
接待禁止の会社も!セクハラや違法残業を防ぐために経営者が策定すべき接待ルール
民間同士の接待について、一体何が問題なのか理解していない人も多いかもしれません。昭和から平成にかけての接待は、女子社員をホステス代わりに使うなどかなり酷いものがあり、そういう時代を知っている幹部社員の中には、現在の接待に問題があっても気づかない人もいるでしょう。
公務員への接待は、『国家公務員倫理法』という法律と、それを受けて細かい内容を規定した『国家公務員倫理規定』によって厳しく規制されていて、原則違法になることは多くのビジネスパーソンが知っています。
一方で、民間企業への接待は法律的に禁止されているわけではありません。しかし、「セクハラといわれてしまった」「タクシー代を出すのはいいのか」「社内の接待会計ルールをすり抜けた不正」など、後から問題が発生しやすいため、内部統制の一環としても、ルールをつくり十分に注意をする必要があります。今回は弁護士である筆者が、接待をする側の企業と接待を受ける側の企業について、それぞれ問題点と注意点などを明確に解説いたします。
【参考】国家公務員倫理法/e-GOV 法令検索
【参考】国家公務員倫理規程/e-GOV 法令検索
民間接待の何が問題なのか?
まずは、接待をする企業とされる企業それぞれの問題点をみてみましょう。
接待をする企業の問題点
まず、接待が業務なのかを明確にする必要があります。接待が業務として行われるのであれば、残業代が発生するからです。どこまでが業務といえるのか難しいですが、少なくとも、単に食事をしたりゴルフをしたりするだけではなく、前後の時間のアテンドや送り迎えなどを行うのであれば、明確に業務時間としておかないと後に問題が生じる恐れがでてきます。
出たくない接待に無理やり繰り出されるような場合、パワハラの問題も生じてきます。女子社員をホステス代わりに接待の場に同席させるなどの行為は、セクハラ問題になる可能性があります。接待をする側の企業としては、このような違法行為が起こらないように明確な接待のためのルールを策定し、それを周知徹底させることが必要といえるでしょう。
接待を受ける側の問題点
接待をする側と違い、受ける側の企業は基本的にパワハラやセクハラの被害は生じにくいでしょう。しかし、場合によっては不正な関係が築かれたり、セクハラやパワハラの加害者になったりする可能性もあります。
昭和の時代には、「購買部長になれば蔵が立つ」なんていわれていたこともありました。購買部に商品を採用してもらうため、購買部長の自宅にさまざまな届け物が送られてきたり、高額な各種接待がなされたりといった事例や、不正な関係が発展して、もっと露骨に取引先からキックバックをもらうようなこともあったといいます。接待を受けるにあたり、接待する側の女子社員にセクハラ行為をすることもあり、現代であれば違法行為として大問題となるような事態もありました。
そこで、接待を受ける企業でも、就業規則や倫理規定で接待を受ける際のルールを厳しく規定しています。会食でご馳走になったあとのタクシー代をもらう行為や、自宅への付け届け(金品や贈り物をすること)などを禁止したり、セクハラなどを防ぐ観点から接待する側の社員に個人情報を聞いたりするような行為を違法としている企業も多いでしょう。
【もっと詳しく】労働時間じゃない休日のゴルフ・懇親会・接待は違法?判例をもとに弁護士が解説
経営者が策定するべき接待ルール
接待は、する側や受ける側の企業でさまざまな問題を引き起こす可能性があります。経営者としては、接待についてルールを策定する必要がでてきます。
接待をすることに関するルールとしては、自社の社員の無償労働とならないように気をつけたり、セクハラ・パワハラの問題を起こさせたりしないルールが必要です。さらに、現代では接待を受ける側の企業で、“接待についてのルール”を設けているので、その内容を確認して相手方のルール違反とならないようにすることも望ましいでしょう。
また、接待を受ける側として不正な行為が起こらないように、必ず事前に報告をさせるなどの決まりや、自宅への付け届けなどは絶対に認めないといったルールを明確に定める必要があります。
いずれの場合も、単にルールをつくるだけでなく、社内講習会などで周知徹底させることも必要となってくるでしょう。
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まとめ
企業として、取引先との関係を円滑に行うためにも、接待をしたり受けたりすることはあります。その一方、接待についての明確なルールがないときには、違法残業やセクハラ・パワハラ、不正取引などの問題が生じる可能性がでてきます。企業のコンプライアンスが重視される今日、合理的で明確な、民間接待のルールをつくることは必要不可欠といえるでしょう。
* OKADA,にしやひさ,emma,Makkuro GL,Makkuro / PIXTA(ピクスタ)
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