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昇給制度

【人事制度】等級制度の作り方をわかりやすく解説!真似すれば作れる図表解説付き

2022.08.22

『2022年度版中小企業白書』(中小企業庁)によると、中小企業が直面する経営課題のうち重要と認識している項目で”人材について”と回答した経営者の割合が8割以上と最も多く、関心の高さが伺えます。求職者に対するアピールや従業員の意欲・能力向上に有効な人事制度の構築を検討している経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、人事制度の土台となる”等級制度”について、その考え方や作成の手順を紹介していきます。「人事制度を作りたいけど、まず何から着手すればいいかわからない」という方はぜひ、最後までご覧ください。

等級制度とはどういうもの?

等級制度は、何らかの基準に基づいて社内の階層を整理し、従業員を区分・序列化するために作成するものです。“人事制度の土台”として、給与制度、評価制度等の設計・運用の前提となるものであり、非常に重要になります。等級制度の基準にはいくつかの種類があり、会社の方針等に従って選択することが一般的です。以下では、代表的な基準である“職能基準”“職務基準”“役割基準”それぞれの特徴を説明していきます。

職能基準とは?

職能基準とは、従業員が能力を蓄積し成長していくことを前提に、従業員に求める能力を基準に階層を整理していきます。この職能基準に基づいた人事制度は『職能資格制度』と呼ばれ、高度成長期に導入が進みました。当時は右肩上がりの経済成長を前提にした年功序列や終身雇用が一般的であり、従業員が一律的にステップアップしていく基準が時代にマッチしたという背景があります。

現在でもこの職能基準を採用している企業は多いようですが、長期的な経済低迷や転職が一般的となった近年ではあまり機能しにくくなっているケースも見受けられます。

職務基準とは?

職務そのものが基準となるもので、欧米では一般的な考え方です。職務基準では、企業が必要とする人材の採用や配置を行うために、各職種に対する職務内容やスキルを詳細にしていきます。この際に作成するものが『ジョブ・ディスクリプション(職務内容記述書)』と呼ばれるものになります。『ジョブ・ディスクリプション』には、職種やそのレベルに対する職務一つひとつの内容が詳細に記載され、それに対応する賃金が明確に定められています。年齢や勤続年数という職務以外の要素は考慮されず、“同じ職務を遂行すれば同じ賃金”が原則です。

近年、日本でも大手企業を中心に導入が進んでおり、「エンジニアやクリエーター等の高度な専門人材を採用するために、新卒採用の一部に職務基準による募集枠を設ける」という対応を取る企業もあります。

役割基準とは?

近年の経営環境にマッチし、中小企業においても導入が進んでいる基準が役割基準です。名前のとおり、社員それぞれが担う役割を基準としたものです。高度成長期に多く導入された職能基準は、当時一般的であった年功序列や終身雇用にマッチする制度でしたが、経営環境の変化に伴い徐々に不具合が起こるケースが増えてきました。例えば「変化の激しい環境に対応するために若手社員を抜擢しようとしても、能力の高いベテラン社員が上位ポストを占めてしまっており実行が困難である」というような“組織の硬直化”が起こっています。そこで、他の基準として一律的に高まっていく能力ではなく”役割”が着目されました。役割を基準とすることで、より柔軟な組織運営が可能になり、先の例のような若手社員を抜擢することもできるようになります。

チームワークを発揮しながら、いい意味で職務間のあいまいさを残し成果を出していく日本的な業務遂行にマッチした基準として近年注目されています。

【こちらの記事も】雇用の原則が変わる?「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の違いと中小企業における活用ポイント

等級制度はなぜ必要なの?

等級制度を作成することにより、一定の基準に基づいた区分や階層が明確になります。そして、従業員を基準に基づき分類していくことで以下のような効果が期待されます。

効果その1:人材育成を促す

等級制度により従業員が今いる段階が明確になることで、次の段階にステップアップするためには何が必要かわかります。従業員が目指すべき方向が明確になることで人材育成を促すという側面があります。

効果その2:人材の配置がしやすくなる

組織の縦横の区分や階層を設定することで、従業員をどこに配置すればよいかが明確になります。従業員に対しても、今のポジションで何を期待しているかを説明しやすくなるでしょう。

効果その3:給与決定の基準となる

等級制度は人事制度の土台となり、一般的に給与制度とも連動するものです。つまり、等級が上がれば給与も連動して増加していくということになります。例えば、各等級に対して基本給の下限と上限の幅を設定し、その範囲内で基本給が決まるという運用をします。また、一定等級以上になると役職が付与され、役職手当が支給されるということがあります。

【こちらの記事も】昇給の種類とは?中小企業が実施すべき「給与制度」の作り方

等級制度はどうやって作るの?

等級制度のフォーマットは会社により様々ですが、以下に基本的な等級制度の作り方を、手順を追って説明していきます。

※ここでは、上記の”役割基準”にもとづいた等級制度の作り方を掲載します。

手順その1:等級数を決定する

従業員に期待する役割段階の数を決定します。例えば、新入社員が入社した後、将来的には部下を指導育成すること、さらに大きいチームをまとめていく、そして最終的には経営者の補佐をするというようにステップアップしてくことが期待されるでしょう。そのような段階を明確に設定していきます。

現在の組織体制における役割段階を土台にしながら、将来的に”こうありたい”という期待も込めて検討するとよいでしょう。中小企業では5~6の等級数が一般的です。

手順その2:それぞれの役割を記載する

等級数を決定した後は、各等級に期待する役割を検討していきます。経営者として従業員に「こういう役割を担って欲しい」ということが必ずあるはずです。それを、”独自の表現”で記載していきます。従業員は、ここに記載された文言から「どのような役割が期待されているか」を理解するので、書籍やインターネット上から探してきた他社の表現ではなく、自社で考え抜いた表現を記載すべきです。

役割の記載の仕方は様々ありますが、例えば、「顧客に対して」「社内メンバーに対して」「業務遂行に対して」「人材育成に対して」というように項目を定めると検討しやすいでしょう。

手順その3:他の要素を連動させる

手順2までで基本的な等級制度は完成となりますが、必要に応じてその他の要素を記載していきます。例えば、「5等級=部長」「4等級=課長」「3等級=係長」というように等級と役職を対応させ記載する場合があります。また、「ある等級には〇〇という資格を保有していることを期待する」というように等級に対する保有資格を設定することもあります。

 

今回は等級制度について、その考え方や作成手順について説明してきました。等級制度は人事制度の土台となるもので、「これから給与制度や評価制度を作りたい」という場合には非常に重要な制度です。今後、等級制度を作成するという場合には、今回紹介した内容を参考に、ぜひ自社独自の内容を盛り込んで作成してください。

【こちらの記事も】離職率が高い企業の特徴とは?計算方法と離職率を下げる対策をまとめて解説

【参考】2022年度版中小企業白書 第2章 企業の成長を促す経営力と組織( 第2節) / 中小企業庁

*tiquitaca、tadamichi、タカス / PIXTA(ピクスタ)