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弁護士事務所の経営者が思う採用

面接で見抜くコツを伝授!弁護士事務所の経営者が実践する採用ポイント

2022.03.11

採用の際、「きっとうちの会社で活躍してくれる」と感じて内定を出した人が、入社後に能力が発揮されなかったり、問題を起こしたりした経験があるかもしれません。

経営者にとってどのように人を採用するかは、優秀な人材を獲得し、事業を伸ばしていくために非常に重要な課題です。

そこで今回は、弁護士で経営者でもある筆者自身が、採用で気を付けていること、また、採用の際に知っていてほしいポイントをご紹介しましょう。

弁護士事務所の経営者が考える採用とは?

筆者の事務所では、会社の労働紛争事件をよく手掛けているので、横領やセクハラなどの問題の相談も受けます。このような相談を受けた際、“問題社員”を採用したときの履歴書など見せてもらうと、不可解な点があることが多いものです。

よくあるのが、転職の回数が非常に多いうえ、それぞれの会社の中で何をしていたのかが今一つ分からないといった経歴の方です。一概にこのような方が問題社員だというわけではありません。ただ、職務経歴書や履歴書で感じた疑問は、面接で深く掘り下げたり、人となりが分かる質問をすることで、慎重に判断していくことは重要でしょう。

また、筆者が採用する“弁護士”という職業は、司法試験に合格したうえで、司法修習といって実務経験も終わらせているので、能力はある程度保証されています。

そこで筆者の場合、面接では“やる気”と“コミュニケーション能力”を見ています。能力があったとしても、これらが欠如していると、入社後に問題になるケースがあるからです。

弁護士は特殊な職業にはなりますが、どんなケースでも採用時には、入社してほしい人材に求める能力・性質とその基準は、ある程度明確にしておいたほうがよいでしょう。

次から、弁護士として、経営者として、筆者が伝えたい中小企業での採用の4つのポイントをお伝えしましょう。

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1:実務関連の問題を出してみる

筆者の事務所では、採用のときには法律の問題を出します。しかし、その問題は、かなり実務を知らないと解けない難しいものです。

こちらとしても、別に法的に“正解”を求めているわけではありません。どれだけやる気を見せて問題に取り組むかと、それを通じてどうコミュニケーションを取ってくるのかを見るだけです。

弁護士の場合も基本はお客様商売ですから、依頼者とのコミュニケーション能力は必要不可欠です。

事務所の上司や同僚を満足させられない人が、さまざまな顧客を満足させられるわけがないので、採用時には性格とコミュニケーション能力を重視しているのです。

そういう場合、実務と関連する問題を出してみるという方法は、面接時によくある質疑応答では見抜けない部分が見えてくるのでおすすめです。

2:個性の強い候補者は慎重に判断する

筆者は採用にあたって、法的な能力を重視していたことがありました。人間的には相当個性が強いなと思う弁護士でも、あえて採用したこともあります。ただ、結果的に他の弁護士や裁判所、さらには顧問先その他のお客様からもクレームをいただいてしまいました。

「やはりあまりに個性的な弁護士は採用してはダメだな」と反省したものです。

もっとも、弁護士の場合は、お互いに上手くいかないとなると、比較的容易に事務所を辞めてもらうことができます。法的に厳密にいえば、一般の従業員と同じ立場なのですが、不法解雇などの問題で裁判などになったという事例は、聞いたことがありません。

一方、一般の会社では、一度採用すると解雇するのは法的に相当大変です。解雇無効の労働審判など何件も対応してきました。ひとたび採用した以上、簡単にはやめてもらえないという意味でも、一般の会社の場合は法律事務所よりも一層採用には気を付ける必要がありそうです。

能力が高い方のなかには、個性の強い方も多い印象があります。そのような方については、職場で他のメンバーと調和する能力があるか、業務上必要なコミュニケーションスキルがあるかといった点も慎重に見ていくべきでしょう。

3:インターンやアルバイトとして受け入れる

弁護士の採用活動でよくあるのが、司法修習生を受け入れて、修行してもらうというものです。現実に事務所で見習いのような形で働いてもらうことで、お互いに相性を見ることができます。「司法修習でお世話になった事務所に就職しました」という事例はかなりあるのです。

また、最近はロースクールに通っている学生が、インターンとして法律事務所でアルバイトをして、お互いに相性を見るような場合も出てきています。こういう形の採用は、確かに合理的に思えます。

飲食店などでの採用活動は、このやり方に似ているようです。まずはアルバイトとして働いてもらい、お互いに気に行ったら社員として入ってもらうという方式です。これはかなり上手くいきそうです。もっとも、飲食店の場合は、最初から正社員を募集するというやり方で、良い人材を採るのが容易でないということもありそうです。

特に新卒社員を採用したいケースで、相性や適正を面接で見抜く自信がない場合は、学生のうちからインターンとして採用するというのも一手かもしれません。

4:期間限定の社員として採用する

多くの会社が“試用期間”を設けています。これは、まずは試しに働いてもらうということです。例えば、最初の6か月は試用期間として、そこで問題がなければ本採用にするといった形です。

しかし、このやり方ですと、たとえ試用期間であっても、雇用契約は生じていますので、簡単に「本採用はしません」ということはできません。現実問題として、本採用拒否された人が「不当解雇」として法的対応を取ってきた事案を何件も見てきました。

そこで、最初は期間限定の社員として採用して、それで問題が無ければ正社員として採用するというやり方を取っている会社もあります。これはこれで合理的な考え方です。

リスクとしては、期間限定でしか雇ってもらえないとなると、優秀な人材が集まりにくい場合もあります。また、法律的にも、将来の本採用を期待させるようなことを言っていると、期間が終了しても簡単に契約を終わらせることができなくなる可能性があります。

一筋縄ではいかないかもしれませんが、この辺りのリスクを許容できるのであれば、期間限定の社員として採用することを検討してみるとよいでしょう。

【こちらの記事も】弁護士事務所の経営者が考えるメンバー育成とは?

最後に

中小企業での採用は、求人に対してなかなか応募が集まらない状況で、新たな人材を獲得しなくてはならないという課題もあるでしょう。

そんななか採用した人が、後から問題を起こしたからといって、さかのぼって「なんであんな人を採用したの?」なんて言われたらたまったものではないというのもよく分かります。

ただ、少なくとも問題社員になりうる可能性がないか慎重に見極めることは必要かなと思うのです。少しでも参考になれば幸いです。

* artswai、takeuchi masato、EKAKI / PIXTA(ピクスタ)