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孤児著作物(こじちょさくぶつ)

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    わかっちゃう! 知的財産用語    No.271

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こんにちは!  わかっちゃう弁理士 西川幸慶です。


 ☆ 本日の知的財産用語


 「孤児著作物(こじちょさくぶつ)」


 著作権者が不明であったり、著作権者の連絡先が不明な著作物のこ
とです。

「孤児作品」や「オーファン・ワークス(orphan works)」と呼ば
れることもあります。


(1)
 特許権や商標権のような産業財産権は登録主義のため、特許庁の登
録原簿を確認すれば特許権者,商標権者やその住所を知ることができ
ます。
 権利の譲渡があった場合も原簿に記録されているので現在の権
利者を知ることができますし、権利の消滅を確認することもできます。


 それに対して著作権については登録主義ではなく、著作物の完成に
より権利が発生するため誰が著作権者なのかわからないことがありま
す。


 著作者が有名人ではない場合はもちろんのこと、有名な作家でもペ
ンネームを使い分けて作品を発表しているような場合、著作者が誰な
のか特定できないことがあります。


 また、著作者が わかっていても古い著作物になると著作者の消息
がわからなくなり、存命中なのか亡くなっているのかさえ確認できな
い場合もあります。没年がわからないと、著作権が消滅しているのか
どうかもはっきりしません。


 また、著作権は譲渡可能な財産権であり、譲渡により著作権者が変
わります。そのため、現時点での著作権者が誰なのか不明となること
があります。たとえば、著作権者である法人が倒産し、その著作権の
譲渡先が不明となるようなこともあります。



(2)
 他人の著作物を利用する場合には、原則として著作権者に利用の許
可を求める必要があります。しかしながら「孤児著作物」については、
利用の許可を求めたくても著作権者に連絡をとることができません。


 そのような場合でも無断で利用すると著作権侵害となってしまうこ
とがあるので、勝手に利用してよいということにはなりません。結果
として、孤児著作物の利用ができないという事態になってしまいます。



(3)
 このような場合、「裁定制度」を利用をすることが考えられます。
著作権法では、権利の所在が不明な著作物の利用に際しては文化庁長
官の裁定を仰ぎ、補償金を国庫に供託することで利用が可能とされて
います。


 しかしながら、裁定を受けるためには、単に「連絡先がわからない」
というだけでなく、「権利の所在を探す為に相当の努力を行ったがそ
の所在が掴めなかった」と認めてもらえなければ裁定を受けることか
できません。

 そのため裁定制度は あまり利用されていないというのが実情だそ
うです。



(4)
 図書館などが所蔵している古い資料などの著作物をデジタル化して
インターネットで公開して有効利用してもらおうとしても、孤児著作
物が多くて公開できないことが大きな悩みだそうです。


 そこで、国立国会図書館ではサイト上で著作物に関する情報を募集
する「公開調査」をしています。
  https://openinq.dl.ndl.go.jp/search


      ☆              ☆

[関連事項と経験談]

(1)
 個人的には孤児著作物については積極的にパブリックドメイン化を
進めて、みんなが安心して利用できるような制度を整備してはどうか
と思っています。


 人間でも消息不明だと「失踪宣告」されることがあるのですから、
孤児著作物の著作権も一定の調査や手続きを経た上で権利消滅したと
みなす「消滅宣告」のようなことをしてもよいのではないかと思えま
す。


 権利消滅宣告によるパブリックドメイン化は行きすぎだとしても、
裁定の手続きや要件を簡単にして、裁定制度がもっと利用しやすいも
のになるとよいですね。



(2) 
 これも全く個人的な印象なのですが、「孤児著作物」の「孤児」と
いう表現は、どうしても「戦災孤児」や「残留孤児」のような子供た
ちをイメージしてしまうのでドキッとします。

 せめて「迷子著作物」とか「放浪著作物」とか、もう少しソフトな
表現にならないものかと思います。


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 「わかっちゃう! 知的財産用語」

  発行   西川特許事務所 ( http://www.jpat.net/
       兵庫県西宮市東山台3丁目9-17  
       電話 0797-61-1841、 FAX 0797-61-1821 
  発行人  弁理士 西川 幸慶  pat@jpat.net
   
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[編集後記]

 気になった本はすぐに買うのですが、読まずに「本棚の肥やし」に
なっている本が増えてきました。少なくとも50冊以上はあります。
最近、そのような本も読もうと思って本棚を整理しています。

 今は
   「はてしない物語」(ミヒャエル・エンデ)
    http://tinyurl.com/pysf2bc

を読んでいます。 5年くらい前に買ったような記憶がありますが、
とても面白く物語に引き込まれています。

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