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経営者

有期契約社員の解雇はできるのか?実戦的な対応法を弁護士が解説

2023.02.14

“働かないおじさん”や“働かない管理職”の問題を、最近よく耳にします。これらはつまり、やる気が無かったり、能力が無かったりする“正社員”の問題です。こういう人たちに対して、どのように対処するかは、難しい問題です。その一方、有期契約社員については、“働かない”や“能力がない”といった問題はあまり聞きません。弁護士である筆者の事務所にも、有期契約社員に関してそのような相談を会社から受けたことはありませんでした。”有期契約社員の問題社員”の場合、“仕事ができない”や“働かない”というよりも、「人間関係が上手くできない」「他の社員と衝突してしまう……」といった問題の相談を受けてきました。「このままだと会社の雰囲気自体が悪くなる。何とか早く辞めてもらえないか」といった相談です。このようなときにどうすれば良いのか、実戦的な解決方法を考えていきたいと思います。

「契約社員」を解雇できるのか

「有期契約社員が、他の社員と問題を起こすので辞めさせてほしい」という相談を受けると、基本的には次のように回答しています。「有期契約社員については、その期間中に解雇するのは、法的には非常に難しいです。それなら、次回の契約を更新しない方向で考えてみてはどうでしょうか」

これは法律的には正しいアドバイスだと思います。有期契約社員は、通常3か月から1年程度の期間の雇用契約です。それなら、その期間くらい我慢した方が良いのではということになります。裁判所もそういう気持ちがあるのでしょう。いわゆる正社員よりも、”雇用期間の定めがない有期契約社員の解雇”は、さらに難しいものとなっています。ただ、会社としては、「仕事ができないくらいならまだしも、積極的に会社に害を与える者を、会社に置いておくことはできない」と考えるようです。

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解雇できないならどうするのか

法律的には、解雇できない可能性が高いことは間違いありません。ただ、それでもどうしても辞めてほしい場合、まずは”退職勧奨”を行い、それでも難しい場合に思い切って解雇してしまうのも方法だと考えています。確かに解雇は難しいでしょう。有期契約従業員が、裁判で争ってきたら、「契約期間が終わるまでは労働契約は継続する」と判断される可能性はあります。ただ、正社員の場合と違い、有期契約ですから、せいぜい3か月から1年程度の期間です。そのくらいのリスクなら、会社としても取ることができます。逆に有期契約社員の側からすれば、争ってもそれほどの金額を取れないなら、一定の金額を貰って、退職勧奨に応じようと考える可能性も高いといえるのです。もっとも、この場合でも注意が必要な点が1つあります。そもそも有期契約社員の場合、”契約更新を拒絶できない”場合もあるということです。

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更新拒絶ができない場合

有期契約ですから、その期間が終われば契約は終了するのが当然です。しかし、労働契約に関しては、法律によってこの原則に制限がかけられています。簡単に言うと、「”更新を拒絶されない”という合理的な期待を有期契約社員に与えていたような場合には、会社は更新拒絶できない」というものです。そして、契約社員に対して”合理的な期待”を与えたとされる要件は、非常にゆるく解釈されてきています。

筆者の事務所で対応した事例でも、会社側が「更新もあります」と言っただけで、更新の合理的な期待を持たせたと、相手方の弁護士に主張されました。「そんなこと信じられない」と思う一方、裁判所も同じような考えをすることも否定できません。更に、有期契約社員の更新拒絶ができないとその社員を5年間雇い続けることになり、法律の規定でそのまま正社員にしなくてはなりません。その意味でも、これは会社にとっては大変怖い規定でしょう。

「更新拒絶」を確実にするための方策

更新拒絶を確実にするには、たとえば「当社では有期契約社員の更新はしません。2年後には必ず辞めてもらいます」といった形で採用することです。そして実際に、たとえどんなに優秀な契約社員でも、一律に更新拒絶するということは考えられます。ここまですれば、更新拒絶は認められるでしょう。

しかし、そのような状況では、そもそもやる気のある優秀な社員は応募してこないでしょう。すでに契約している契約社員のモチベーションも下がりそうです。法的リスクを軽減するためにだけ、社員のやる気をそぐような方策はやはり取れません。

現実的な解決策

法律も裁判所も、有期契約社員を保護する方向で動いています。そのため、どうしても会社としてはリスクが残ります。それでも有期契約の最初の期間は短めにして、予め本人に対して、問題があれば契約更新しないこともあるのだとしっかりと説明することにより、かなりのリスクを抑えることができると考えています。

また、有期契約社員の場合、どうしても採用基準が甘くなることは間違いありません。そのため、少なくともこれまでの経歴から判断して”他の社員とうまくやっていける人”なのかを厳しくチェックする必要があります。

まとめ

有期契約社員の更新拒絶の方が、正社員の解雇はもとより、試用期間後の本採用拒否よりも、ゆるい要件で行えることは間違いありません。しかし、それだからといって「何とでもなる」と安易に考えてはいけないということです。油断せずに適切に有期契約社員を雇うことで、将来の戦力を効率的に手に入れることもできると、前向きに考えるのが会社の正しい在り方ではないでしょうか。

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*yu_photo, Luce, Komaer, kikuo, Ushico / PIXTA(ピクスタ)

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