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土地・建物の一括競売

■Vol.104  2007-2-7 毎週水曜日配信           
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■■■ 「 土地・建物の一括競売
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        「土地・建物の一括競売
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 弁護士の緒方義行です。

 今回は、前回に引き続き、担保物権法(民法)の改正箇所から、土地・建
物の一括競売を取り上げます。


 土地の上に建物がある場合、あるいは建物をこれから建てようとしている
場合、銀行などから融資を受けるときには、土地と建物の両方に抵当権を設
定することが通常です。
 しかし、融資を受けて土地に抵当権を付けた後に建物を建てる等、土地に
ついての抵当権の設定後、その土地の上に建物が建築される場合もあり、そ
の場合にも、土地の所有者が建物を建てるといった具合に土地と建物の所有
者が同一の場合もあれば、土地を所有していない人が建物を建てる場合

― 例えば、父親が融資を受けて父親所有の土地の上に抵当権を設定してい
たが、その後に息子が父親所有のその土地の上に建物を建てる等 ― 
土地と建物が別々の所有者の場合もあります。

 このような場合、抵当権はどのようにして実行(競売)されるのでしょうか。
 実は、抵当権は土地だけに設定されていても、土地と建物は一括して競売
れる場合があります。

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1 一括競売を認める必要性 
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 土地だけに抵当権を設定した場合、その抵当権の効力は,土地上の建物
には及びません。
 日本では、土地と建物は別個の不動産とされていて、建物に抵当権の効
力を及ぼすためには建物にも抵当権を設定しなければならないわけです
民法370条がこの点を定めています)。

 しかし,土地に抵当権が設定された後に建物が建てられた場合に、抵当
権者は土地だけしか競売できないということになると、抵当権を実行して
競売するときに、その建物が邪魔になってしまいます。

 土地に抵当権が設定された後に建物が建てられた場合、土地について抵
当権が実行されると建物の所有者は敷地の利用権を失います(抵当権者の
同意を得て賃借権が登記されたような場合を除きます)。
 その場合、土地の競落人(買受人)や抵当権者には、建物の取壊しや土
地の明渡を請求することが認められますが、そのためには、時間も費用
かかります。いつになったら建物所有者が建物を収去して土地を明け渡し
てくれるのかハッキリしません。

 したがって、そのような建物が存在することは、土地の競売手続におい
て、落札価格を下落させ、手続進行を遅滞させてしまい、競落する人がい
なくなることもあり得ます。

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 (実は、そのことを利用して不当な利益を得ようとする者もいます。抵
当権者が土地に抵当権を設定するときには、まだ建物はなかったわけです
から、その後に建てられた建物のせいで抵当権の実行が妨げられるのは、
抵当権者にとって大きな不利益となります。)
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 これに対して、土地だけではなく建物についても一括競売できるとすれ
ば、買受人はその建物もあわせて買い受け、その建物を自己所有の建物と
したうえで、存続させるか取り壊すか決めればいいということになります。
 しかも、この一括競売を認めても、建物の所有者には特に不利益にはな
りません。
 建物の所有者は,本来ならば土地の抵当権実行(競売)によって敷地の
利用権を失い,建物を収去しなければならない立場にあったのですから損
害を被らず,逆に,建物の代価をもらうことができる分、有利になるから
です。

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2 設定者が建物を建てた場合-改正前の民法
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 そこで、民法は、土地に抵当権が設定された後に建物が建てられた場合
に一括競売を認めているのですが、平成15年改正前は、「抵当権設定の
後その設定者が抵当地に建物を築造したときは、抵当権者は土地と共にこ
れを競売することができる。」といった規定の仕方をしていました(改正
前の民法389条本文)。

 したがって、設定者が建物を建てた場合は一括競売ができますが、第三
者が建物を建てた場合については、一括競売が認められないことになって
いました。

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3 第三者が建物を建てた場合-改正による一括競売の範囲の拡大
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 そのため、改正前の民法のもとでは、第三者所有の建物が抵当土地上に
存在するために抵当権実行(競売)が妨げられる場合が多くあり,その対
策が求められていました。

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 平成15年の改正では、先ず、土地の賃借権について短期賃貸借として
の保護を廃止して、抵当権の設定登記後に設定された貸借権は抵当権者に
対抗できないとしたうえで、一括競売の対象を拡大し,第三者が建物を建
てた場合にも認めることとしました。

 すなわち、平成15年改正後の民法は、「抵当権の設定後に抵当地に建
物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売するこ
とができる。」(改正後の民法389条1項本文)としたうえで、
「前項の規定は、その建物の所有者が抵当地を占有するについて抵当権
に対抗することができる権利を有する場合には、適用しない。」(改正後
民法389条2項)としました。
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 要するに、土地に抵当権が設定された後に建物が築造されたときは,建
物の所有者が抵当土地を占有する権原を抵当権者に対抗できるかたちで有
していない限り,抵当権者は抵当権実行としての競売にあたって,その建
物を土地とともに一括競売できるとしているのです。
 そして、競売によって抵当権者が配当を受けることのできる範囲につい
ては、「ただし、その優先権は、土地の代価についてのみ行使することが
できる。」(民法389条1項ただし書。改正前の民法389条但書も同
じ。)として、あくまで建物には抵当権の効力は及んではおらず、優先弁
済権は土地の換価金についてのみ行使できることを定めています。

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 注意する必要があるのは、抵当権設定後に抵当地上に建物が建築された
場合であっても、その建物が第三者所有の場合には、その第三者所有の建
物が抵当権の設定登記前に登記等の対抗要件を取得した賃借権や地上権
基づくものである場合など、土地の占有を抵当権者に対抗できる場合には、
一括競売することはできないということです。

 使用貸借の場合は抵当権者に対抗できないので―親子間や会社と会社経
営者間で使用貸借による建物所有がなされる場合があると思われます―
一括競売することができます。

      
                   (弁護士 緒方義行)



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