2023年4月から“デジタル給与払い”が解禁されます。もし社員から導入の要望があった場合、ご自身の企業ではもうデジタル給与払いを導入する準備はできていますか? そもそもどのような制度なのか、メリットやデメリットは……など、経営者として知っておくべきことはたくさんあります。
そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。弁護士の堀田陽平先生にご登壇いただき、デジタル給与払いについて解説していただきました。
ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第1回として、「デジタル給与払いの定義・概念」について解説します。
第1回:デジタル給与払いの定義・概念 ←今回はここ
第2回:デジタル給与払いで変化すること、労基法の賃金支払に関するルールとの関係
第3回:デジタル給与払い導入の手順
第4回:デジタル給与払い導入のメリット・デメリット、Q&A
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【登壇者】
堀田 陽平 弁護士
2020年9月まで、経産省産業人材政策室で兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等の働き方に関する政策立案に従事。「働き方改革はどうすればいいのか?」という疑問に対するアドバイスや、主に企業側に対して労務、人事トラブルへのアドバイスを行っている。日経COMEMOキーオピニオンリーダとして働き方に関する知見を発信。著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)など多数。
そもそも「デジタル給与払い」とは
最近ニュースなどでも耳にすることが多くなった”デジタル給与払い”ですが、正式には”資金移動業者の口座へ資金移動による賃金支払制度”のこと。
2022年11月に労働基準法の施行規則の一部が改正され、デジタル給与払いに関する法案が成立。そして2023年4月1日に施行されることになりました。本来、2021年3月までに結論を出すことが検討されていたのですが、さまざまな要因で改正と施行が遅れていたため「デジタル給与払いがなかなか始まらないな……」と思っていた人も少なくないかもしれません。
デジタル給与払いの本質を簡単に説明すると、資金移動業者とは“銀行以外で送金サービスを提供する登録事業者”、つまり”●●Pay”といったようなサービスを提供する事業社の口座へ資金を移動させ、賃金を支払うということです。“デジタル”というと非常にあいまいな言葉なのですが、たとえば”●●Payのポイント”で賃金を支払うということではありません。詳細は次回以降に説明します。
使用者の要件は「労働者の同意」のみ
会社としてデジタル給与払い対応するための要件は、“労働者の同意”だけです。資金移動業者の指定要件は下の図の通りです。
この中で確認しておきたいのは、指定資金移動業者の口座は”最大で100万円”というところです。それを超える場合は賃金を支払えません。口座の資金が100万円を超えた場合、資金を銀行口座などに移動する必要が生じます。
また、実質的には資金移動業者側にさまざまな要件が課されていると言えます。そもそも資金移動業者は、資金決済法などの法律で規制官庁である金融庁からそれなりに厳しい要件が課されています。その中から上の要件を満たし、厚生労働省の指定を受けた事業社だけがデジタル給与払いに対応する”指定資金移動業者”となるのです。
「労働者の同意」以外の満たすべき事項とは
これらの仕組みが法改正に盛り込まれているため、使用者にとっての要件は”労働者の同意”のみである、ということになります。しかし通達では、以下の事項も要求されているので、①~④を満たす必要もあります。具体的な手続きの手順、会社としてやらなければならないことなどについては次回以降に解説します。
まずは、デジタル給与払いの定義を知ることができたかと思います。次回以降でその本質に踏み込むべく、第2回では「デジタル給与払いで変化すること、労基法の賃金支払に関するルールとの関係」について解説します。
*metamorworks / PIXTA(ピクスタ)
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