• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

【Q&A】裁判所が主治医の診断書を無効とした判例

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 従業員の健康問題(従業員主治医の診断書が起因)が企業の経営に直結し、時には社長・役員の辞任、売上減少、株主代表訴訟にまで発展するケースが顕在化しています。また、従業員の健康を第一に守るという目的により、企業ガバナンスの逆転現象が起き、結果的に健康を守りきれなかったという矛盾も生じています。
 健康管理は、ケガからハラスメントまで、対策の範囲が広いです。そこで、企業ガバナンスを経営者主体という本来の形にすることで、会社と経営者を第一に守り、その結果、従業員の健康を守るという目的で、下記の日本規格協会規格(JSA 規格)「JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針」を開発しました。
 また、認証機関も立ち上げております。
なお、日本規格協会は、経済産業省による認定産業標準作成機関であり、唯一のマネジメントシステム作成機関です。
 企業主体の健康管理体制の構築について、ぜひJSA-S1025をご活用ください。

https://www.kenpomerit.com/

 今回は、連載の総括として、「【Q&A】裁判所が主治医の診断書を無効とした判例」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
========================
【Q&A】裁判所が主治医の診断書を無効とした判例
========================

Q
 次のコラムにおいて、「裁判官は『主治医の診断書』を原則変更・否定しない」と解説されていました。主治医の診断書が裁判所で変更・否定された事例というものは、全く存在しないのでしょうか?

「【社長辞任】裁判官は『医学的専門家』ではないQ&A⑤」
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177795/

A
 結論から申し上げますと、主治医などの「診断書」の結論が裁判所で認められず、結果として覆された(否定された)裁判例は存在します。
 しかし、これは「裁判官が、医師に代わって独自の判断で医学的評価を否定した」という意味ではありません。実際には、診断書という1枚の書類の記載が、【カルテや看護記録、医学的検査結果など、医師自身が継続的に作成した診療記録】によって矛盾を突かれ、ひっくり返されたに過ぎません。
 結局のところ、本質は「一時点の診断書という結論より、その根拠となる医師の客観的記録が勝った」という話であり、医師の作成する診療記録(カルテ等)の決定的な重要性を改めて裏付ける結果となっています。

〇 医師2人の「大丈夫」という診断書が否定された事例
東京地判令和6年9月11日(令和2年(ワ)第30101号、遺言無効確認請求事件)

・事例の概要
 遺言書作成の際、医師2名が立ち会い「事理弁識能力(判断能力)に問題ない(大丈夫)」という趣旨のお墨付き(診断書・証明書)が出され、公正証書遺言が作成されました。
 しかし、後に裁判所はこの公正証書遺言を「無効」と判断しました。つまり、医師2名が作成した診断書や評価が否定されたことになります。

・なぜ「医師のお墨付き」が覆されたのか?
 裁判所が重視したのは、遺言作成時の診断書という「一時点の評価」ではなく、それ以前から蓄積されていた「カルテ」「看護記録」「認知機能検査の数値(MMSE等)」という、医師や医療従事者が日常診療で作成した客観的記録でした。
 それらの医療記録には、見当識障害や不自然な言動、認知機能の顕著な低下が具体的・継続的に記録されていました。裁判所は「カルテ等の客観的データや日々の記載から見れば、一時的に判断能力が回復していたとは認められない」と認定し、診断書に記載された評価を退けました。

〇 裁判所が見ているのは「診断書という結論」ではなく「カルテ等のプロセス」
 この判例が示しているのは、裁判所が単に「医師が書いた紙(結論)」を無条件に鵜呑みにしているわけではないということです。
 裁判官は医学の専門家ではありませんが、証拠評価のプロです。そのため、以下のような構造が発生した場合には、診断書ではなくカルテ記載を優先します。

・一時点の「診断書」:診察時の短いやり取りや、当事者の取り繕い等により、実態と異なる評価が記載されるリスクがある。
・継続的な「カルテ・看護記録・検査結果」:日々の経過、客観的な数値、具体的な言動が偽りなく蓄積されている。

 したがって、診断書がひっくり返ったのは「医学が否定された」のではなく、「医師が日々積み上げた客観的記録(カルテ)によって、1枚の診断書の不備・矛盾が証明された」という構図に過ぎません。

〇 総務・労務実務への教訓:求められるのは「一枚の紙」ではなく「医学的客観データ」
 本事例は、企業の総務・人事労務担当者にとっても極めて重い教訓を含んでいます。
 従業員の休職・復職判断やハラスメントによるメンタル不調の対応において、「主治医が『復職可能』と書いた診断書を持ってきたから認めざるを得ない」「診断書にこう書いてあるから決定だ」と、診断書の文言だけに翻弄されてしまうケースは少なくありません。
 しかし、裁判所の判断プロセスが示す通り、真に証拠価値を持つのは「その診断書を支える医学的・客観的な根拠(カルテの経過、心理検査結果、具体的な機能回復のデータなど)」です。

・診断書のみに依存しない:主治医の診断書1枚で判断するのではなく、どのような客観的根拠や経過観察に基づいているかを確認・把握する。
・産業医や専門医との連携:主治医の診断書と現場での勤務状態にギャップがある場合は、産業医面談等を通じて「日々の客観的状態・機能」を精査する。

 「診断書という評価」よりも「カルテや検査結果という事実の記録」こそが、裁判においても実務においても最も強い証拠力を持ちます。自社の安全配慮義務の履行や労務管理においても、表面的な診断書の文言に惑わされず、その背景にある「客観的な医学的記録」を重視する体制を整えることが不可欠です。

========================
JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針

JSA-S1025ページ
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JSA-S1025%3A2025

JSA-S1025紹介
https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/jsa/pdf_jsa_372.pdf

【JSA-S1025】開発の解説
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177724/

リサーチマップ(朝長健太)
https://researchmap.jp/yobouigyou

絞り込み検索!

現在23,294コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP