労働実務事例
[ 質問 ]
取引先(派遣先)から、派遣料金の引下げを要請されています。相手方の担当者は、「派遣元のコミッションとして上乗せする額が多すぎるのではないか。そもそも、派遣法ではコミッションの上限制限はないのか」といいます。規制はないという認識で、正しいのでしょうか。
神奈川・D社
[ お答え ]
派遣先担当者は、「派遣元が賃金の上前をはねる額が多いから、派遣料金も高くなる」と考えているようです。しかし「賃金のピンはね」は、労働基準法第6条で禁止されています(中間搾取の排除)。
例外は「法律に基づいて許される場合」で、許可を得れば有料職業紹介事業を営むことができます(職業安定法第30条)。
適正な業務運営を担保するため、法律では手数料に関する規制を設けています(同第32条の3)。
手数料には、上限制手数料(施行規則第20条で規定、支払われた賃金額の100分の10.5など)と届出制手数料(厚生労働大臣に手数料表を届出)があります。
職業紹介事業との連想で、派遣事業にも手数料の上限規制があるはずと思い込んでいるのかもしれません。しかし、労働者派遣事業は、そもそも「中間搾取」に該当しないという扱いとなっています。派遣事業の届出・許可を条件に、「賃金のピンはね」が許されるわけではありません。
派遣事業の場合、労働者の雇用主は派遣元です。派遣先と労働者の間には、指揮命令関係のみが存在します。この場合、「派遣元と労働者間の労働契約関係及び派遣先と労働者間の指揮命令関係を合わせたものが、全体として一つの労働契約関係となる」と解されます(昭61・6・6基発第333号)。
派遣元は直接の雇用主であり、派遣先と労働者間の労働契約関係に「第三者」として介入するものではありません。中間搾取には当たらないのですから、「手数料」に関する法的規制も設けられていません。
ただし、派遣元は「派遣労働者および派遣先が良質な派遣元を適切に選択できるよう、派遣料金の額、賃金の額」など事業運営に関する情報を公開すべきものとされています(派遣元指針第2の13)。現在、審議中の派遣法改正案でも、「業務内容に係る情報提供義務の創設」が盛り込まれています(指針から法律による義務に格上げ)。
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