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利害だけの関係はもったいない…?顧客から信頼を得るコミュニケーション術

2023.07.28

先日、経営コンサルティングファームで3~5年目くらいの若手の皆さんに、「経営コンサルとしてどのように仕事を受注していくのか」「どうやったらお客様の信頼を得られるのか」といった質問をいただきました。実際にコンサルティングの現場にいても、クライアントとの関係構築や案件の受注といった場面に参加できることはなく、お客様と信頼関係を維持発展させていく方法が知りたいとのことです。

そこで今回は、顧客との信頼関係を構築する方法をご紹介します。経営者のみなさまには、自社のパートナーであるコンサルタントについて一考する指標としていただくとともに、若手の営業育成の参考にしていただければ幸いです。

信頼にはどういった恩恵があるのか

筆者自身も多くの関係構築、マーケティング、営業といったさまざまな切り口で多くの企業の活動を拝見してきました。仕事が成立している背景を大まかにいうと「信頼関係をベースに仕事の依頼」と「需要があって利害関係が一致した取引」の2つのパターンに分けられます。

ただ、経営者同士または担当者同士の信頼関係がしっかり成立していることで、取引の継続性が高まることは間違いないでしょう。需要がなくなったため一時終息したとしても、タイミングや機会により再開することも大いにあります。ここまで整理してみると、筆者自身が一番信頼関係の恩恵に預かっているのは“ご紹介”ではないかと思います。こちらが心から信頼している現在・過去のお客様たちから信頼をいただけていると、何者にも替え難いご紹介があります。筆者の今の仕事の根幹を成しているのは、まさにご紹介ネットワークであることは議論の余地がありません。

まず、信用関係を得るための基本な作法

まず押さえておきたい基本的な作法についてお話しします。以前紹介した“顧客ニーズの捉え方”の記事に沿って、顧客の顔が見えているBtoBの場合での営業活動の発展段階を以下のように定義してみました。
顧客ニーズの捉え方とは?BtoBの「御用聞き営業」から抜け出す方法【ノウハウまとめ】

レベル1:自分が(会社が)売りたいものを提案する
レベル2:顧客の期待通りに欲しいものを提案する
レベル3:顧客が期待していた以上のものを提案する

残念な営業スタイルではありますが、レベル2のように振る舞っていながら中身を紐解くと、レベル1の提案に過ぎないコミュニケーションも経験的に少なくありません。お客様の事業をできる限り深く理解し、その意義に共感した上で、自分が提供できるサービス・価値がお客様の事業にプラスの効果をもたらすのか、感覚的な表し方ではなく財務的価値で表現できることが理想です。

ここまでして初めて、「自社事業のことを親身になって考えてくれている」とご認識いただくことを期待できます。ここまでできてないのであれば、信用されているというより利害関係の一致でお付き合いできているだけという覚悟が必要です。

「信用」される段階から「信頼」関係へ

言葉遊びに聞こえるかも知れませんが、“信用されること”と“信頼されること”は微妙に意味が異なります。“信じて用いられること”と“頼りにしてもらえること”の間には大きなハードルがあるのです。

信用されることにより、いろいろな仕事を発注していただけます。ですが、筆者のような経営コンサルタントの場合、作業や発注のご依頼をいただくだけではコンサルタントとして受け入れられていることにはなりません。

経営コンサルタントにおける本質的な信頼とは

もう一歩進んで、経営者自身で解決策が導き出せないときや判断がつかないとき、方向性は定まっていても具体的な進め方がイメージできないときなどに、「あの人ならなんとかしてくれる」と期待を持ってもらうことです。

具体的な作業指示ではなく、解決への方策や支援といった抽象的なレベルでの道筋をつけるところから依頼してもらえるようにならなければ、役目を果たしていることにはならないのです。単に作業内容が明確になっているようなご依頼は、専門職を派遣してもらうか外部業者に委託してしまえば解決することができます。

信頼を勝ち取る方法とは

では、どうすればそこまでの信頼を得ることができるでしょうか。これは以前紹介した“人脈形成”についての記事と重複しますが、相手方に当方の価値観や仕事の進め方について共感してもらうこと、その上で必ず先方の期待から外れたことはしない人物であるという確信を持ってもらう必要があります。
【経営コンサル直伝】経営者が人脈を広げるための最新の方法5つとコツ

そのためには、信用されている段階から実績を重ねることに合わせ、日常のコミュニケーションの中から、相手の価値観・思想、仕事や場面における目的などを深く理解するよう務めることが重要です。そして、仕事の結果や報連相のスタイルにも、相手方が「自分の意を汲んでしっかりと進めてくれている」と感じてもらうための細々とした手当が必要になるでしょう。

この細かい留意ポイントの言及は別の機会に譲りますが、日々の実績を積み上げていき、「あの人のすることは必ず私のためになる」という段階を目指すことで長期的かつ広い範囲で仕事をご一緒することが可能になります。

ただ、絶対に外してはいけないポイントがありますのでご紹介しておきます。

  1. 目指したいゴールや問題が解決された状態を具体的に確認しておくこと
  2. 使ってよいコスト、資源(人材や資材、環境など)、期間を明確にしておくこと
  3. コスト、期間については目指したいターゲットと許容できる限界の両方を確認しておくこと
  4. 着手する前に考えうるリスクおよびリスクが実現してしまった場合の対応策を明示しておくこと
  5. どのようなやり方で作業を進めるか、相手によって求める細かさが違うことを配慮して理解しておいてもらうこと

また、定期的に進捗状況は報告することや、社内の関係者の手柄は丁寧に共有することなども重要なポイントです。

経営コンサルタント直伝!信頼獲得の妙手とは

これを書いてよいものか少し逡巡しましたが、経営コンサルタントという職業は突き詰めると社会には必要がない職業です。しかし、経営者や責任者の方にとって、期間内で成し遂げるには、自らのスキルや人材だとどうしても賄えないという事態が発生することがあります。そのようなとき、特定のスキルを持ったコンサルタントがお手伝いできるのです。

経営者にとって、高度な職務は外部を頼るより社内でこなしたいと思うものであるため、我々コンサルタントが仕事をいただき続けるためには、先項まで紹介したような信頼を得る必要がありますが、もっとも難しいのは最初にお会いしてから仕事を継続的にいただけるまでの“信頼を醸成する期間”です。外部のコンサルタントに社内の重要な仕事を任せるということは、簡単に判断がつかなくて当たり前です。

そんなときに筆者が取る手段は、ある程度結果が見えるところまで“無料でコンサルティングを提供すること”です。先方にとって、内容に納得がいかなければそこで仕事を終えればよく、我々としてもご契約がなければ力不足であったことを認めざるを得ないわけです。簡単にいえば、コンサルティングを無料トライアルとして1セット提供するイメージです。

正直、無料コンサルティングをそこまでしっかり提供すると、工数や経費的負担は軽くありません。しかし、先方にとっては形がないものだけになかなか信頼することが難しい、当方にとっては遂行する自信がある、そんな場合はこの手が効いてきます。一回購入すればニーズを充足してしまうような製品・サービスにこの手段は使えませんが、仕事の進め方についてのスキルを提供するコンサルティングという職業だからこそ通じる手段といえるでしょう。

今回は、経営コンサルタント寄りの立場から対経営者を意識した内容に偏ってしまいましたが、ビジネス対ビジネスの関係において大きく齟齬はないと考えます。ご参考にしていただけましたら幸いです。

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