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将棋ナレーション事件と著作権

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弁護士法人クラフトマン 第276号 2025-01-21

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1 今回の判例 将棋ナレーション事件と著作権(1)
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知財高裁令和5年3月16日判決

 将棋に関するウェブサイトを管理するA氏が、テレビ放送局Bに対して、同局が放映した将棋に関する番組に使用されたナレーションが同ウェブサイト掲載の文章に類似しているとして、著作権侵害を主張しました。

 裁判所は、Aが主張する文章のうち一部について著作権侵害を認めました。具体的には以下のとおりです。

【侵害を認めなかった文章】
  「空いている場所を探してスムーズに着席し、対局の準備をし
   ましょう。」
  「駒を並べる時、最初に上位者が王(王将)を取って並べます。
   その後、下位者が玉(玉将)を取って並べます。」
  「駒をぐちゃぐちゃに置いたり、裏返したり、重ねたりしては
   いけません。」

【侵害を認めた文章】
 「「雑用は喜んで!」とばかりに下位者が手を出さないようにしま
  しょう。」
 「着手した後に「あっ、間違えた!」「ちょっと待てよ...」など
  と思っても、勝手に駒を戻してはいけません。」




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2 解説
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(1)「著作物」とは

 著作権法上保護される「著作物」には一定の要件があります。この点、著作権法2条1項1号は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています。

 そしてある制作物が「創作的に表現」したというためには、作者の何らかの個性が表現されていることが必要であるとされます。

 実際、本件にいても、裁判所は、侵害を認めなかった文章については、将棋のルール又はマナーであり、内容自体から創作を認めることができず、表現もありふれたものであると判断したのに対し、侵害を認めた文章については、A氏の個性が表現として現れ、そこに創作性が認められる、と判断しています。


(2)ビジネス上の留意点

 本件のケースのような短い文章については一般的に著作権による保護は受けにくくなります。それは、文が短ければ短いほど、同じ内容を記載しようとすると、誰が書いても似たりよったりの表現となるため、作者の個性が表現に表れたもの、すなわち「著作物性」が認められにくくなるからです。

 もっとも、今回の事例のほか、過去の裁判例では、短い文章であっても著作物性が認められたケースとして以下のようなものがあります。

  「ボク安心ママの膝よりチャイルドシート」という交通標語
   (東京地裁平成13年5月30日判決)
  「志賀直哉もガーナチョコレートを食べたい」という古文単語の語呂合わせ
   (東京地裁平成11年1月29日判決)

 他方、ここでは紹介しませんが、短い文章であるゆえに著作物性が否定された例としては、新聞の見出し、学術論文の一部、雑誌の休廃刊のあいさつ文の一部などがあります。

 とはいえ、ある文章が著作物なのか否かについて、法律家ですら正確な予測は困難ですから、法律家ではない方が事前に正確に予測することは非常に困難ではないかと思います。それで、基本的には他者の文章を安易にそのまま流用することは避けるのが無難ではないかと思います。

 ただし、この種の問題がビジネス上問題になりやすいのは、自分で他者の文章を流用するというよりは、何かの制作を他者に外注した際に外注先が安易に流用をしてしまうというケースかもしれません。

 それで次稿では、こうしたケースを念頭に、外注先の権利侵害行為をコントロールするための契約上の留意点などを簡単に取り上げたいと思います。




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3 弊所ウェブサイト紹介  M&A業務
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

本稿のテーマと直接の関係はありませんが、M&A関連案件については、以下のページに解説があり
ます。

https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/mana_houhou/

是非一度ご覧ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望
される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです




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