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上場以来初めて赤字に転落するキリンの財務分析

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『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』 
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こんにちは!『ビジプロ通信』ナビゲーターの安部です。


2015年も残すところ後数時間となってしまいました。

私自身の今年1年を振り返ると、本当に多くの方々の支援をいただき
充実した1年になったなぁと感じています。

先日発表された日本一のメルマガを決める『まぐまぐ大賞2015』でも、
このメルマガが昨年に続き2年連続で入賞を果たすことができました!

http://www.mag2.com/events/mag2year/2015/page/cate03/

これもひとえにいつも応援いただいている読者の皆様のお蔭と
心より感謝しています。

来年からは音声MBA講座など新たな企画で皆様のお役に立てるよう
益々力を注いでいく予定なので、引き続き変わらぬ応援をいただけると
嬉しいです!(^^)


それでは、今年最後のメルマガも張り切ってお届けしていきますので、
最後までお付き合いの程、よろしくお願いします!(^^)

+*--------------------------------------------*+

【Web連載でも今年最後の記事を更新しています。是非ともお読み下さい!】


■ ビジネスジャーナル『MBA的ビジネス実践塾』

マック、経営破綻の可能性も…キャッシュ枯渇の懸念、
託された「最後のチャンス」

http://biz-journal.jp/2015/12/post_13117.html


■ Bizコンパス『経営者が知っておきたいビジネス理論入門』

なぜ、ミシュランを獲得した人気店が閉店するのか?

http://www.bizcompass.jp/original/re-management-005-48.html


■ オールアバウト『マーケティング戦略を学ぶ』

マーケの専門家が番付!ヒット商品で振り返る2015

http://allabout.co.jp/gm/gc/461314/


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■ 1日3分で身につけるMBA講座
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さて、今回の『1日3分MBA講座』は、上場以来初めて赤字に転落する
キリンの財務分析を行ってみましょう。

2015年12月期の決算で560億円の最終赤字に転落する見込みのキリンの経営は
果たしてどのくらいの危険度なのでしょうか?


■ 5つの利益のどの段階で赤字に転落したかを分析する


まずは、今回キリンが利益のどの段階で赤字を計上したのか
確認してみましょう。

利益とひとことで言っても、5つの種類があるのはご存知でしょうか?

ここで簡単に説明していきましょう。

まずは、最も基本的な利益として『売上総利益』と呼ばれるものがあります。

別名『粗利』とも呼ばれています。

この『売上総利益』は、売上高から売上原価を引いて求められます。

たとえば、キリンの場合、商品であるビールを生産するにはホップなどの
材料が必要となりますが、このビールの売上からホップといった
材料費などの原価を差し引いたものが『売上総利益』になるのです。

続いては、『営業利益』です。

営業利益』は、『売上総利益』から販管費を差し引いて求められます。

販管費とは、人件費やオフィスの賃料など事業を行う上で必要な費用であり、
それゆえこの『営業利益』は本業の儲けを表すことになります。

そして、3番目の利益は『経常利益』です。

経常利益は、営業利益に財務的な収支を加味して計算されます。

たとえば、ある企業の本業の利益を示す『営業利益』が100億円で、
その年に銀行に預けていた預金に対して1億円の利息が付き、逆に銀行から
借り入れていた融資に対して10億円の利息を支払ったとしましょう。

このような場合、『経常利益』は、『営業利益』の100億円に1億円の預金利息
を足し、10億円の支払利息を差し引いて91億円になるというわけです。

続いて4番目の利益は『税引前当期利益』になります。

この『税引前当期利益』は、『経常利益』からその期に発生した
特別の損益を加味して計算します。

特別な損益とは、たとえば所有していた株式を売却して多額の利益を得た
場合や、所有不動産を売却した際に損失が発生した時など、その時だけに
発生する損益のことです。

このような1回限りの損益を特別損益として計上することにより、通常の事業
活動の損益と切り離して把握することができるようになるというわけです。

そして、最後の利益は『当期純利益』と呼ばれるものです。

この『当期純利益』は、『税引前当期利益』から企業の支払った税金を
差し引いて求めます。

企業にとって、この『当期純利益』が、最終利益となるのです。

このように5つの利益の分類を踏まえて、キリンの今回の赤字を
分析してみると、『経常利益』までは黒字で、『税引前当期利益』の段階で
赤字に転落したことがわかります。

つまり、キリンは今期に特別な要因が発生した影響で大きな損失が発生し、
赤字に陥ってしまったということなのです。

≪※参照:キリンの2015年12月期下方修正発表内容≫

<キリン> 売上高  営業利益 経常利益 当期純利益
従来予想 2兆2千億円 1300億円 1190億円 580億円
修正予想 2兆2千億円 1220億円 1190億円 △560億円


■ 赤字の原因は何か?

それでは、キリンが赤字に転落する原因はいったい何なのでしょうか?

