労働実務事例
[ 質問 ]
会社で衛生管理者として勤務しています。50人以上の従業員が常時勤務しているので、産業医も選任されています。しかし、実際には市内の開業医であり、なかなか難しい面もあります。特に労災が発生したとき等は業務上外をめぐって複雑な問題が生ずることもあります。そこで衛生管理者としましては、普段からどんなことをよく伝えておいたらよいでしょうか。
富山・F社
[ お答え ]
産業医はご承知のように、労働安全衛生規則第14条第2項の規定により、必要な知識は最低限有しているはずですから、その仕事について安全にできないということはないはずです。したがって、衛生管理者から一般的に伝えておく事項等はないはずです。しかし、せっかくのご質問ですから、いままでにみたり聞いたりしたことの中の一部を、ご参考までに書いてみることにします。
それはまず、開業医として医院等を開かれているときに、患者さんがみえたら、必ず症状等とともに、その勤務されている職場の状況についていろいろと質問してもらうことです。
その患者さんは、その職場にいつから勤務されて、仕事の内容はどのようなことをするのかということです。取り扱う物や、その重量や形状、取り扱うスピード等です。場合によっては、以前に勤務されていた仕事の内容についても聴取する必要が生ずるときもあるかもしれません。
例えば、アスベスト(石綿)粉じんにばく露した経験があったりすれば、必ずどんなに以前の経験であっても、聴取した方がよいかもしれません。
それから、患者さんには、いろいろな病的な自覚症状はいつから発症したのか、さらにそれの変化の状況はどうかなどを聴取します。
職場の一般環境について知ることも大事です。粉じんや騒音の発生状況等です。また、薬品その他の危険有害物の性状や取扱量等についても知ることは大事です。
以上のことは、患者さんとして労働者が受診のために来院した場合に聴取することになりますが、これによって産業医は労災(業務上疾病)の発生をいち早く知ることができます。それにより労災保険の手続はもとより、労働衛生対策も適切にいち早く講ずることが可能となり、会社の衛生管理についても貢献することができます。
なお、産業医としては、単に開業医として、従業員が受診のために来院するのを待つだけでなく、安衛則第15条第1項に規定されている少なくとも毎月1回作業等を巡視するという規定を活用し、会社の衛生管理の向上に努めるべきです。
なお、上述した巡視を産業医が怠っても、罰金50万円以下になるのは、産業医ではなく、あくまで会社側であることに注意する必要があります。産業医の責任(民事)については、会社と産業医との間の契約内容のいかんによります。ただ会社側としましては、安衛則第15条第2項の規定により、産業医に対して巡視について必要な権限を与えることが必要です。
以上のことも、産業医に対して伝えておかれるとよいでしょう。
労災の認定基準
産業医のところを受診した従業員の疾病が、もし、会社でのその従業員の業務と因果関係が認められたとしますと、その疾病については健康保険扱いでなく労災保険扱いとなります。そうなりますと、その判断をめぐっていろいろと複雑な問題が生じてくる場合があります。
過労死や、自殺の問題を考えればよく分かるでしょうが、一般的に問題になるのは、その業務が、その疾病の原因になり得たと考えられるかどうかということです。例えば、1日に何時間以上労働し、それがどれ位の期間続いたら過労死するものでしょうか。
また、疾病の原因が、その従業員にとって、会社の業務といえるかどうかという問題もあります。例えば、会社からの命令もないのに仕事を自宅に持ち帰って長時間にわたってやっていた場合は、それが会社の業務といえるかどうかという問題があります。
そのような場合に、厚生労働省は、全国一斉の取扱いをするために、認定基準と称されている多くの労働基準局長通達を都道府県労働局長あてに出しています。これは、行政裁判でよく取り消されマスコミから報道されることもありますが、産業医としても、自分の意見をつくるときには、その内容について十分理解しておくことが必要であることを伝えることも、大事なことでしょう。
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