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他者の特許出願書類をコピーしてもよい?

Q 他者の特許出願書類をコピーして、自分の出願書類を作成してもよいでしょうか?

A 特許出願明細書は、著作権法上の著作物に該当するので、勝手にコピーして使用すると、著作権侵害になる場合があると考えられます。

 なぜ著作権侵害になる可能性があるのかについて、内容が、若干、難しくなりますが、以下に、著作権法の条文等を確認しながら説明いたします。なお、しばらく読み飛ばしていただいても結構ですが、最後の引用については是非、ご確認ください。
 特許出願書類は、技術的思想である発明を文章や図で表したものですので、『思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの』(著作権法における著作物の定義;著作権法第2条)に該当します。そして、出願書類のうち、特許請求の範囲、明細書、要約書に書かれた文章は言語の著作物に該当し、また、図面に描かれた図は図形の著作物に該当すると考えられます。もちろん、出願書類のうち特許法施行規則等で定められている定型的な見出しや、単なる事実、誰が表現しても同じ表現になるような文章や図は著作権法上の著作物に該当しないと考えられます。
 一方、『権利の目的とならない著作物』として、著作権法第13条第2号に『国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの』と規定されています。そして、出願公開公報はこの規定に該当するから、特許庁が発行する出願公開公報が権利の目的とならない著作物であって、自由にコピーしても何ら問題ないと、拡大解釈される方もおられるようです。
 しかし、出願公開は、特許庁長官が特許法に基づいてなされるものであって、出願公開の内容が特許庁長官によって発するものに該当するとはいえないと考えられます。この点について、平成18年の著作権法改正で、『行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができる』ものとして、『行政庁の行う特許、意匠若しくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価又は国際出願に関する国際調査若しくは国際予備審査に関する手続』(著作権法第42条)が規定されました。この規定の中に、出願公開公報を除く等と記載されていないことからも、特許庁長官や特許庁の職員等であっても、出願公開公報を勝手に複製することに問題があったと考えられるため、このような改正につながったと思われます。
 また、特許庁のIPDL特許電子図書館の『特許電子図書館利用上のご案内』に『4.著作権について  特許電子図書館で提供する公報に掲載されている特許請求の範囲、明細書、要約書の文章等や図面に掲載されている文章や図面等は、通常、その創作者である出願人等が著作権を有していますので、転載する場合には許諾が必要になることがあります。』と明記されています。
 もっとも、出願公開される前は著作物であるけれど、出願公開されると著作物でなくなったり、出願公開公報と同じ内容を学術論文とした場合、学術論文は著作物となるが、出願公開公報は著作物にならないというのはおかしな話だと思います。
 では、誰が著作権者となるのでしょうか。
 発明が完成してから特許出願書類になるまで、発明者、出願人、特許出願書類の作成者(発明者、弁理士、企業の知財部員等)等が関連しますが、出願書類の作成者が著作権者になることに何の説明もいらないと思います。したがいまして、発明者と著作権者とが一致しないことや、出願人と著作権者とが一致しないことは少なくないと考えられます。

 以上の通り、特許出願書類や出願公開公報の一部又は全部をコピーしようとしたら、その出願書類の作成者の許諾を得なければならない可能性があると考えられます。
 現実的に、他者の特許出願書類の一部を誤記や脱字等もそのままコピーしている方等が見受けられます。しかし、その特許出願もいずれ公開され、コピーされた者が見ると、コピーされていることが判る場合が多く、気持ちの良いものではないです。他者の権利を尊重し、むやみに他者の著作物を複製(コピー)しないようにしていきたいものです。

 なお、引用(著作権法第32条)という裏技を使えば、出願書類の作成者の許諾なしに、特許書類や特許公開公報の一部又は全部をコピーできる場合があります。
 この引用の条件として、文化庁は、昭和55年の最高裁判決に基づいて、以下のように示しています。
 『他人の著作物を自分の著作物の中に取り込む場合,すなわち引用を行う場合,一般的には,以下の事項に注意しなければなりません。
(1)他人の著作物を引用する必然性があること。
(2)かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
(3)自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
(4)出所の明示がなされていること。(第48条)
(参照:最判昭和55年3月28日 「パロディー事件」)』

   以上の内容は、shiga発明(2012.6、No.332、一般社団法人滋賀件発明協会、平成24年6月4日発行)に掲載されたものです。

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さくらい特許事務所 弁理士 櫻井 健一
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