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『民主党による税制改正』 その11 酒税・たばこ税

 札幌市豊平区の 税理士 溝江諭(みぞえさとし)です。

 民主党のマニフェストではごく僅かしか触れられていない税制。そこで、より詳しく記載されている民主党の「政策集 INDEX 2009」から税制改正についての政策を見ていきましょう。

 『民主党による税制改正』その11 酒税・たばこ税です。
 
 これまでお伝えした内容は以下のとおりです。
 
1回目・・・「納税者の視点に立った税制へ」という題で、「税制改正過程の抜本改革」「税・社会保障共通番号の導入」「納税者権利憲章の制定と更正期間の見直し」「国税不服審判のあり方の見直し」
2回目・・・「所得税改革の推進」という題で、「所得控除の整理、税額控除、手当等への切り替え」「給与所得控除の見直し」
3回目・・・「年金課税の見直し」と「住宅ローン減税等」
4回目・・・「給付付き税額控除制度の導入」、「金融所得課税改革の推進」
5回目・・・「消費税改革の推進」
6回目・・・「法人税改革の推進」
7回目・・・「中小企業支援税制」
8回目・・・「相続税等改革の推進」
9回目・・・「国際連帯税の検討」
10回目・・・「個別間接税改革の推進 」
 
 
2 酒税・たばこ税
 
 「酒税・たばこ税は国民の健康確保を目的とする税に改めるべきであり、その際には国民に分かりやすい仕組みにすることが必要です。
 その観点から、酒税については、特に清酒・焼酎などの現行の税負担に配慮しつつ、基本的に致酔性に着目してアルコール度数に比例した税制とすることを検討します。
 たばこ税については財源確保の目的で規定されている現行の「たばこ事業法」を廃止して、健康増進目的の法律を新たに創設します。「たばこ規制枠組み条約」の締約国として、かねてから国際約束として求められている喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置付けます。具体的には現行の「1本あたりいくら」といった課税方法ではなく、より健康への影響を考えた基準で、国民が納得できるような課税方法を検討します。その際には日本たばこ産業株式会社(JT)に対するさまざまな事業規制や政府保有株式のあり方、葉たばこ農家への対応を同時に行います。」
 

 民主党の主張は以下のとおりです。
 
1 酒税は健康確保を目的とする税とするため、現行の税負担に配慮しつつ、アルコール度数に比例した税制とすることを検討する。
2 たばこ税については喫煙率を下げるための価格政策の一環として位置付け、より健康への影響を考えた基準での課税方法を検討する。
 
 これらの個別間接税は嗜好品に対する課税であり、愛飲家や愛煙家にとり家計やお小遣いに直結する切実な問題ですが、いずれの税も古い歴史を持っています(注1)。酒やたばこが課税物件とされたのは、①「贅沢な嗜好品」という認識が世の中に存在していたこと、②行政にとっては多額の税収確保が期待できたためです。
 
 酒税による国の税収は1兆4、611億円(注2)、たばこ税の税収は国税地方税を合わせ2兆795億円(注3)。これらの合計は約3兆5千億円で全税収の約4%、間接税のうち約14.2%を占めています。
 
 初めに酒税です。現状を見てみましょう。
 
 酒税の税率および晩酌による負担額は次のようになっています(注4)。
 
      1リッターあたり 毎日飲む量の目安 1日酒税 年間酒税
日本酒      120円   2合(0.36リッター)43.2円 15,768円
ウイスキー40度  400円     0.1 リッター  40 円 14,600円
ワイン      80円     0.36リッター 28.8円 10,512円
焼酎20度     200円     0.18リッター  36 円 13,140円
ビール      220円     0.5 リッター 110 円 40,150円
発泡酒(麦芽比率25~50%)
178円     0.5 リッター  89 円 32,485円
発泡酒(麦芽比率25%未満)
134円     0.5 リッター  67 円 24,455円
その他の発泡性酒類 80円     0.5 リッター  40 円 14,600円

 これから、次のことが分かります。
 
1 1リッターあたりでは、ウイスキーが一番高く、400円となっている。一番安いのはワインとその他の発泡性酒類の80円であり、5倍の差がある。
 
2 アルコール度数で見ると、ビールが一番高く、アルコール度を平均5度とすると1度あたり44円となっている。 一番安いのはワインでアルコール度を平均12度とすると1度あたり僅か6.7円で、約6.6倍の差がある。日本酒、ウイスキー、焼酎は1度当たりおおよそ10円となっている。
 
3 毎日飲むそれぞれのお酒の量を上記のように想定すると、年間負担額ではビールがダントツで一番となり、年間40,150円。一番少ないのは焼酎で年間13,140円となり、約3倍の差がある。
 
 このような現状にある酒税に関して、民主党は「健康に対する負荷」を踏まえた課税制度、すなわち、アルコール度数に応じた税制にすることを検討しようとしています。ただその場合でも、アルコール度数に一律に比例させるのではなく、低率課税となっている清酒・焼酎などの現行の税負担にも配慮するようです。
 
