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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 副業に伴う労働時間管理、企業の法的責任は?企業が知るべき労働時間の管理方法【弁護士が解説】

副業に伴う労働時間管理、企業の法的責任は?企業が知るべき労働時間の管理方法【弁護士が解説】

2022.02.15

政府による働き方改革の推進、また新型コロナウイルス禍による働き方の変化に伴って、従業員が副業を手がけたいと考えることが多くなっています。前回のWebセミナー副業禁止は原則できません!企業が知るべき「副業」のメリットとリスク対策でも触れられましたが、企業は原則として従業員の副業を禁止できません。逆に、従業員の副業制度を整備することこそが企業にとって必要なこととなります。

そこで前回に引き続き、日比谷タックス&ロー弁護士法人に所属する堀田 陽平先生を講師に迎え、Webセミナー“【会社は社員の副業を禁止できない?!】セミナーで解決! 早期に副業制度を整備するためのポイント”を開催し、企業における副業制度整備のポイントについて解説していただきました。

ここでは、Webセミナーで解説された内容を4回に分けて連載していきます。当記事では、第1回として“労働時間の通算と割増賃金の考え方”について解説します。

第1回:労働時間の通算と割増賃金の考え方
第2回:副業規定に具体的に記載すべきこと(前編)
第3回:副業規定に具体的に記載すべきこと(後編)
第4回:雇用保険、社会保険、労災の適用

【資料動画のDLはこちらから】

【登壇者】
堀田陽平(ほった・ようへい)弁護士
石川県出身。2020年9月まで経産省産業人材政策室にて、兼業・副業、テレワークといった柔軟な働き方の推進のほか、フリーランスの活躍の場の拡張、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)といった新たな働き方に関する政策立案に従事。現在は「働き方改革はどうすればいいのか?」という疑問に対するアドバイスや、企業に対して労務や人事トラブルへのアドバイスを行う。
【情報発信等】
日経COMEMOキーオピニオンリーダとして働き方に関する知見を発信。
著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)

副業制度の導入手順

副業制度の導入手順は大きく5ステップあります。

今回のWebセミナーでは、副業制度の導入にあたって重要になってくる労働時間の捉え方と、社内規則にどういったことを盛り込んでいけばいいかについて中心に解説しました。

労働時間の通算による割増賃金の考え方

それではまず、副業と労働時間について解説しましょう。

前提として、従業員の労働時間は本業と副業を通算する必要があります。これは、厚生労働省が労基法第38条第1項の解釈通達によるものです。『改訂副業・兼業ガイドライン』においては、所定労働時間については“労働契約の先後”で、所定労働時間外については“労働の先後”の順でそれぞれ足し合わせ、法定時間外に労働させたほうが法的責任を負って割増賃金を支払う責任があるとされています。

この原則に従う場合、主業と副業それぞれの労働時間を以下の図の順序で計算し、時間外労働の割増賃金を算出していきます。またこれは週単位の労働時間における割増賃金についても同様に算出します。

「管理モデル」で労働時間の管理を簡易化

しかし、本業と副業の労働状況は多数のパターンがあり、非常に複雑です。この原則に忠実に従い、従業員の多様な働き方に沿って本業と副業についての労働時間を計算するのは企業にとって大きな負担となります。

そこで厚生労働省は、『改行副業・兼業ガイドライン』において“管理モデル”という簡便な労働時間の管理方法を提示しています。管理モデルの概要は以下のとおりです。

従業員が主業としてA社、副業としてB社に勤務した場合、“使用者Aの1か月の法定外労働時間”と“使用者Bの1か月の労働時間(所定内+所定外)”の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲で、A社とB社それぞれにおける労働時間の上限を設定します。そして、時間外労働が発生した場合は、A社は自社における法定外労働時間の労働について割増賃金を支払い、B社は自社における労働時間の労働について割増賃金を支払います。

具体的には、従業員はA社での労働時間に上限設定を行い、B社に対して“管理モデル”の了承を得て労働時間の上限設定を行います。次に従業員はA社に対してB社が“管理モデル”を了承したことを伝えることでこの管理方法が成立します。これによってB社は従業員がA社で設定時間の上限を働いたとみなし、実際の労働時間をすべて把握する必要がなくなります。

「管理モデル」での企業の法的責任

ただし、この管理モデルによる労働時間管理は、法的責任を免除しているわけではありません。割増賃金についての問題が発生した場合には、労基署と従業員の2方向から法的責任を問われることになります。

しかしながら、すでに判例もあるように従業員から割増賃金請求があった場合でも、副業先での労働時間について“確定的な認識”がない場合には企業側が免責される可能性はあります。

労働時間の通算と割増賃金の考え方については以上です。次の記事では“副業規定に具体的に記載すべきこと(前編)”を解説します。

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