人事ガチャが原因で退職?社員が望まない配属には要注意!のわけ
昨今、入社後の配属先や人事異動による異動先の部署に不満を持つ社員の“青い鳥症候群”“人事ガチャ”“配属ガチャ”という言葉があちこちで聞かれるようになりました。なかには、配属先に不満を抱き退職するケースもあるため、会社にとって無視できない状況になっています。今回は、希望していない配置転換を未然に防ぐ方法や、配置転換後に退職する危険性を防ぐための対策法について解説していきましょう。
目次
配属希望が通らず辞めてしまう…?
少子高齢化の影響に伴う労働力不足が問題視されるなか、規模や業種に関わらず採用活動が思うように進まず、悩んでいる企業は多くみられます。そのような状況で、企業の理想にマッチする人材の確保・配属や社員の配置転換を行ったのに「やりたかった仕事ではなかった」「配属先に不満があった」という理由で辞めてしまうケースも少なくありません。
2022年にi-plug(大阪市)が新卒者を対象に実施したが実施した「配属先の希望に関するアンケート」で、「配属先の希望が通らなかった場合、転職を考えるかどうか」という質問に対して、約半数以上が「転職を考える」と回答しました。一方で、希望の配属先になるために学生が行った対策は「特になにもしない」が36.4%、「人事に伝えた」が33.9%でした。配属希望が叶わない場合に一人でストレスを抱えてしまう学生も一定数いるようです。
会社側としては、「せっかく採用したのに」「せっかくここまで育てたのに……」という無念な思いに加え、他の社員のモチベーションにも影響しかねない由々しき事態でしょう。このようなケースを防ぐためには、どのように対応すればよいのでしょうか。
【参考】配属先の希望に関するアンケート調査/i-plug(大阪市)
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定年まで雇い続ける終身雇用制が当たり前であった時代は過ぎ、「自分のやりたい仕事をやる」ために働く社員が増加しました。
前述のアンケートによると、希望の配属が叶わなかった場合に転職を考える割合は、前年比14.7ポイント増加しているようです。つまり、若い世代は、会社名を重視して働く“就社”という価値観ではなく、仕事内容を重視して働く“就職”への思いが強まっている傾向にあるようです。その結果、やりたい仕事ができないなら会社を辞めてしまうという可能性が大きくなっています。
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企業側でやるべき事前対応3つ
社員が望まない配属や配置転換を行わないため、会社が対応すべき内容について確認していきましょう。
①人事担当者が責任を再認識する
社内で社員の配属や異動内容を司る部署は人事部になります。人事部の担当者は、自分たちが行う人材配置が会社の将来を左右するものであることを、改めて認識し直すということから始めていきましょう。新たに入社してくる社員や、人事異動、配置転換により新たな部署に配属されてくる社員は、やる気や不安を感じているはずです。モチベーションを維持させ、不安を解消できるようなサポートも人事担当者の役割であることを肝に銘じておきましょう。
②配属のミスマッチの要因を把握する
望まない部署に社員が配属されてしまう原因は、大きく2つに分けられます。主に人事担当者が“社員の特性や要望を把握していない”場合や、“受け入れ先の部署の仕事内容や雰囲気を把握していない”場合です。前者は、採用時や人事考課の面談時に社員の現状や将来に向けての目標や要望を入念にヒアリングしておくことで避けることが可能です。一方、後者のケースについては、受け入れ先の部署が社員を受け入れる準備ができているか、どのようなサポート体制を敷いていくか、どのような仕事から任せていくかを担当者が把握することで避けることができるでしょう。
③配属前に面談の機会を設ける
①②で述べた通り、配属・配置のミスマッチを防ぐキーマンとなるのは人事担当者になります。この人事担当者が、配属される社員と受け入れ先の部署の間に立ち、橋渡しをすることでスムーズな配属・配置が成り立つわけです。そのため、配属前の面談は社員が新たな部署で働いていくためには非常に重要なポイントとなります。
新入社員の場合は、内定後から入社までの期間に人事担当者と配属先予定の部署担当者が同席した面談を行いましょう。実際の業務内容の説明を行うことで、社員が不安や不満を抱えたまま入社日を迎えないようにしておきます。人事異動や配置転換の場合も、必ず内示後から配属日までの間に社員本人、人事担当者、配属先の部署担当者の三者で面談を行い、社員が自分の意見を忌憚なく伝えることができるような場を設けるようにしましょう。
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望まぬ配置を理由とした退職を防ぐためには
ここまでは、社員が望まない配属や配置を防ぐための対応について述べてきました。しかし、会社の経営上どうしても社員が望まない部署に配属・配置されるケースが生じる場合もあります。そのような場合でも、モチベーションを持って取り組んでもらうために、以下を行うようにしましょう。
①配属の理由を説明する
通常、社員の配属先は社員自身の能力や適正、本人の希望、そして会社側の人事計画などに沿って実施されますが、なかには社員自身が希望しない部署に配属されるケースもあります。このような場合でも、必ずすべての社員が不満を抱いて辞めてしまうわけではありません。配属された部署に適応し、さらなるレベルアップを図ろうと努力をする社員もいるでしょう。配属時に、社員に対して「なぜこの部署への配属が決まったか」「どのようなことを(社員に対して)期待しているか」といった、配属の理由と将来の展望を伝えておくことが重要になります。配属理由が明確になることで、社員に新たな目標が生まれるきっかけの一つになります。
②フォロー体制の徹底
新たな部署へ配属されてきた社員は、どの社員も多かれ少なかれ「この部署でやっていけるのか」という不安を抱えています。このような不安を解消するためには、受け入れ先となる部署が連携してコミュニケーションを取り、早く配属先になじめるようなフォローを行うことが必須です。同僚や上司たちと交流するための機会を設けるようにしましょう。
③定期的な社員教育・キャリア形成の確立
社員として働く限り、部署移動は訪れるものです。新たな配属先でモチベーションを維持したまま働くためには、社員一人ひとりのキャリア形成を図ることが重要なポイントになります。定期的に上長と面談を行い、本人がどのように成長をしていきたいのか、将来はどのような仕事をしたいのかを明確にしてキャリアプランをつくっていきましょう。そのためにも経営者が率先して、会社全体もしくは部署単位で定期的に社員教育の機会を設け、社員が会社とともに成長していけるような環境づくりを心がけることも重要です。
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* EKAKI, Luce,タカス / PIXTA(ピクスタ)