登録

会員登録いただけると、

  • メールマガジンの受け取り
  • 相談の広場への投稿 等

会員限定のサービスが利用できます

登録(無料)を続ける
TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 「採用したけどちょっと…」試用期間に解雇は可能?違法にならない対応方法を弁護士が解説
悩む女性社員

「採用したけどちょっと…」試用期間に解雇は可能?違法にならない対応方法を弁護士が解説

2023.01.16

中途採用をしたが、期待値以下のパフォーマンスに悩む経営者や人事の方の話をよく聞きます。とりあえず試用期間に実務をやってもらい、期待していたパフォーマンスを発揮しない社員については、「本採用しないようにしたい」と考えるのはある意味当然です。そもそも、”試用期間”というのは、本採用するかどうかを決めるための期間です。そこで期待した能力に満たないならば、当然会社としては雇用を継続したくはありません。

しかし、現在の法律では、そのような”本採用拒否”はかなり難しいとされています。今回の記事では、法律事務所を経営する弁護士である筆者がリスクを減らし、本採用拒否をするための方策や、期待値ズレの採用をしないための対応策について解説していきます。

採用後によくあるトラブルなのか

実は、こういうケースは決して稀ではありません。うちの法律事務所でも、何件も相談を受けてきました。それなりの経験と能力があるということで、相応な待遇のもと会社は当該社員を採用します。しかし、実際に仕事をしてもらうと、上手くできない。特に、大手企業から中小企業に転職してきた社員の場合、企業全体の仕組みや風土も違うために、上手く仕事が回らないことなども多いようです。そういう人の場合、できるだけ早い段階で、自分に合った職場に行けるように、本採用を見送る方がお互いのためになるように思えますが、なかなか簡単ではありません。本採用拒否というのは、今の労働法のもとでは、事実上”解雇”と同じように扱われているからです。

新卒採用の場合は

本採用拒否の問題は、中途採用だけでなく、新卒採用でも問題になります。新卒の場合は、内々定から、内定、試用期間、本採用と段階を踏んでいきます。そして、現在の法律では、内々定の段階で採用を拒否する場合でも、企業側にはそれなりのペナルティーが課されます。まして、仮採用して試用期間が始まってしまえば、既に労働契約は発生していることになります。そこで、本採用を拒否するというのは、事実上解雇とほとんど変わらない扱いとされるのです。

【こちらもおすすめ】中小企業はどこから手をつける?はじめての新卒採用で押さえたい5つのポイント

試用期間の解雇は可能なのか

本採用拒否は、事実上解雇と同じように扱われるとすると、この問題は「期待外れのパフォーマンスを理由にして、解雇することができるか」という問題となります。現在の法律では、これは相当困難とされています。「採用した以上、その人に適した職場を探すのは会社の義務だ」といった考えが、根底にあるからです。

ただ、そうは言いましても、”本採用拒否の解雇”の方が、”本採用後の解雇”よりも、いくぶん基準が緩いのも事実です。また、解雇される従業員の方も、まだ本採用前ということで、解雇に対する納得感も違ってきます。その意味からすると、法的には解雇は難しいとしても、本採用拒否という形で解雇した方が、お互いのために望ましいことは間違いないところです。本採用拒否という形で解雇しないでおいて、その後やはり解雇したいという相談を受けることもよくあります。その場合は、はるかに解雇のハードルがあがっているのです。

不当解雇のリスクを避けるためにできること

一般には、解雇をするよりも、”退職勧告”を行う方が、会社のリスクは小さいといわれています。退職勧告の場合、余程強引な手段を使うのでない限り、違法とされる可能性はそれほど高くありません。そこで、本採用拒否の場合も粘り強く社員を説得することが有効です。社員も、試用期間を通じて自分が職場で力を発揮できていないことは、うすうすでも気が付いているでしょう。本採用拒否を“説得”することは、本採用後の社員を説得するよりも、かなり高い確率でうまくいくでしょう。この点においても、本採用する段階で、期待に添わない社員の問題にケリを付けておく方が望ましいのです。

【こちらもおすすめ】違法にならず解雇できる?今すぐにでも辞めてほしい「モンスター社員への対応」【所要期間や注意点も】

採用時に期待値ズレを起こさないための対応策

採用する際には、それまでの経歴を検討し、本人と話をしています。あとは、現実に上手くやっていけるかどうか、試用期間に試すことになります。こう考えると、採用時にできることは、ほとんどないように思えます。しかし、後から解雇の問題が起こる社員の場合、会社の方に聞いてみると、「採用時に不安があったが、何とかなると思い採用した」などという場合が非常に多いのです。それを考えると、採用時にさらに慎重になることはできるかもしれません。しかし、そんなこと言っていれば中小企業での採用は難しいという現実もあるでしょう。

ただ、少なくとも本人を仮採用する段階では、試用期間のパフォーマンスによっては、本採用できない場合もあることをよく説明し、納得してもらうことは大切です。法的にはあまり意味がないことですが、事実上これにより本採用拒否がしやすくなることも間違いないでしょう。

【こちらもおすすめ】面接で見抜くコツを伝授!弁護士事務所の経営者が実践する採用ポイント

有期契約での雇用

本採用拒否の問題を法的に解決するとするなら、まずは有期契約で採用することが考えられます。これなら事実上、一定期間、本人の能力を見ることができます。実際、このような形で採用している企業の話もよく聞きます。

一方で、有期契約は優秀な人を採用しづらいという問題があります。求職者は不安定な雇用を避ける傾向にあるからです。しかし、この問題をクリアするために採用時に本採用される可能性などを強調すると、「継続雇用の期待を持たせた」ということで、今度は法律により、有期契約でも更新拒否ができなくなるという問題が生じます。

まとめ

試用期間後の本採用拒否の問題に、”正解”と言えるものはありません。ある程度の”リスク”をとらないと、中小企業での採用などできないからです。しかし、“採用時に、本採用しないことがある旨を十分に説明する”、“本採用拒否の場合はできる限りの説得をする”、“どうしても採用できないと考えるなら、リスクがあっても早めに決断する”といった基本ルールを守ることで、少しでもリスクを減らすことはできるのです。

【こちらもおすすめ】違法にならず解雇できる?今すぐにでも辞めてほしい「モンスター社員への対応」【所要期間や注意点も】

*shimi, kouta, 8×10, keyphoto, Graphs, EKAKI / PIXTA(ピクスタ)

【オフィスの課題を見える化】働く環境診断「はたナビPro」お問い合わせはこちら