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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
石下雅樹法律・
特許事務所 第30号 2008-01-21
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顧問弁護士
契約についての詳細は
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_firstb.html
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1 書籍無断掲載と出版社の責任
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知的財産
高等裁判所平成19年5月31日判決
事案は次のとおりです。執筆者B氏が,ある人物D氏の活動を
紹介する書籍を執筆し,出版社C社がこれを出版しました。同
書籍には,D氏のスナップ写真(本件写真)が使われていまし
た。
本件は,このスナップ写真の撮影者A氏が,この書籍について,
A氏が著作権を有する写真(本件写真)が無断使用されており,
著作権(著作財産権及び著作者人格権)を侵害されているとし
て,C社に対し同書籍の印刷,頒布の差止と在庫の廃棄を,C
社とB氏に対し
損害賠償を求めました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 判決の概要
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【結論】
裁判所は,著作権侵害を認め,書籍の出版差止等を認容すると
もに,出版社C社の過失も認め,
損害賠償請求を認めました。
【理由】
理由の一部を取り上げます。
出版社C社は以下のように主張する。「執筆者B氏は,D氏と
生前親交の深かったE氏に取材し,E氏から本件写真を入手し,
かつ掲載の同意も得た。B氏は,E氏から,本件写真を自由に
使ってよいと言われており,E氏に『この写真はあなたのもの
か。』と尋ねたところ,『そうである。』との答えを得た。ま
た,B氏は,E氏に対して,本件写真の使用料についても尋ね
たが,同人は不要であると答えた。E氏は,長年にわたり,雑
誌の編集長を務めた出版関係者であった。」
この事実は当事者間に争いがあるが,「仮に,出版社C社が主
張する上記事実が存したとしても,出版社C社と執筆者B氏は,
本件写真の著作権者が誰であるかを確認し,その者から本件書
籍への掲載について許諾を得る活動を全くしていないのである
から,過失があるというべきである。」
「出版社C社は,本件のような場合,あえて撮影者は誰である
かを詮索しないのが通常であると主張する。しかし,出版物に
写真を使用する際に著作権処理をすることなくこれを使用する
ことは考え難いところである。そして,撮影者が誰であるかが
分からなければ,著作権者は判明せず,著作権処理をすること
は困難であると考えられるから,本件のような場合に撮影者は
誰であるかを詮索しないのが通常であるとは認められない。」
「また,出版社C社は,本件のような場合,撮影者を捜索して
著作権処理をしなければ書籍等に掲載できないとすれば,自由
かつ円滑な出版活動に大きな支障が生じ,自由闊達であるべき
出版活動が萎縮してしまうことになるとも主張する。しかし,
そもそも,出版物に写真を使用する際に著作権処理をすること
は,出版物の著作者及び出版社にとって当然になすべき義務で
あるから,それをせずに大きな支障が生ずるとか,出版活動が
萎縮してしまうなどとする主張が失当であることは明らかであ
る。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
出版社C社の主張は,上記のような事実に基づき,「一般人が
日常生活のなかで特段の芸術的配慮なく人物を撮影するスナッ
プ肖像写真を,ノンフィクションの対象となっている人物の風
貌を読者に伝えるために書籍に掲載する場合には,肖像本人又
は写真の所持者から同意を得れば,あえて撮影者は誰であるか
を詮索しないのが通常であり,その詮索をしなかったからとい
って,一審被告らに出版に携わる者としての注意義務違反があ
るということはできない。」というものでした。
確かに,出版社C社の上記主張は,心情的には理解できなくも
ありません。
しかし,要約すれば,出版社C社の主張は,「第三者から提供
されたスナップ写真の撮影者と著作権者についての確認は,写
真の提供を受けた執筆者が,単にその写真の提供者に問いただ
しただけ」というものであり,ネガの所在確認等,それ以上の
確認は行なっていない以上,過失がないという正当な法的主張
とはなりにくかったと思われます。
本件は,事例判断ですからただちに一般化はできませんが,注
意深い権利処理の必要性を認識させるものであると思われます。
