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メンバー育成

「言われたことしかやらない…」の不満はおかしい!弁護士事務所の経営者が考えるメンバー育成とは?

2021.12.10

筆者は弁護士になる前に、会社員として15年ほど働いていました。まずは一般社員として、叱られたり褒められたりすることを経験し、その後はマネージャーとして自分が部下を育てる立場になりました。現在は経営者弁護士として、新人を育てることが期待されてきています。自分が指導される立場として、これはやられても意味がないと思ったことや、こうしたら上手くいったということなどはあります。

しかしながら、どうすれば部下が育つかなど、未だに暗中模索の状態です。ただ、そもそもメンバーを育てると言っても、どういう風に育てればよいのか自体が必ずしも明確ではないのです。

本稿では、弁護士事務所の経営者である筆者が、これまでの経験から得たメンバー育成の考えを紹介します。こんな考えもあるのかと少しでも参考になればと思います。

メンバー育成の目標をどうとらえる?

「言われたことしかやらない!」の不満はおかしい

筆者が新卒社員として会社に入った30年以上前にも、「最近の若手は、言われたことしかやらない」「自分で考えて行動しない」なんて言う苦情や説教を聞いてきました。それから30年経って、当時言われていた人たちが上司の立場になっても、今の若い人たちに全く同じような批判をしているようです。いつの時代でも、「若い人は言われたことしかできない」と不満を持たれているのでしょう。

しかし、筆者は「これはおかしい!」と新入社員のころから思っていました。そもそも、言われたことができればメンバーとしては十分です。早くできればさらによい。これだけでトップ10%に入れる実力だと信じています。そもそも、「言われたことしかやらない」なんて苦情を言っている人は、満足な指示ができない欠陥上司としか思えないのです。

そもそもメンバーを教育して伸ばすなんてできないという意見もあるようです。しかし、それはかなり高度な基準に達するようにさせる方法の話ではないでしょうか? 上司としてのメンバー育成の目標を、“指示したことは素早くやってもらうにはどうするか”程度にしておけば、指導の仕方でかなりの差が出てくることも間違いないように思えます。

指示したことをやってもらうために

指示したことをしっかりとやってもらうには、褒めることが大切なのは間違いないと筆者は考えています。日本海軍の名将・山本五十六元帥に「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」という言葉があります。やはり最後は褒めるのが大切みたいです。

しかし、それ以前の問題として、山本元帥も「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ」ることが大切だと指摘しています。メンバーが仕事をできない一番の原因は、どのように仕事を進めてよいのか、どのくらいの“でき”が求められているのかなど、よく分かっていないことが一番の原因のはずです。

それを解決するには、まずはやって見せることに続いて言葉で指導し、やらせてみせてからフィードバックしてあげるしかないはずです。その後、うまくできたら褒めてあげればさらによくなるということでしょう。

育成に苦戦したメンバー

いくら教えてもできないメンバー

筆者も、“いくら教えても指示したことをできないメンバー”を指導した経験があります。どうすればやってくれるのかと頭を抱えていました。ただ、『銀座まるかん』の斎藤一人先生は自身の著書で、「同じ人に同じことを100回、怒らないで教えることが経営者の仕事だ」と言っていました。

さすがに偉い人は違うと心から感動して、自分もマネをしようと思ったのですが、3回以上同じ事を言うとだんだん怒りがわいてきます。ただ、怒ったからよくなったという例は、少なくとも自分では実感していません。一方、自分が新人の頃、ろくに教えてもらえないのに怒られたという恨みはいまだに残っています。

叱って延ばす教育をできる人もいるとは思いますが、普通の人にはかなり難しいように思えるのです。いくら教えてもできないメンバーには、可能な限り、何度でも同じことを怒らずに指導し続けるということが重要といえるでしょう。それでも難しい場合には、本稿最後に紹介する最終手段を講じるようにしています。

仕事が遅いメンバー

60点の“でき”でよいからすぐに欲しいのに、納期を守らないメンバーについても、思わず叱りたくなることがあります。とりあえずのものでよいので、早く出してもらった方が、上司としてはありがたいものです。早ければ、いくらでも修正可能なのに、ぎりぎりで出されると対応が難しくなります。

早くするように叱りたくなりますが、これまた叱ってもあまりうまくいかないように感じています。うちの事務所では、「仕事は試験と同じだ。試験は制限時間内で行うものであるように、仕事も制限時間内でやるものだ」と最初から教えるようにしています。こんな風に日頃から“教えて”あげると、かなり納期は意識するようになります。

この辺は、もともと弁護士は“試験”を勝ち抜いてきた人たちですから、制限時間の回答と相性が良いのかもしれません。

一昔前の叱りはパワハラになる可能性が

筆者が会社で新人だった30年以上前の時代には、強く叱る上司はよくいました。本当に、他の人の目の前で、1時間以上怒鳴りつけているような上司が普通にいたのです。ただ、現在はこういうことをすると、直ぐにパワハラの問題が生じてしまいます。

実際、筆者の事務所で扱うパワハラの事例でも、昔ならごくごく当たり前の“強い指導”がパワハラとして認定されるようなことがあります。「やる気がないならもう帰れ!」なんて、昔は普通に言われていたセリフが、今では間違いなくパワハラとなりえます。その意味でも、部下を叱ることには、細心の注意が必要となるのです。

【こちらの記事も】パワハラ事例集はこちら!パワハラの定義・具体例・対策

うまくいかない場合の筆者の最終手段は

怒らずにマネジメントしたいと考えても、最終的に上手くいかないことはあります。こういう時には、筆者は三国志に出て来る厳顔の話を思い出すのです。厳顔というのは、張飛と闘い、敗れた武将ですね。捕虜になった厳顔に対して張飛が、「なぜ逆らったのか」と怒ったところ、平然として言い返した人です。「気に入らないなら首を刎ねればよいではないか。なぜ怒る必要がある?」と。

筆者の場合も、これはどうにもダメだなと思ったら、怒るのではなく、“首”にする方向で検討します。もちろん、従業員を解雇するのは、日本の労働法上非常にハードルが高いです。それでも、どうしてもダメならやるしかないと筆者は考えていますし、現実に行ってきました。メンバーにとっても、評価されない場所よりも、より活躍できる場所で働いたほうが今後のためになると考えています。

逆に言えば、そこまでするほどのことではないというなら、何度でも同じことを怒らずに指導し続けることが大切に思えるのです。

【こちらの記事も】問題社員を解雇できないか?不当解雇になるケースと実現する要件とは

最後に

こんな考えもあるのかということで、少しでも参考になれば幸いです。

パワハラの問題や、従業員解雇のときには、もちろん専門家である弁護士に相談して欲しいと、最後に宣伝をして、本稿を終わらせていただきます。

* mits、Greyscale、プラナ / PIXTA(ピクスタ)