
労働力不足が問題となって久しい中、とくに中小企業では採用活動がうまく進まず悩むケースが少なくありません。このような状況に対応する方法の一つに「企業ブランディング」が挙げられます。ここでは、企業ブランディングの概要やメリット、実際に企業ブランディングをスムーズに進めるためのコツなどを解説していきましょう。
目次
企業ブランディングとは
企業ブランディングとは、企業の風土や方向性、製品、サービス、そして、企業そのものに対するイメージをよりよくするための取り組みのことです。主に①インナーブランディングと、②アウターブランディング、③採用ブランディングの3つが挙げられます。
①インナーブランディング
会社が社員に対して企業のイメージや価値観を周知・共有し、会社に愛着心をもってもらうための取り組みです。
②アウターブランディング
インナーブランディングとは逆で、社外向けのブランディングです。企業が提供する商品やサービス、理念や考え方などを明らかにした上でクライアントや消費者などに発信し、認知・浸透させるための取り組みを指します。
③採用ブランディング
求人募集を行う企業が採用活動を行う際、求職者に向けて会社の特徴や魅力を発信し、イメージアップを図る取り組みです。求職者に自社への興味と関心をもってもらうことで「応募者数を増やす」という狙いがあります。
企業ブランディングを実践すると、まずは相手に企業のことをより深く知ってもらえるようになります。同じような業種やサービスを営む他社が混在する中で、自社に対して興味を持ってもらうためには、それなりのアピールを行うことが必要なのです。
企業ブランディングのメリット
企業ブランディングを実施する際のメリットは、”認知度の向上”が見込めることです。企業ブランドが明確になりさえすれば、商談の際に自社サービスの内容やメリットを詳細に渡り説明しなくても、相手側に周知されることになるため、より自社サービスを選んでもらえる可能性が高まるでしょう。
また、企業ブランディングは社内に対してもよい影響を及ぼすことができます。まず、企業のイメージや特徴、メリットなどが明らかになるにつれ、企業に勤める社員にも自社のミッション・ビジョン・バリューや、事業内容がより深く周知されるようになります。自分の会社が何を目標として、現在は何をしている段階なのかを働く社員が理解することで、社員の目指す方向性が明確になり、組織としてまとまりが生まれます。
さらに、企業ブランディングが評価されるようになると、採用活動が成功しやすくなります。企業ブランドがしっかりしている会社であるならば、その評価を聞いた求職者や転職を検討する者が「ここで働きたい」と思うようになるケースが増加します。また、既存の社員が長く働きたいと望むようになり、離職率の低下にもつながる効果が期待できるでしょう。
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企業ブランディングの事例
企業ブランディングの事例で代表的なものは以下です。
1)ロゴマークやキャッチコピーの作成
まず企業を表すシンボルとなるロゴやキャッチコピーを打ち出し、定着させることが挙げられます。
有名な企業やブランドには、必ずといってよいほどロゴマークがあるものです。テレビで、ロゴマークから企業名や店名をあてるクイズ番組を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。ロゴマークがあると分野キャッチコピーについても、たとえば日立グループの「Inspire the Next」など、一言でその企業を表す印象が強いため、心に残りやすいとされています。
2)積極的な発信
また、企業ブランディングを成功させるためには、前述のロゴやキャッチコピーに加え、ホームページを始めとした発信をすることです。一般的に、会社の情報を得るにはまずホームページを確認するでしょう。また、最近では、企業のホームページとは別にオウンドメディアを立ち上げる企業も増えてきました。
企業から発信をする際の注意点は、理想とする企業ブランドイメージから乖離しない内容に統一することです。企業のイメージが統一されていない場合、違和感や不信感を生み出してしまう可能性があります。企業ブランディングをぶれずに一貫したイメージで通すことは非常に重要なのです。
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企業ブランディングの進め方
ここからは、企業ブランディングを進める手順について説明をしていきましょう。
①現状の洗い出し
企業ブランディングを実施するための前段階として、まずは社内の現状を洗い出し、正しく把握する必要があります。
現状把握には2種類あり、1つ目は自社の現状を把握することが挙げられます。売上状況の内訳や得意とする分野の洗い出しに加え、社員にヒアリングを行うなどの方法で現場の意見を吸い上げる方法も有効でしょう。
そして、2つ目は、社会分析です。現在の経済情勢や環境問題、注目されている内容、流行など、会社を取り巻く世間の状態を正しく把握することも、効果的なブランディングを行うための第一歩となるためです。
②企業ブランドの明確化
企業やそれを取り巻く状況を正確に把握したところで、次は周知を目指す企業ブランドの内容を決定していきます。これまでの企業イメージに加え、「どのような企業にしていくのか」「そのためには何を大切にしているのか」などの”未来”に向けた前向きなイメージを取り入れたブランドコンセプトをつくりあげることが重要です。
策定したブランドコンセプトについては、社内で意見を求めるなどの方法を取りましょう。一部の独断で決めてしまい、社員が共感できないものになってしまっては本末転倒です。あくまでも「会社全体でつくり上げていく」姿勢を忘れないようにしましょう。
③企業ブランドの周知
ここでは、決定した企業ブランドを認知してもらうための施策を実際に行うことになります。現在は、広告媒体がテレビやラジオ、新聞などに限られることなく、WebサイトやSNS、動画サイトなど、さまざまな方法あります。そのため「ターゲットに自社ブランドを知ってもらうには、どのような方法を取るべきか?」を入念に検討した上で実施する必要があります。
また、採用活動を並行して行う場合は、企業ブランドイメージと一貫したイメージをもつ「採用専用サイト」を設け、自社の紹介に加え、どのような人材を求めているのかを発信するとよいでしょう。
④定期的な振り返り
ここまでの内容で、企業ブランドは一貫して同じコンセプトで周知させることが重要であると述べてきました。しかし、IT化が普及して久しい中、世間の流れはめまぐるしく変化するようになり、また流行の盛衰も頻繁になりました。つまり、同じようなブランディングを実施していても、受け手となるターゲットの求める内容や考え方が変わってしまうことで、思うような効果がみられない可能性があります。企業ブランディングを成功させるためには、定期的にブランディングの見直しを行い、対応していくことが非常に重要であるといえるでしょう。
まとめ
マスメディア中心に情報を発信していた一昔前とは異なり、今では誰もが自分の意見を発信できる世の中になりました。個人に与えるイメージは強くなり、企業ブランディングの重要性は高まる一方です。また、会社の認知度だけでなく、社員の定着や採用といった組織づくりにもつながります。この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
*nialowwa, Luce, USSIE, Rawpixel, suwannar / PIXTA(ピクスタ)
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