労働実務事例
[ 質問 ]
原材料の調達ができなくなり、工場を一時閉鎖したのですが、再開の目処がたちました。休業期間中の遅れを取り戻すために1年単位変形労働時間制の協定を破棄・再締結し、労働時間や労働日数を組み直したいのですが、可能でしょうか。
和歌山・E社
[ お答え ]
1年単位の変形労働時間制とは、事業場の労使協定により、1カ月を超え1年以内の一定期間を平均して1週間あたりの労働時間が40時間を超えない定めをした場合には、特定された週において40時間を、特定された日において8時間を超えて労働させることができる仕組みです。
業務の繁閑時期に応じて、1年単位の変形労働時間制の形もさまざまなものが考えられます。たとえば、1年間を6カ月ずつ前半と後半の2つに分けて、繁忙期である前半の各月の労働時間を週45時間と設定し、以降を35時間と設定することも可能です。平均すれば週40時間となるよう労働日数を調整し、労使協定の締結など他の要件を満たせば、協定で定められた範囲内で労働させる限りは割増賃金を支払う義務は生じません。
仮にご質問にあるような変形労働時間制の再締結が可能であれば、例示したように再度前半の労働時間が多い協定を締結することが可能になってしまいます。労働者はほぼ1年間、毎週40時間を超える長時間の「所定労働時間」に服さなければならなくなり、法の趣旨を鑑みると認められるものではありません。
厚生労働省労働基準局編「労働基準法」では、「1年単位の変形労働時間制は、対象期間を単位として使用されるものであるので、労使の合意によって対象期間の途中でその適用を中止することはできないものと解され、少なくともその対象期間中は、その適用が継続される」と述べています。
労基法第32条の4の2では、1年変形労働時間制に関する賃金清算の方法を定めています。1年の途中で変形制から離脱する場合、所定労働時間の平均が週40時間を超えた部分については、割増賃金の追加支払いが必要になります。しかし、このような形で変形制を中途終了できるのは、途中退職・採用された者などに限られます。事業場全体で、賃金清算することにより1年変形労働時間制をご破算にすることは認められません。
所定労働時間についても、対象期間中に設定を変えることはできません。しかし、時間外労働や休日労働については、36協定の範囲内で、労働時間を延長させることは可能です。
今後、どうしても労働時間の延長や労働日数の増加が避けられないのであれば、対象期間中は36協定で定めた限度時間内で対処しなければなりません。
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