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労働実務事例

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クレーン倒壊で保険給付、費用徴収か

「労働新聞」「安全スタッフ」(2009年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 クレーンが倒壊したことにより従業員に死傷者が出て、その人達に労災保険の給付が行われた場合には労災保険法第31条による費用徴収が行われますか。もし、行われるとした場合にはどのような労働安全衛生法令の違反が問題になるでしょうか。

大阪・H社

[ お答え ]

 労災事故の原因について、事業主の故意または重大な過失があれば、労災保険給付(療養補償給付など一定のものを除く)の30%相当額を、費用として都道府県労働局長が徴収します。では、その故意または重大な過失にはどのようなものが該当するでしょうか。これについては以下のような労働基準局長通達が出されています(昭47・9・30基発第643号ほか)。費用徴収額が給付額の30%相当額というのも、その通達で示しているものです。
 イ 法令に危害防止のための直接的かつ具体的な措置が規定されている場合に、事業主が当該規定に明白に違反したため、事故を発生させたと認められるとき
 ロ 法令に危害防止のための直接的措置が規定されているが、その規定する措置が具体性に欠けている場合に、事業主が監督行政庁より具体的措置について指示を受け、その措置を講ずることを怠ったために事故を発生させたと認められるとき
 ハ 法令に危害防止のための措置が規定されていないが、事故発生の危険が明白かつ急迫であるため、事業主が監督行政庁より直接指示を受け、その措置を講ずることを怠ったために事故を発生させたと認められるとき
 ここでいう「法令」というのは、労働安全衛生法に限定されません。また、上記のハは法令には関係ない場合も該当することがあることを示していますので、注意が必要です。
 次にはイに該当すると考えられる法令について掲げておくことにしますが、一応安衛法に限定します。
労働安全衛生法関係法令
 クレーンの倒壊の防止について規定している規定の中で、「直接的かつ具体的な措置」であるといえるものは主として次のようなものではないでしょうか。
 まず、もっとも基本的な規定はクレーン構造規格でしょう。安衛法第37条第2項は、「都道府県労働局長は、クレーンを含む特定機械等の製造許可申請に対しては、厚生労働大臣が定める基準に適合していなければ許可してはいけない」と規定しています。その基準が定められているクレーン等構造規格をみると、第15条に安定度についての基準が規定されています。これは垂直動荷重を基本として安定度の基準を考えていますが、転倒防止についての規定ですから、この関係についてまず検討する必要があるのではないでしょうか。もっとも、都道府県労働局長が製造許可しているのでしたら、これについては問題ないようですが、許可後の申請によっては安定度に変化があり、それが原因で倒壊事故が発生することも考えられないでもありません。クレーン等安全規則第17条は、「事業者は、クレーンについては、法第37条第2項の厚生労働大臣の定める基準に適合するものでなければ使用してはならない」と規定していますので、規格の順守は重要です。
 以上は原則的な事項ですが、秒速30メートル以上の暴風の後や中震以上の地震後の点検についての規定であるクレーン則第37条も、忘れてはならない規定でしょう。点検不完全が倒壊原因であることも考えられます。



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