 前回の「個別間接税改革の推進」で述べたように、間接税は、①担税者である国民の「税に対する関心度」を低下させる要因となっていること、②生活費をアップさせるという問題点を持っているため、間接税制度はできるだけ少ない方が望ましいこととなります。このような問題点解消のためには、酒税についても本来ならばすぐにでも廃止にしてもらいたいところですが、残念ながら簡単には廃止できないでしょう。また、「健康に対する負荷」を踏まえ、アルコール度数に応じた課税を目指すという点については理解できなくもありませんが、多くの国民がささやかな楽しみにしている晩酌や飲食。その価値観を十分に尊重してもらいたいものです。

 そのため、酒税については、次のようにするのが良いのではないでしょうか。
 
1 5,6年かけてアルコール度数の比例課税を実現させる。
2 たばこに比較すると本人の健康被害の度合いや他人に対する悪影響ははるかに少ないと思われるので、バッド課税という発想で酒を悪役にし、重課することは避ける。
3 酒は贅沢品とういう発想もやめる。
4 適度な飲酒は「百薬の長」。グッド減税の対象とせよとまでは言わないが、間接税が持つ問題点(前記の②)を解消するために、より低率にし、税収減を図り、家計の可処分所得増加につなげる。
 

 次に、たばこ税です。
 
 たばこ税については、これまで「税収の確保」という目的が明らかに優先され、喫煙者をできるだけ減らさないよう、小幅な値上げ(増税)が繰り返されてきたことは皆様ご承知のとおりです。
 
 そんな日本が2004年3月9日にWHO(世界保健機関)による「たばこ規制枠組条約」(注5)を締結しました。この条約は、たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在及び将来の世代を保護することを目的とし、たばこに関する広告、包装上の表示等の規制及びたばこの規制に関する国際協力について定めたもので、締約国は 2009年5月15日現在、164か国に上っています。
 
 この条約の第3章「たばこの需要の減少に関する措置」 第6条第2項(a)に、「たばこの消費の減少を目指す健康上の目的に寄与するため、たばこ製品に対する課税政策および適当な場合には価格政策を実施する。」と記されています。
 
 この条文は、喫煙率を下げるためには、たばこ税を見直(増税)し、さらには価格政策(値上げ)さえも実施するということを宣言したものです。
 
 今まで、わが国はこの第6条の履行には消極的でしたが、民主党政権になり、健康上の目的に寄与するため、その履行を積極的に行おうとしているようです。それが政策にある、「たばこ税については喫煙率を下げるための価格政策の一環として位置付け、より健康への影響を考えた基準での課税方法を検討する。」という文章になっているわけです。
 
 すなわち、たばこ税の課税目的を今までの「税収確保」から新たに「喫煙率減少」へとまさに大転換しようとしているのです。健康目的のため、喫煙率を徹底的に下げようとするならば、個別間接税におけるバッド課税という概念を全面的に打ち出し、大幅な増税重課、大幅な高価格の実現とならざるを得ないでしょう。そうなると、現在1箱約300円のたばこが600円から1000円に値上げされることになります。
 
 一方、やはり「税収確保も必要だ」という意見が強くなると、増税・値上げ幅もぐっと抑えられることになるでしょう。
 
 なお昨年あたりでしょうか、どちらにしても税収にはそれほど大きな影響がないと言う試算がマスコミに流布されていたように記憶しますが、いずれにせよ、この問題については、これからの政府税調で議論のうえ、決定されることとなっています。(政策でも触れられていたように、たばこについては、たばこ税以外にも、JTや葉たばこ農家への対策をどうするのかという問題も発生します。)
 
 バッド課税という言葉が懲罰的な響きを持つためどうしても好きになれない私ですが、民主党には自信を持ってこの政策を推進してもらいたいと思っています。
 
 皆さんならどちらを支持しますか?
 
 
 See you next !
 
 
 
 次回は、『民主党による税制改正』 その12 自動車関連諸税の整理等 を取り上げます。
 
  
 その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ」でどうぞ!!
 http://www.ksc-kaikei.com/
 
 

(注1)酒税および酒税行政の変遷(タビスランド「申告納税制度50年史」)
http://www.tabisland.ne.jp/zeidb/50year/50year18.htm
 
(注2)酒税の税収(財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/124.htm
 
(注3)たばこ税の税収(財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/siryou/127.htm
 
(注4)酒税の税率(KSC会計事務所 「ブログ」 「『晩酌と酒税等』その1 酒税はいくら?」)
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=31
 
(注5)たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(外務省)
http://www.mofa.go.jp/MOFAJ/gaiko/treaty/pdfs/treaty159_17a.pdf
 
 
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    札幌市豊平区  税理士 溝江 諭 KSC会計事務所  
          http://www.ksc-kaikei.com/
 
    札幌学院大学  客員教授 溝江 諭 税務会計論担当 
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