キリンは12月21日の下方修正の発表で、ブラジルの子会社の業績不振で、
減損損失が発生したことを明らかにしています。

つまり、海外投資の失敗で損失が出てしまったということなのです。

キリンは2011年におよそ3千億円を投じてブラジルのビール大手の
スキンカリオール社を買収しています。

ブラジルはビール販売量で中国、米国に次ぐ世界3位の巨大なマーケット
であり、スキンカリオールは当時、ブラジルで世界最大手のアンハイザー・
ブッシュ・インベブに次ぐシェア2位を確保していたのです。

キリンはこの買収により、世界第3位のマーケットでの存在感を一気に高め、
グローバルでの高い成長を実現していく戦略を描いていたというわけです。

ところが、現実にはキリンの思惑通りに事は運びませんでした。

2013年からブラジル経済は減速を始め、
ビール市場もマイナスに転じてしまったのです。

スキンカリオールから買収後社名変更をしたブラジルキリンは、
縮小していく市場の中で競争が激化し、急激に販売量が減少していきます。

そして、2015年には最終的に174億円もの巨額の営業赤字に転落する
見込みになったのです。

このような業績不振に陥ったブラジルキリンの企業価値は、
当初の買収価格の3千億円には当然見合わず、企業価値を評価し直した結果、
およそ1140億円の価値の毀損が判明したために、資産価値を1140億円減じる
一方で、評価損として同額を計上し、最終的に赤字決算に転落したというのが、
今回の経緯といえます。

■ 今回の赤字が深刻な問題ではない理由とは?

今回キリンは1949年の上場以来初めて赤字を計上することになりましたが、
決算書を分析すると、あまり心配する必要はないと思われます。

その理由として、次のようなポイントが挙げられるでしょう。

1.今回の赤字は特別な事情によるものであり、継続的なものでない

前述したように、今回のキリンの赤字は海外の買収企業の企業価値の洗い替え
で発生したものであり、一時的なものです。今後の事業に継続的なマイナスの
影響を与えるものではないため、そんなに深刻なものではないといっても
過言ではないのです。

2.赤字といってもキャッシュの流出はない

通常、赤字というと赤字を補填するために現金が流出していくという
イメージがありますが、今回の赤字では現金の流出はありません。
資産の目減りによる形式的な赤字であり、560億円の最終赤字といっても、
その分の資金手当てをする必要はないのです。

3.業績は順調である

キリンの直近の2015年第3四半期の決算短信を分析すると、前年同期比、
売上で1.4%増、営業利益は26.6%増、経常利益は38.4%増、
そして当期純利益は149.5%増と非常に堅調なことがわかります。

確かに赤字に転落するのは、好ましい状況ではありませんが、
今回のキリンが思い切って上場以来初の赤字決算を行う背景には、
業績が堅調な今こそ早期に“負の遺産”と決別し、
失敗を先送りすることなく、アグレッシブに前を目指していくという
強い意志が込められていると思われます。

その意味で、今回の決算は財務の健全化を図る“前向きな”赤字といっても
過言ではないでしょう。

“上場以来初の赤字”というショッキングな歴史を敢えて刻むことによって、
経営陣はもちろんのこと全社員に対して、失敗すればいかにキリンといえども
赤字に転落するという危機感を植え付け、もう二度と同じ過ちは繰り返さない
と誓う意味もあったのではないでしょうか。


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■ 編集後記:
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2015年も今日で終わりとなりますが、今年はみなさんにとって
どんな年だったでしょうか?

私自身の重大ニュースはやはり1年で6冊の本を出版したことでしょう。

昨年の今頃は、数冊の本を同時に執筆するというてんやわんやの年末年始
を過ごしていましたが、努力の甲斐あって無事年間6冊をリリースできた
ことにホッと胸をなでおろしています。

すでに4刷りを重ねている書籍もあり、本が売れない時代に読者の皆様から
余りあるご支援をいただいたことに心から感謝するとともに、
もっとお役に立ちたいという気持ちを強めている次第です。

この年始にも来春出版予定の新たな書籍のプロジェクトがスタートします。

今のところ来年も2冊の出版が決まっていますので、こちらの執筆にも
年始早々から力を注いでいきたいと思っています。

今年1年は多くの皆様のお力を借り、本当に充実した時間を過ごすことが
できましたが、来年はさらなる高みを目指して頑張っていきたいと思います。

皆様におかれましても、良いお年を迎えられるよう心からお祈り申し上げます。


それでは、また新春号で皆様に新年のご挨拶ができることを
楽しみにしています!(^^)


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最後までお読みいただきましてありがとうございました。 m(_ _)m

今回のメルマガはいかがだったでしょうか?

ご意見やご要望があれば下記のフォームからお気軽にお寄せ下さいね!
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『ビジネスマン必読!1日3分で身につけるMBA講座』(ビジプロ通信)

編集長: 安部 徹也

発行元:
株式会社 MBA Solution - The Best Solution for Your Business! -
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URL : http://www.mbasolution.com

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