育児・介護休業法の義務規定は?就業規則への記載と従業員への周知のポイントも【社労士が解説】

まとめ

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「育児・介護休業法」の改正ポイントをご紹介しました。自社の現状を把握し、今後の施行に備えましょう!

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※この記事は『経営ノウハウの泉』の過去掲載記事をもとに作成しています。