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キャッシュレス支払いをする人

導入すべき?「デジタル給与払い」のメリット・デメリットを弁護士が解説【Q&A付き】

2023.02.07

2023年4月から“デジタル給与払い”が解禁されます。ご自身の企業ではデジタル給与払いを導入する準備はできていますか? そもそもどのような制度なのか、メリットやデメリットは……など、経営者として知っておくべきことはたくさんあります。

そこで『経営ノウハウの泉』では中小企業経営者向けウェビナーを開催。弁護士の堀田陽平先生にご登壇いただき、デジタル給与払いについて解説していただきました。

ここでは、その模様を4回に分けて連載していきます。本記事では第4回として、「デジタル給与払いの導入メリット・デメリット、Q&A」について解説。また、セミナーに寄せられた質問への回答もご紹介します。

第1回:デジタル給与払いの定義・概念
第2回:デジタル給与払いで変化すること、労基法の賃金支払に関するルールとの関係
第3回:デジタル給与払い導入の手順
第4回:デジタル給与払い導入のメリット・デメリット、Q&A ←今回はここ

【資料動画のダウンロードはこちらから】
※第1~4回のどの記事からでも全編の動画の閲覧URL・資料DLが可能

【登壇者】

堀田 陽平 弁護士
2020年9月まで、経産省産業人材政策室で兼業・副業、テレワーク等の柔軟な働き方の推進、フリーランス活躍、HRテクノロジーの普及、日本型雇用慣行の変革(人材版伊藤レポート)等の働き方に関する政策立案に従事。「働き方改革はどうすればいいのか?」という疑問に対するアドバイスや、主に企業側に対して労務、人事トラブルへのアドバイスを行っている。日経COMEMOキーオピニオンリーダとして働き方に関する知見を発信。著書「Q&A 企業における多様な働き方と人事の法務」(新日本法規出版)など多数。

デジタル給与払いの導入メリット・デメリット

デジタル給与払いを導入することで、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。主には以下になります。

従業員にとって賃金の受領方法の選択肢が増えることは大きなメリットです。しかし、口座引き落としの場合、いちいち資金を移動するという手間も必要になります。デジタル給与払いの1つの大きな目的は、銀行口座を開設するハードルの高い外国人労働者への賃金支払を容易にすることです。ただ一方で、指定資金移動業者の口座が100万円を超えた場合は銀行口座に資金を移動する必要があるため、結局外国人労働者にとっては口座開設がネックになるという懸念事項もあります。これらのメリット・デメリットを考慮して導入を検討する必要があるのですが、まだまだ運用ベースでは不明なところが多いのが問題です。

前回ご紹介した通り、指定資金移動業者も決定していない状況です。法令で定まっているのは支払の仕組みだけであって、使用者が指定資金移動業者へどうやって資金を移動するのかといったこともまだ不明確です。

デジタル給与払い制度を導入すべきか

結局のところ、デジタル給与払い制度を導入すべきかどうかということについては、以下のようにまとめられるでしょう。

ウェビナーに寄せられた質問と回答

最後に、セミナーに寄せられた質問と、その回答をまとめます。

Q:社員からデジタル給与払いを依頼された場合、対応は必須か?

A:従業員からデジタル給与払い制度導入の希望があっても、対応義務があるものではありません。メリット・デメリットが出そろってから検討し、対応しても問題ないでしょう。

Q:資金移動業者は国が選定し、4月以降に選ばれるという認識でいいか

A:その通りです。2023年4月1日から資金移動業者の中で申請が開始されます。その申請事業社の中から、厚生労働省が定める要件を満たした業者だけが指定されることになっています。それには数ヶ月かかるとみられていて、最短の1カ月だとしても5月以降にならないと指定資金移動業者は発表されないと思われます。

Q:デジタル給与払いについて参考にできるサイトはあるか?

A:今のところは、厚生労働省のホームページが一番まとまっていると思いますが、今回セミナーでお話しした以上のことは掲載されていないのが実情です。まだまだ決まっていないことが多く、世の中に情報が出回っていません。今後、施行までにはもう少し情報が増えて行くとは思います。
【参考】資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について / 厚生労働省

Q:会社が振込したことはわかるのか? また、振込一覧などは参照できるのか?

A:会社から指定資金移動業者へどういう資金の流れになるのかがまだわかっていないので明確には回答できませんが、指定資金移動業者もわかる仕組みを作ると思います。

Q:口座残高がすでにある場合の振り込み上限は? 口座状況を会社が把握することは可能か?

口座残高100万円までということですが、たとえば、すでに80万円の残高があれば、振り込めるのは20万円まで、ということになりますか? またその口座状況を会社側が把握できるのでしょうか?

A:今のところ指定資金移動業者の要件として「100万円を超えた場合、速やかに100万円以下にする措置を講じる仕組みを有すること」とされていますので、会社から振込があって一時的に口座残高が100万円を超えたとしても、指定された口座に自動的に移すといった手段が作られるのではないかと予想します。まだ指定資金移動業者の詳細も発表されていないので推測ではありますが、会社側が何かしなければならないということはないと思います。

Q:デジタル給与払いの場合と銀行振込のどちらの社員もいる状態で、どちらかを会社のルールにすることは可能か?

A:可能です。もちろん、デジタル給与払いを可能にしないという選択肢もありますし、アルバイトだけデジタル給与払いにする、といったことも可能です。ただ、デジタル給与払い一本というのはまだまだ大変かなと思います。

Q:同意書は労使代表のみでいいか? 個別の同意が必要か?

A:労使協定と同意とは別のプロセスです。労使協定については従業員代表との協議によって締結しますが、同意は従業員個別に行なうものです。そして法律的には同意こそが要件で、労使協定は法律的には要件ではありません。

Q:日当を支払うことは可能か?

A:可能です。

現状、まだまだ運用ベースでは不明なことが多いこのデジタル給与払い。今すぐ対応しなければ従業員を雇えないという話でもないので、指定資金移動業者が出揃い、使用者から指定資金移動業者への資金の移動の仕組みについても明確になってから導入を検討しても遅くはないと思います。

 

4回にわたって”デジタル給与払い”について解説してきました。まだ決まっていないことが多い制度ですが、デジタル給与払いの現状について理解が深まれば幸いです。

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*elise / PIXTA(ピクスタ)

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