
企業における防災マニュアルの作成方法。記載すべき内容や作成時のポイントまで解説
2024年1月1日16時10分頃、石川県能登半島で最大震度7の揺れを観測する大地震が発生しました。日本が自然災害の非常に多い国であることは、議論の余地はないでしょう。 このような災害が起きたときに備え、企業は社員の安全を守りなおかつ事業を続けていくために、しっかりとした防災マニュアルをつくっておくことが大切です。しかし、企業の規模・業種・所在地などによって、マニュアルの記載事項は変わります。本記事では、自社に合った防災マニュアルの作成方法について解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
企業の防災マニュアルの必要性と役割
企業の防災マニュアルとは、もしものときに社員がどう行動すべきかを明確にしたものを指し、「避難経路や避難場所はどこか」「安否確認はどうやって行うか」などを事前に決めてまとめておきます。防災マニュアルを作成することで、いざというときに素早く対処できるようになるでしょう。 確かにマニュアルをつくっただけで防災に強くなるかというと、そんなことはありません。日頃から防災意識を高めて、定期的な訓練を行うことも合わせて初めて意味があります。しかし、マニュアルもないうちから訓練しても、評価や検証のしようがないでしょう。定期的な訓練の前段階として、まずはマニュアルの作成を行うことが必要なのです。
企業の防災マニュアルのつくり方
企業の防災マニュアルにおいて、記載すべき内容は6つあります。
- 災害時の組織体制・役割分担
- 社員から情報収集手段と緊急連絡網
- 初期対応・避難経路、避難場所
- 復旧対策
- 災害予防対策
- 防災の訓練・教育
ここからは各項目について詳しく見ていきましょう。
災害時の組織体制、役割分担
まず、災害が起きたときの指揮命令系統を事前に決めておきましょう。ここでのポイントは、事業所の全方針を決定できる職位の人、またはその権限を代行できる人を災害対策本部のメンバーに含めることです。また、役割を明確にするために、普段から情報収集班や救護班、消火班などのチームをつくっておく必要があります。それぞれのチームが何をすべきかを明確にしておけば、いざというときに慌てずに行動できるでしょう。
社員から情報収集する際の手段と緊急連絡網
災害時には通信回線に障害が発生する可能性が高いため、平時に使っている連絡手段は使えない前提で考えておきましょう。事前に緊急連絡網を作成し、災害時は既存のメール・電話・SNSや、災害時専用の安否確認システムなど複数の連絡手段を使って、情報を集めなければなりません。集める情報は、社員の安否・建物やライフラインの被害状況などが考えられます。また、出張中や休暇中の社員にも、連絡を取れるようにしましょう。
【お役立ち資料】被災した企業が事業を復旧するためのトヨクモ『安否確認サービス2』導入ガイド
初期対応・避難経路、避難場所
災害時には頭が真っ白になり、その場で対応すべきことを考えられなくなることがあります。そのため、必要となる初期対応項目や避難経路などを、防災マニュアルにリスト化しておくとよいでしょう。具体的に決めるべきことの例としては、以下が挙げられます。
- 社員による応急救護の実施
- 医療機関への搬送方法
- 火の始末や初期消火
- 避難誘導と避難経路
- 避難時に持ち出す物品
- 避難場所
上記に限らず、必要なことをできるだけ事前に決めておくことが大切です。
復旧対策
災害発生後の復旧対策は、企業の継続的な運営を確保するために非常に重要です。復旧対策をしっかりと計画しておくことで被害を最小限に抑え、迅速に通常業務へ戻れるでしょう。復旧対策の例は、以下の通りです。
- 優先業務の特定と順序付け
- 復旧のためのリソース確保の方法
- データのバックアップと復元手順
- 社員のサポート体制
災害予防対策と防災の訓練・教育
災害予防対策と防災の訓練・教育については、災害発生時の対応項目ではありませんが、防災マニュアルに書くべき重要項目です。 災害予防対策には、建物の耐震・耐火対策、設備の安全確保、リスク評価と対策なども含まれます。防災の訓練・教育は、社員が災害時でも適切に対応できるようになるため必要です。定期的な避難訓練・情報伝達訓練を実施して、社員全員が防災意識を持ち、実践的なスキルを身につける必要があるでしょう。
防災マニュアルの作成のポイント
防災マニュアルをつくるときにはいくつかのポイントがあります。
5W2Hで簡潔に伝える
マニュアル作成において曖昧さはできるだけ排除し、具体的にわかりやすく書く必要があります。そのためには5W2H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって、どれくらい)を意識して、明確に書きましょう。誰が読んでもわかるよう、写真やイラストを活用するのがおすすめです。迷わずにすぐ動けるようにすることが肝心です。
定期的な内容の見直し
マニュアルはつくって終わりではありません。災害の種類や被害の想定は、時代とともに変わります。定期的にマニュアルの中身をチェックし、必要に応じて修正しましょう。たとえば1年に1回など、時期を決めることは有効です。また、防災訓練のときには、マニュアルの内容が実際の状況に合っているかどうかを確かめ、もし問題があったらその時点で改善しましょう。
防災マニュアルと同時に策定したいBCP
BCP(事業継続計画)とは、企業が大きな災害に見舞われたときに、事業を頓挫させずに続けるための計画をいいます。BCPをつくるときには、防災マニュアルと一緒に考えることがポイントです。 防災マニュアルでは、災害が起きた直後の直接的な被害の復旧方法を決めておきます。一方でBCPは、ビジネス上の機会損失や経済的損失などの間接的な損害も含めて、その後の事業の素早い立て直し方を定めます。この二つをうまく連携させることで、災害への対応がスムーズになるでしょう。 【こちらもおすすめ】企業が大地震に遭ったら?早期復旧のための「BCP」とは
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