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金銭着服を理由とする懲戒解雇と退職金不支給処分

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弁護士法人クラフトマン 第285号 2026-03-17

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1 今回の事例~金銭着服を理由とする懲戒解雇と退職金不支給処分
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最高裁令和7年4月17日判決

市営バスの運転手B氏が、運賃として受領した金銭から1000円を着服するなどしたため、管理者であるA市の交通局長から、懲戒免職処分を受け、さらに、約1200万円の退職手当の全額を不支給とする処分を受けました。

それで、運転手B氏は、懲戒免職処分と退職手当の不支給処分の取消を求めて提訴しました。

裁判所は、以下の理由から、懲戒免職及び退職手当の不支給処分を有効と判断しました。

・ 公務の遂行中に職務上取り扱う公金を着服した行為は重大な非違行為である上、バス事業の運営の適正を害し、同事業に対する信頼を大きく損なうものであった。

・ B氏は、1週間に5回も、乗務の際に禁止されている電子たばこを使用しており、勤務の状況は良好でなかった。

・ 当該着服行為に至った経緯に特段酌むべき事情もなく、B氏は、発覚後の上司との面談の際にも、当初は着服を否認しようとするなど、誠実な態度だったとはいえない。




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3 解説
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(1)横領行為と懲戒解雇

 企業がその従業員を懲戒処分にしたところ従業員がこれを争ってきた場合、その有効性が問われることとなります。

 一般に懲戒処分が有効となるためには、以下の要件が必要と考えられています。

 a)懲戒事由に該当する事実・就業規則上の懲戒事由の存在
 b)懲戒処分の相当性(平等性、違反事実と処分のバランス等)
 c)適正手続

 この点、b)について考えると、本件のような、業務に関連して従業員が金品の横領や窃取をしたという場合であって、その金額が比較的小さいものであっても、企業の性質やその従業員の立場に照らすと重大な非違行為であるとして懲戒解雇が有効と判断されるケースは少なくありません。

 例えば、東京高裁平成元年3月16日判決は、信用金庫の業務推進部に所属する職員が顧客から集金した金員の一部(1万円)を着服した事案について、懲戒解雇を有効と判断しています。また、福岡地裁昭和60年4月30日判決は、バス運転手が、バス運賃の清算に際して運賃袋から合計9000円を抜き取ったケースで、懲戒解雇が有効と判断しています。


(2)退職金不支給処分との関係

 もっとも、特に民間企業の場合、横領といった重大な非違行為があったとして懲戒解雇ができるというケースでも、退職金を全額不支給とできるかは別問題であり、より慎重な判断が必要です(なお、懲戒解雇の可否について慎重な判断が不要という意味ではありません)。

 なぜなら、今回紹介したケースは、地方公共団体による行政処分の判断の是非であって、その判断は管理者の広い裁量に委ねられているのに対し、民間企業における退職金の支給制限の判断については、会社には、地方公共団体と同様の広範な裁量が認められているわけではないからです。

 この点、裁判例の多くは、退職金について「賃金の後払い」的な性格も有していることを根拠に、退職金の減額・没収が有効となるのは、労働者の「それまでの勤続の功を抹消又は減殺するほど著しい背信行為」があった場合に限られるとしています。

 それで、会社としては、重大な非違行為があった場合で懲戒解雇はやむを得ないという判断であっても、怒りのあまり「何が何でも退職金没収」と即断するのではなく、弁護士とも相談の上慎重な検討が必要です。

 そして、例えば、トラブル回避やリスクヘッジのために、退職金の一部を支給しつつ、労働者からは残額の退職金請求を放棄してもらってその旨の書面を受け取るといった策を検討することも、現実的に見て必要な場合もあるかと思います。




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3 弊所ウェブサイト紹介~労働法 ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した労働法については

   https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。





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