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労働実務事例

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派遣で保険率の決め方は他法と区分一致するか

「労働新聞」「安全スタッフ」(2009年1月~12月掲載文)
法改正等で現在の正確な内容と異なる場合があります。

[ 質問 ]

 労働者派遣元の会社ですが、労災保険にはもちろん加入しています。そこで質問したいのですが、派遣会社の場合の労災保険に関する業種と、労働安全衛生法の業種、および労働基準法の業種とは、全部が一致するものでしょうか。たとえば、労災保険法の保険料率が製造業であれば、安衛法や労基法でも同じように製造業として扱われるものでしょうか。

東京・F社

[ お答え ]

労災保険の業種
 まず、労働者派遣事業の労災保険率の業種の決め方をみてみましょう。そこで、それについての厚生労働省の通達をみますと、業種の決め方についての原則が以下のとおり示されています(昭61・6・30発労徴第41号、基発第383号)。これは労働保険の保険料の徴収等に関する法律についてのものです。
(1)労働者派遣事業に係る労災保険率の適用は、派遣労働者の派遣先での作業実態に基づき労災保険率適用事業細目表により事業の種類を決定し、労災保険率表により労災保険率を適用すること
(2)派遣労働者の派遣先での作業実態が数種にわたる場合には、主たる作業実体に基づき事業の種類を決定することとし、この場合の主たる作業実態は、それぞれの作業に従事する派遣労働者の数、当該派遣労働者に係る賃金総額等により判断するものとする。
(3)労働者派遣事業を一の事業として併せて行う事業であって適用上一の事業として扱われるものについては、その主たる業態に基づき事業の種類を決定すること
 産業の業種分類については、日本産業標準分類に準じています。保険率については、労災保険率は業務災害に対する保険給付の多少が強く影響しています。決定するのは厚生労働大臣です。
安衛法と労基法
 まず安衛法ですが、事業の種類が出てくるのは総括安全衛生管理者以下の安全衛生管理体制と、安全衛生教育などについてです。
 具体的に規定されているのは安衛令であるとか、安衛則です。しかし、それぞれの業種についての定義は何もありません。内容について説明した通達は昭和47年8月18日発基第91号などがあります。それは労基法の分類と大体同じと考えてよさそうです。
 そこで、労基法の業種分類が問題になります。これは労基法の別表第1が大いに参考になります。しかし、これには官公署がありません、したがって、別表第1は主として官公署以外の事業の分類と考えてよいようです。
 では、この事業分類は何のためのものかというと、労災保険の業種分類とは若干異なるようです。労災保険の業種分類は日本産業標準分類に準じていますが、別表第1はそうともいえないようです。
 では、別表第1はどのような場合に使用されているかとみてみますと、主として労基法第40条や第41条で労働時間や休憩や休日について、第32条や第34条や第35条に規定されている8時間労働や週休制などの原則に対する例外を認めるときです。したがって労災の防止や救済を目的とした労災保険法や安衛法の事業の種類の考え方とは若干違いがあるようで、分類が大まかなようです。
 このようにいろいろと考えてきますと、労災保険法、安衛法、労基法それぞれの業種分類が必ずしも一致しないこともあるのではないでしょうか。たとえば清掃業は労災保険(正確には労働保険の徴収等に関する法律ですが)では「その他の事業」のなかの一つです。ところが安衛法では「その他の事業」とは違って、独立した「清掃業」という業種です。労基法の別表第1では第15号のなかの事業の一つである「清掃の事業」です。
 もし、労働者派遣事業から安衛法の「その他の事業」(清掃業とは独立した)に派遣され、その事業にとっては「従たる」作業である清掃の作業だけに従事したとします。労働者派遣事業の労災保険の業種は原則(1)により「作業実態」に基づいて決定されることになり、事業の種類は、「その他の事業の中の清掃の事業」となります。
 では労基法ではどうなるかといいますと、こちらの方は別表第1で号別が決定されますが、その場合には主たる業務(この場合、清掃ではない)で決定されますので、第15号(清掃を含む)の事業となることはありません。
 以上のように、3法の業種決定が同一でない場合もあるのではないかと考えられます。



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