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商標の「使用」と不使用取消

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報

石下雅樹法律・特許事務所 第52号 2010-08-04
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1 今回の判例  商標の「使用」と不使用取消
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知財高裁平成21年10月8日判決

 X社は、時計、貴金属を含む第14類の複数の商品を指定商品と
する「DEEP SEA」という登録商標を有していました。これ
に対し、Y社が、この商標について、不使用取消審判を申し立てま
した。この判決は、不使用取消を認めた特許庁の審決に対して提起
された審決取消訴訟にかかるものです。

 X社の当該商標の使用態様は、腕時計(ダイバーズウォッチ)の
文字盤に、中心から上部に「ELGIN INTERNATIONA
L」の文字が表され、さらに文字盤の中心下部から、順に「WAT
ER RESISTANT」「AUTOMATIC DEEPSE
A」「660ft=200M」「DATE」と4段で表示され、こ
のうち、「AUTOMATIC DEEPSEA」の文字が、他の
部分とは異なり赤色で表示されている、というものでした。

 特許庁は、以下の理由で、不使用取消を認めました。

● DEEPSEA」の欧文字は、いずれも腕時計の機能及び主な
仕様表示であることを容易に認識させる「WATER RESIS
TANT」、「AUTOMATIC」、「660ft=200M」、
「DATE」とともに表示されている。

● 「AUTOMATIC DEEPSEA」の後半の「DEEP
SEA」の文字は、その下段の「660ft=200M」とあいま
って、水深200メートルの深海においても使用できる機能及び主
な仕様表示として認識される。

● 以上から、腕時計に表示された「DEEPSEA」の使用は、
商標の本質的機能である自他商品識別機能を果たし得ないものであ
って、商標法上の商標としての使用ということはできない。


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2 裁判所の判断
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 知財高裁は、以下のように判断し、X社が「DEEP SEA」
商標として使用していた事実を認め、審決を取り消す判決を下し
ました。

● 「DEEPSEA」については、次行の「660ft=200
M」の表示とあいまって、需要者において、水深200メートルの
深海においても使用できる耐水性を有する機能を表示するものと理
解し得る可能性がある。

● しかし、「DEEPSEA」の語は、深い水深の場所でも使用
できる腕時計の品質を表示する語として一般的に使用されているも
のではない。かえって、「深海」の意味を示す用語として、需要者
において、深海や深い海の神秘的なイメージをも与えていると理解
することができる。

● このことは需要者に対して、「DEEPSEA」の表示が、X
社商品に自他商品識別機能を果たす態様で用いるものとして付され
ているということができる。

● 商品に付された1つの標章が常に1つの機能しか果たさないと
解すべき理由はなく、「DEEPSEA」の表示が耐水性機能を表
示すると理解し得るとしても、同時に、自他商品を識別させるため
に付されている商標でもあると解することができる。

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3 解説
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(1)商標の不使用取消審判

 ある登録商標が一定期間(3年間)使用されていない場合、第三者
は、これを理由として、特許庁に対し、その登録商標の取消の審判
を請求することができます。これを、不使用取消審判といいます。

 商標は、特許等と異なり、商標そのものに価値があるわけではあ
りません。むしろ、商標が事業活動に使われ、その商標に信用が化
体し、他の商品と識別されるようになることで初めて価値が生じる
ことになります。他方、現実に使われていない商標には価値が乏し
い上に、現実に使用したいと思う他者がこれと同一又は類似する商
標権を取得できないといった不都合があります。そのような不都合
を解消するための制度が不使用取消審判です。


(2)不使用取消審判の概要

 不使用取消審判の概要は次のとおりです。

 A 審判を請求できる人
  請求が権利の濫用と判断される場合を除き、利害関係人に限ら
ず、誰でも請求することができます。

 B 取消効果の遡及
 ある登録商標が不使用だと判断された場合、取消の効果は、審判
の日から将来にわたってのみ生じるものではなく、審判請求の登録
日まで遡ります。

 C 駆け込み使用の防止
  先ほど述べたとおり、不使用取消審判が認められるためには、
登録商標が過去3年間使用されていないことが必要で、逆にいえば商
標権者は過去3年間のいずれかの時点で使用したことを証明すれば不
使用取消を免れることができます。
 しかし、商標法は「駆け込み使用」では、不使用取消審判を免れ
るための「使用」とは認められないことを定めています。つまり、
この登録商標の「使用」が不使用取消審判請求前3か月以内の使用で
あり、その使用がその審判の請求がされることを知った後であるこ
とを請求人が証明した場合には、正当な理由がない限り、この「使
用」は、不使用取消審判を免れる「使用」とは認められないことに
なります。


(2)商標の「使用」とは

 以上のとおり、商標の不使用取消審判においては、商標権者は、
その商標を使用していたことを証明する必要があります。それで、
商標権者は、商標法が意味するところの「使用」をしている必要が
あり、この「商標の使用」の意味が問題となります。

 一般に、商標の本質的機能は、自他商品識別機能と商品の品質保
証機能であると言われています。それで、ある商標が商品に関して
使用されていても、客観的に見てこれら商標の本質的機能である自
他商品識別機能及び商品の品質保証機能を有せず、また、その主観
的意図からしても商品の出所を表示する目的をもって表示されたも
のではないと認められれば、その使用は、商標法上の「商標の使用
」とはいえない、ということになります。


(3)商標権の保全と商標の使用態様

 今回の判例の事案では、商標権者であるX社による「DEEPS
EA」の使用は、裁判所によって、辛うじて商標法上の「商標の使
用」と判断されました。しかし、特許庁では不使用取消の判断がな
されたとおり、今回の使用は、別の見方(商標法上の使用とはいえ
ないという見方)もありえる、やや危うい使用態様であった、とい
うこともできると思われます。

 ある商標商標法上の「使用」といえるか否かの判断は、ケース
によっては困難なものもあります。そのことは、この点に関する判
例が少なくないことからもいえます。自社にとって重要な商標であ
れば、具体的な商品への使用に関しては、その商標がきちんと保護
されるように万全を期すべく、デザイン段階から、弁理士や知的財
産を重点的に取り扱う弁護士へのアドバイスを求め、商標法上の使
用といえるか否かを検討する必要もあるのではないかと思われます。


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