登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 経営・財務 > 知らないと大きなリスクが!? 会社設立時に知っておくべき持株比率の決め方【弁護士が解説】
起業

知らないと大きなリスクが!? 会社設立時に知っておくべき持株比率の決め方【弁護士が解説】

2022.07.18

複数の人たちで一緒に会社を始めようということはよくあります。そういうときには、誰が営業を担当し誰が技術を担当するといった、会社での役割分担などをざっくりと決めることになるでしょう。しかし、それに加えて会社の株式比率も決めなくてはなりません。「まだできたばかりだから……」とそれほど真剣には考えない方が普通かもしれませんが、株主比率によって株主としてのさまざまな権利義務に影響が生じてきます。ここを考えなかったばかりに、会社の実権を奪われてしまうという事態になるケースもあります。決して軽く考えたり適当に決めたりせず、仕組みやリスク理解をしたうえで決定していきましょう。

今回は持株比率の決め方について、弁護士である筆者が解説します。

持株比率による権利とは

会社法では、基本的に資本多数決が取られています。会社での重要事項を決める株主総会においては、基本的な決議は過半数の株式を有するものにより決められます。また、一定の重要な事案については、3分の2の株式を有する者の決議で決せられます。つまり、自分で会社に影響を及ぼしたいなら、最低でも51%、できるなら67%の株式を所有しておくことが望ましいということになります。

少数の株式しか持たない場合でも、3%の株式を有していれば、会計帳簿閲覧権や役員の解任請求権などの権利が生じます。少数株主にとっては、多数派の横暴に対抗する権利であるといえる一方、多数派にとっては経営の事由を妨害される存在でもあるのです。

【参考】「会社法」 / e-Gov

【こちらの記事も】【一度確認しておく!】はじめての起業の助けに!マニュアルには載っていない会社のルール対応相談まとめ

知っておくべきリスク

繰り返しになりますが、持株比率によって、どのようなことができ、できないのかが会社法で定められています。基本的に株式をたくさん有している者が会社をコントロールできるというのが、資本主義の下での会社法のルールです。そのルールを深く考えずに相手方に多数の株式を渡した場合、会社の経営をそのまま乗っ取られてしまうこともあり得ます。逆に、少数比率の株主でも、会社法上認められている権利はあります。そういうことを理解していないと、自分が全ての経営を自由に行うつもりでいたのに、少数株主の反対で、経営がデッドロック(膠着状態)にぶつかるというリスクも発生する可能性があります。

株主間契約での対応

会社設立等に複数の株主が関与する場合には、株主間で契約を締結して、お互いの権利義務関係を明確化すべきです。既に説明してきた通り、株式会社の場合は資本多数決の原則が適用されます。株式をたくさん持っている方が多くの権利を持ち、その内容は会社法でしっかりと定められているわけです。ただ、会社法で定められている権利を主張しあう場合、会社の運営がうまくいかなくなる可能性があります。

そこで、株主間でお互いの権利について定めておく必要が生じます。少数株主が権利を濫用して経営を阻害することが無いように、少数株主の権利について更に一定の規制を設けることもあります。一般的には、少数株主が相手方に多くの株式を渡して経営の中心になってもらう一方で、「少数株主だが自分もこの件についてだけは拒否権を持ちたい」といった事案について決めることが多いです。

株主間の契約は、上手く使えばお互いの権利義務の整理ができて非常に有意義なものとなります。

【こちらの記事も】起業を成功させる!起業時や起業直後に利用できる補助金・助成金を一覧で紹介します

経営者が知るべき持株比率の決め方

持株比率の問題が顕在化するのは、事業が上手くいってきてからの話です。できたばかりの会社は生き残りをかけて無我夢中で活動します。株式比率によって生じる株主相互の権利義務関係はあまり重要ではないでしょう。下手をすれば会社がそのまま潰れてしまうかもしれませんし、その場合には株主比率がどうであっても関係ないことになります。

ただそうはいっても、後から問題になる可能性がある以上、最低限のところは押さえておく必要があります。重要なのは、経営に責任を負う方が過半数の株式を有すること、可能であれば67%の株式を保有していた方が安心だという点です。逆に少数の株式を有することになる方は、「これだけは自分の同意なしには行なえない」という点を、契約書で明確にしておくようにしましょう。

最後に

「会社を始めるなら、まずは一人で始めた方が良い」という方がいます。人と一緒にやるにしても、まずは会社の目鼻を付が付いてからにすべきということです。これまで述べてきたような問題点を考えると、それも確かにもっともなアドバイスかもしれません。一方、最初から複数人の力を合わせた方が、会社が発展しやすいのも事実です。ただその場合には、後からもめることの無いように、持株比率やお互いの権利などを予め決めておくことが必要となります。

【参考】「会社法」 / e-Gov

*jessie、センメー、mits、freeangle / PIXTA(ピクスタ)

【こちらの記事も】従業員の給与との違い・注意点は?役員報酬の決め方【経営の基礎知識をわかりやすく解説】