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本マガジンの無断複製,転載を禁止します。
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【編集発行】石下雅樹法律・
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〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島2-10-13
横浜東口ビル4階
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mailto:
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知的財産高等裁判所平成19年5月31日判決
事案は次のとおりです。執筆者B氏が,ある人物D氏の活動を
紹介する書籍を執筆し,出版社C社がこれを出版しました。同
書籍には,D氏のスナップ写真(本件写真)が使われていまし
た。
本件は,このスナップ写真の撮影者A氏が,この書籍について,
A氏が著作権を有する写真(本件写真)が無断使用されており,
著作権(著作財産権及び著作者人格権)を侵害されているとし
て,C社に対し同書籍の印刷,頒布の差止と在庫の廃棄を,C
社とB氏に対し損害賠償を求めました。
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裁判所は,著作権侵害を認め,書籍の出版差止等を認容すると
もに,出版社C社の過失も認め,損害賠償請求を認めました。
【理由】
理由の一部を取り上げます。
出版社C社は以下のように主張する。「執筆者B氏は,D氏と
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かつ掲載の同意も得た。B氏は,E氏から,本件写真を自由に
使ってよいと言われており,E氏に『この写真はあなたのもの
か。』と尋ねたところ,『そうである。』との答えを得た。ま
た,B氏は,E氏に対して,本件写真の使用料についても尋ね
たが,同人は不要であると答えた。E氏は,長年にわたり,雑
誌の編集長を務めた出版関係者であった。」
この事実は当事者間に争いがあるが,「仮に,出版社C社が主
張する上記事実が存したとしても,出版社C社と執筆者B氏は,
本件写真の著作権者が誰であるかを確認し,その者から本件書
籍への掲載について許諾を得る活動を全くしていないのである
から,過失があるというべきである。」
「出版社C社は,本件のような場合,あえて撮影者は誰である
かを詮索しないのが通常であると主張する。しかし,出版物に
写真を使用する際に著作権処理をすることなくこれを使用する
ことは考え難いところである。そして,撮影者が誰であるかが
分からなければ,著作権者は判明せず,著作権処理をすること
は困難であると考えられるから,本件のような場合に撮影者は
誰であるかを詮索しないのが通常であるとは認められない。」
「また,出版社C社は,本件のような場合,撮影者を捜索して
著作権処理をしなければ書籍等に掲載できないとすれば,自由
かつ円滑な出版活動に大きな支障が生じ,自由闊達であるべき
出版活動が萎縮してしまうことになるとも主張する。しかし,
そもそも,出版物に写真を使用する際に著作権処理をすること
は,出版物の著作者及び出版社にとって当然になすべき義務で
あるから,それをせずに大きな支障が生ずるとか,出版活動が
萎縮してしまうなどとする主張が失当であることは明らかであ
る。」
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3 解説
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出版社C社の主張は,上記のような事実に基づき,「一般人が
日常生活のなかで特段の芸術的配慮なく人物を撮影するスナッ
プ肖像写真を,ノンフィクションの対象となっている人物の風
貌を読者に伝えるために書籍に掲載する場合には,肖像本人又
は写真の所持者から同意を得れば,あえて撮影者は誰であるか
を詮索しないのが通常であり,その詮索をしなかったからとい
って,一審被告らに出版に携わる者としての注意義務違反があ
るということはできない。」というものでした。
確かに,出版社C社の上記主張は,心情的には理解できなくも
ありません。
しかし,要約すれば,出版社C社の主張は,「第三者から提供
されたスナップ写真の撮影者と著作権者についての確認は,写
真の提供を受けた執筆者が,単にその写真の提供者に問いただ
しただけ」というものであり,ネガの所在確認等,それ以上の
確認は行なっていない以上,過失がないという正当な法的主張
とはなりにくかったと思われます。
本件は,事例判断ですからただちに一般化はできませんが,注
意深い権利処理の必要性を認識させるものであると思われます。
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